自分で自分の夢が覗けるなら。

……変な夢ばかり見るせいか、ここ最近落ち着かない。
いや。
正確には、変な夢を見ているような気がする、か。


憶えていないから。
どんな夢だったのか、全く。
ただ訳の分からない不快感と、不安だけが残って。
そして頭の中に響く、転がる何かの硬い音。

多分、それはサイコロの音。
……それだけは、何故か確信出来る。

そして朝が来る毎、言い表せない感情を抑えようと無意識にチョーカーに触れる。
“賽は投げられた”と銘が刻まれた、姉から貰った無二の護りに。


……迷って、いるのかな。
でも、僕は何に迷っているんだろう。

既に投げられた賽に？
今まさに転がろうとしている賽に？
それとも、未だ動く兆しすら見えない賽に？


……もしティンカーベルの粉か、適合者の能力かで今僕の夢を覗いたとしたら、
そこに広がるのは一体どんな風景だろう。

何処までも砂浜が広がる夏の海辺なのか、
凍てつく風と飛沫が途絶える事の無い真冬の岸壁なのか、
音も無く雪が降り続き真白に染まった故郷なのか、
明るい光と音楽とに包まれた伯父さんの店の中なのか、
満天の星空と二つ並んだ望遠鏡とが出迎える真夜中の屋上なのか、
世界の真実を全ては知らず毎日駆け回っていた小学校なのか、
毎日が騒動と喧騒と笑顔とで溢れている鎌倉のログハウスなのか……

それとも。
賽の転がる音だけが支配する、一筋の光さえ差し込まぬ闇の中なのか。



答えの出ない問いは堂々巡り、何も分からぬまま睡魔に瞼を閉じられて。

そうして明日も、きっと……