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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「……疲れた」

……多分目を閉じたらそのまま失神するかもしれない。
それ位酷い疲労が心身を蝕んでいるんだろう。
離れの床にひとり座り、今日一日の記憶を必死に反芻しながらも、
それ以上に厳しい睡魔との戦いに身を投じている現状。

底冷えのする寒さが俺にとって味方なのが、唯一の救い。
冷感を通り越した痛覚だけが酷く奇妙な明瞭さで俺の意識を現実に繋ぎ止めていた。
その痛みとて狂気のゲームのあの極寒の追体験よりは、軽かったが。
……それも、いつまで保つか。
限界、とっくの昔に越えてしまったような気がしてならない。
今どうして疲労困憊の心身に鞭打って此処にいるのかすら、分からなくなりかけている。

全部、俺が選んだ事なのに。
俺自身が覚悟の上で決めた事だっていうのに。







--------

「……本当に掛葉木いちるなのかな、俺」

多過ぎる記憶の空白。
変わり果てた気質。
揺らぎ過ぎる思考。

「……いや、掛葉木いちるなのは間違い無いか」

但し俺の周囲全員がドッキリでも仕掛けてさえいなければだけど。
……待て。何不毛にも程がある事考えてるんだ俺。
ここまで来るともう完全に衰弱してるな……身体は元より、心が。

知らず吐いた溜め息が鮮やかに白い。
とりあえず、このまま失神したらそのまま二度と目が覚めないに違いない。
……凍死的な意味で。冗談抜きで。
せめてエアコン位稼働させようとリモコンに手を伸ばそうとした、丁度その時。

――からら、とチャイム代わりの鈴が鳴った。

「夜更けにすまないな。まだ目は覚めてるか?」
「……お祖父ちゃん?」

意外な人が来た。
足下のコートを引き寄せて羽織り、ドアの鍵を外して開く。
……そして視界内の光景に固まる俺。

確かに、目の前にはお祖父ちゃんがいた。

問題はその後ろ。人影が3つ。皆和装。
……何故か揃って奇怪な面装備済。
そのうちの一つは緻密な細工の施された納曾利面のようだけど。

「後ろの連れ共々話があってな。……まだ1時間程耐えられそうか?」
「……寒風吹き晒しに佇む人追い返す度胸ありません、但し中も大概温度変わりませんが」
「風に当たらないだけ良いさ。氷付けになる前に暖房が動けば尚良いが」
「……即行オンにしますから」



……元々備え付けのお茶櫃と持ち込んでいた電気ポットが初めて役に立った気がする。
とはいえその支度をしたのは専らお祖父ちゃんで、俺は毛布を羽織って座っていた。
余程俺の顔が真っ白だったのだろうか、コート着たままの上から毛布を掛けられたのだが。
熱い緑茶が一渡りした所で、漸くお祖父ちゃんが口を開いた。

「丁度いい、と思ってな。年暮れの挨拶をと彼等が訪ねて来た時お前の事を思い出して」
「……とりあえずあの方々が何方なのかから聞いてもいいですか」
「小さい頃に一度逢ってる筈なんだが、結構な昔だし憶えていないか」
「……その小さい頃がいつなのかが現状とんでもない問題なんだよ、お祖父ちゃん。
多分、5~6歳位より前の記憶、俺には半分も残って無いんだ。まるで消されたかのように。
ギリギリで7歳の頃が幾らか。……怜の亡くなった後の事は明瞭な代わり、その前が」

それが、俺の出した虫食いだらけの記憶の結論。

元々の俺の気質。
夢見への感情。
一真達に渡していた筈の何か。
多分、苑夜ちゃんに出会っていた頃。
祥月命日の前後だけ明瞭になる怜の存在。
納曾利という、存在。
……そして、逢っていた筈だという目の前の妙な3人組。

