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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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諸々は 序編 参照 で 。

≪パラレル箇所≫
・残菊先輩が5歳若返った上に苗字が『七乗』、楓嬢も御存命
・いちるが血縁の縁者無し天涯孤独(に見えないが)状態
・銀誓館学園何それ美味しいの?
・それ故に揃って能力者に関わる一切を知らない




--------

どうにも奇妙な出来事が続く日々。

学校の怪談とか地域の七不思議とかならまだ幾らかはマシやもしれないだろうが、
現に怪我人も人死にも出ている以上、最早笑い話で済む範疇を越えている。
妙なモノに追いかけられた残菊も血塗れの惨状に出くわしたいちるも、
うすうす今までの平穏な日々と現状との差が、何かがおかしいと思い始めていた。
地域に漂い始めた重い空気が影響しているのか学校の校舎内も活気が薄れ、
教鞭を振るう教師達も無気力になるか苛立っているかのほぼ二択になりつつあった。
……後者の学年主任から食らう説教の時間も内容も格段に酷くなった事で、
解放後のいちるから地味に漂う殺気に残菊が心配し通しだったり、と。
しかし何故か唯一の例外がふたりのクラス担任。
終業チャイム直前に駄菓子をクラスにばら撒くのが新しい日課になっていて。

「明日も無事に教室来いよー、出席しないと渡さんぞ」

彼なりに生徒を元気付けようとした結果か、クラス内はそこそこ明るさを保っていた。


そんなある日。
帰り道。

「……なー、七乗」
「どうしたんだ掛葉木」
「……あれ、何だと思う?」

――ああ、ホラー映画の撮影でもやってるんじゃないか?

そう返そうとした残菊の足が止まる。
不可解さを感じた瞬間に鼻につく腐乱臭と錆びた鉄の臭い。
ざわりと総毛立つ感触。
身体が収集する情報全てがリアルな生命の危険を告げる。

「……ヤバいぞ」
「やっぱり俺だけじゃなかったか、あれ見えるの」
「そんな悠長に構えてる場合か!?」
「……何か微妙に麻痺してる感がな、最近色々あり過ぎて」

パニック状態の残菊と、最早諦観入りかけのいちる。
やれやれ、と溜め息を吐いたいちるの表情がしかし不意に険しいものとなる。

「……誰かいる」
「何処に!? 何が!?」
「あの中に人間が。……畜生」

刹那、舌打ちと共に渦中へ駆け出した。
残菊が止める間もあらばこそ、鞄を投げ捨て即座に距離を詰めた影。
次の瞬間腐りかけた人型の延髄に狙い澄ました回し蹴りが決まり、どうと崩れる。
息吐く暇無く背後の屍の腹にも踵での蹴りを見舞い、囲まれていた人間の傍に位置取った。

「加勢してやる。……死ぬまでだけどな」
「――悪ぃ、助かる!」

屍の群れに抗う金混じりの茶髪の人間が応えた。その手には何とバス停。
傍に倒れ伏した人間もいる。巨大な剣が転がっていた。血はさして流れてはいない。

「だけど素手じゃ厳しい、好きなの使うて!!」

放り投げられたバッグの中には種々の武器。
ナイフや銃は兎も角奇妙な笛やマイクはどう使えば、と一瞬思考停止したいちるだったが、
ふと目が止まった「それ」を引っ張り出して鞘から引き抜いた。
同時に鳴り響く謎の駆動音にほんの少しだけ意識を向けたが、直ぐに構える。
金茶髪の人間が気合いを発したと同時に手にするバス停が突如炎に包まれるも、
当の本人は何の躊躇いも無く炎を纏ったそのままでゾンビ相手に殴りかかっていく。
叩きつけられたバス停に抉られた箇所から一瞬にして炎が吹き上がり、
文字通り紅蓮の火達磨となったゾンビがあっという間に動かぬ消し炭となった。
しかし無茶な体勢からの一撃だったが故にバランスを崩した金茶髪に背後から迫る新手。
……迫る手が、だがギリギリで止まる。
阻んでいたのは影のように黒く実体の無い幾つもの腕。
ゴキリ、と余り聞きたくない音を立てゾンビの首を捻り落とす腕は、まさに影から生えていた。
――夕陽に照らされ長く伸びた、残菊の影から。
当の残菊は何が何故起きたのかさっぱり理解出来ないといった表情だったが、
非現実の光景を目の当たりにした金茶髪の人間は、しかしニヤリと笑みを深くする。

「わお、アンタ魔剣士か! ならコイツ使いなっ!!」

足下に転がっていた巨大な剣――斬馬刀を残菊の方へ蹴り飛ばした後、
いちるの構えた「それ」を見て驚愕の表情を浮かべた。

「……ってアンタはアンタで燕刃刀かよ!?
蹴りかましたから青龍拳士かと思ってたら水練忍者とはな、兎も角助かるぜ!!」

エンジントウ、とかスイレンニンジャ、とか謎の単語だらけの相手の発言は半ば聞き流し、
刀のような武器でゾンビ達の急所と思しき箇所を逆手で刺しつつ蹴りを見舞い続けるいちる。
何が何だかさっぱり分からない残菊も拾い上げた斬馬刀に触れるのが初めての筈なのに、
余りふらつく事無く振り回してはゾンビを両断していく。
最後の屍がようやく倒れて動かなくなった後、緊張の糸が切れたか倒れそうになる残菊。
彼を咄嗟に支えたいちるは鞘に戻した刀を金茶髪に投げ返した。

「……返す。物騒な物に触れ続けるのは苦手なんだよ」
「その割にはえらい器用に操ってたやんか。まあ兎も角助けてくれて有り難かったぜ。
……いや、ちょい待て」

仲間なのか倒れ伏していた小柄な女を担ぎ上げた金茶髪は笑顔で正直な感想を述べるも、
ふといちるをしげしげと見つめ……その笑みが消える。

「燕刃刀操れるのは、水練……なあ、アンタ少し前に川に落ちた子供助けてへんかった?」
「……俺の事嗅ぎ回ってたのはお前か」
「て事はアンタなんやな、助けたんは!? ……誕生日、いつ?」
「答える義理は無えと言いたいとこだが、6月15日」
「……冗談抜きで?」
「偽って何の得がある、俺の知る唯一の出生記録だからな。
何処で生まれて誰が親なのか、他は一切分からない。母子手帳すら俺の手には無い」
「……マジかよココまで神託通りやなんて有り得へん、有り得へんけど……マジ、なん?」
「……神託?」

支えられながら疑問を口にした残菊に金茶髪が答えた。

「氏族の神託、や。……氏族の中に全く同じ年同じ日生まれで5人子供が生まれる、て……。
アタシも、6月15日。集まったんはアタシ含め既に4人、アンタが多分、最後のひとり」

途切れ途切れの、言葉。

「しかも神託が本当に正しいんなら……アンタはアタシの兄貴、なんよ……腹違いの」

……ゾンビに襲われて叩っ斬る経験より衝撃的な、カミングアウト。



「……あいつの言う事、間違いじゃ無さそうだ」

あの日以降平穏を取り戻した地域と学校。
学校の屋上で大きな封筒の中身を取り出して眺めながら、いちるが呟いた。

「弁護士……仁平(にひら)さんと戸籍謄本やら出生届やら掻き集めて分かった事だけど、
確かに俺、あいつの兄に当たるらしい。“父親”に当たる奴が一緒だった」
「……本当、なのか?」
「掛葉木ってのは俺の本当の母親の苗字で、母さんの旧姓。
母さんは本当の母親の姉だった。だから正確には伯母さんだったってわけ。
父さんは伯父さんで、でも叔父さんは叔父さんのまま。
……本当の母親は産後の肥立ちが悪くて直ぐに亡くなったらしい。
そもそも俺を身籠った理由というのが……いや、やめとく。一寸俺も冷静に話せそうにない。
ただ、それでも母親は俺を産んで姉に託し、姉夫婦の子として育ててくれるよう頼んだ。
姉夫婦も実際俺が分別付く歳になったら苗字どっちにするか選ばせるつもりだったらしい。
本当の母親の姓である掛葉木か、自分達の姓の御蔵か」