怜の事を除き、どうやら5~7歳の辺りに集中している虫食い。
この時期に何かあったと、思わざるを得ない状況。

「ふむ、では最初からの方が都合が良さそうかな」
「出来れば」


「……さて、これはもう少し後の話としても良かったのだが。
とはいえ三祷と向き合ったのならば結局この話に帰着していくから早くても害は無かろう。
宗主になるならないは別として、矧の箍とも言える存在は充分お前とも関係のある話だ」
「……箍?」
「もう少し硬い言葉を使えば監視機構とでもなろうか。そういうものが、矧にはふたつある。
同姓の家による監視と、他姓の家による監視。俗に前者を『昼の矧』、後者を『夜の矧』と。
掛葉木の場合、『昼の矧』は掛葉木内部での、『夜の矧』は尭矧と宍矧による監視となる。
本来の統括者は滅多に現れぬ為、慣例として夜を宗主が、昼を筆頭候補が受け持つ」
「ええと……つまり今は夜の統括がお祖父ちゃんで、昼の統括が母さん、って事でいいの?」
「そういう事だ。現状の慣例ではな。……但し当代はその滅多にいない者がいる代だ」

当代には存在するが普通滅多に現れない、本来の統括者。
さてそんな大事にされているような人がいただろうかと首を傾げ……ふと、頭を過ぎるもの。

……まさか。

「……一寸、待って。それまさかはたと俺だとか言うんじゃ無いよね?」
「さてお前達以外に誰がいる」
「……嘘だろ……俺達の存在の価値って生まれた時だけじゃ無いのかよ……?」
「誰がそんな事をお前に吹き込んだ。人として生まれた以上不必要な者があってたまるか。
暁降の嬰児はその生き様によりて矧を束ね導く者、生まれて終わりな話などあるか」
「……確立前は畜生腹の最下級系譜とか散々言われてたとかいう楽しい話を聞いた記憶が」
「この現代にそんな阿呆な戯言持ち込んでくる人間こそ畜生に相応しいわ」

矧の貧乏籤筆頭を独りで永劫走らされる家を何だと思ってるのか、と自嘲気味に零す宗主。

「調子のいい時だけ勝手に持ち上げ後は散々文句しか吐かん奴等の話など耳半分でいい。
……話が逸れたか。今何処まで話したものだったかな……。
ああ、そうか。お前とはたるとが本来の統括者というところまでだ。ここまではいいな?」
「……物凄く納得がいかないというかそんな感じだけど把握はした」
「今はそれ位で良い。追々分かる事もある。
では、此処からが本題だ。……彼等を待たせる訳にはいかないのでな」

……ああ、この目の前の奇妙な3人組の事か。

「陽(ひ)と月と呼び名のある暁降、ではお前が統括するはどちらか予想は付いていよう」
「……月が昇るのは夜。『夜の矧』が俺……だね」
「そう、お前が引き継ぐのは『夜の矧』。そして、彼等が『夜の矧』の頭領を務める方々。
左から納曾利、翁(おきな)、泥眼(でいがん)。名の由来はそれぞれの面の名だ」

……あれはそういう名前の面なのか、という感想の方が先に浮かんだ。

「頭領はそれぞれの家の『夜の矧』を束ねる者だが、誰がどの家か予測は付くか?」
「……多分、納曾利が宍矧」

そう言える理由は、苑夜ちゃんの存在。
彼女は確か、佐々木苑夜。……矧だとするなら、宍矧である確率が一番高い。

「――仰る通りにて。苑夜(えんや)への月主殿の御計らいには感謝尽くしきれぬ次第」

納曾利面の声。多少年嵩と思える男性。

「わたくしは尭矧の者ですわ。確か月主殿に御逢いしたのは5歳の頃かと」
「そして、残る儂が掛葉木という事になるわけです、月主殿」

翁面は幾らか若そうな女性のようで、泥眼面は男性だという事以外ははっきりしない。
……そして、お祖父ちゃんが再び口を開いた。


「話は他でもない。――今宵彼等を、『夜の矧』の全権を真の主たるお前に返還したい」
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