けれどそれは叶わず、一所に落ち着く事も出来ず。

「叔父さんは叔父さんで、兄夫婦の死で行方知れずになってた子供の存在を漸く掴み、
無理矢理にでも自分の傍に置く事で兄の代わりに俺を守ろうとした、みたいだ。
氏族に知られていない俺の存在が筒抜ける事だけは、どうしても避けたかったんだとか。
義理の妹が巻き込まれた事件を全部知ってて、それ故に氏族を激しく憎んでいたから」

……人でなしの氏族には渡さぬ、と。

「……でも結局バレた。
神託頼りに同じ神託の子供が捜索に出るのを見越して静観して釣り上げたわけだ、俺を。
しかも腹違いの妹だとか鬼畜にも程があるだろ程が」

彼女の名前はステラと言った。母親は外国の人。
……彼と殆ど似たような理由で彼女も生まれてきたらしい。

「……逃げるっきゃ無いよな。ステラも逃げろって言ってたし」

――アタシは氏族に見つかるまでは普通に暮らしてた。
――だから氏族の酷さとかやった事とか客観的に見て絶対おかしいって断言出来る。
――でも生まれつき氏族の中にいた残り3人は違うんや。
――人の尊厳踏みにじった氏族を素で崇拝出来るような育て方されてしまってた。
――嫌や、あんなのと一括りにされるのはアタシでも兄貴でも嫌や!

「……逃げ場は、あるのか?」
「ステラ曰く、鎌倉に。彼女が氏族の館から脱走して逃げ込んだ教育機関らしい。
彼女から話聞いた仁平さんが揃って氏族との絶縁成功させてやるって躍起になってるけど、
何かアクション起こされる可能性も考慮して同時にそこへの転校手続きも済ませとけって」
「……そう、か」
「折角此処に根を下ろせると思ったのにな。……あーあ、又転校生やり直しだぜ」


……その翌日、もう学籍にいちるの名前は無かった。
初めましての時と同じように、空いてしまった残菊の隣席。

だが、一週間後。
学校から帰った残菊に妹の楓が封筒を突きつけた。

「残菊、鎌倉の学校から入学書類が来てる! しかもあたしの分まで!」

兄を呼び捨てにするのはいつもの事だが、兄妹名指しの入学書類に驚きを隠せない様子。
……あのホラーだのサスペンスだの色々大変だった時期に発覚した事なのだが、
楓も兄同様、見えてる筈なのに見えない不可解な隠れんぼの才能の片鱗を覗かせていて。
鎌倉、と聞いて残菊は急いで封筒を開ける。
写真だらけの入学案内書のパンフレットの表紙を捲り……目を見開いた。


校章に被さって記された特別な文章の存在。
残菊と楓には読めるのに、両親は存在すら知覚出来ない文章。
「能力者の皆様へ」と書かれた文章。

――この文章が見えるのならば銀誓館学園へ、と。


……ふと、残菊の封筒からはらりと何かが落ちた。
拾い上げると、薄い薄い水色の封筒。



『久し振り、七乗。突然消えて悪かった。
とりあえず俺は鎌倉で何とか無事にやってる。ステラも一緒。
そして、俺のあの水中特異体質についても此処で説明が付いた。
……能力者って奴らしい。俺もステラも。
そして七乗、お前もどうやら能力者だ。
あの影の腕の力も、時々周囲の人から見えなくなるのもそのせいだって。
そういえば妹さんも似た状況だとか言ってたよな? だから2通、送ってもらった。

選ぶかは七乗と、もし妹さんもそうなら妹さんに任せる。

――もしこっちに来るなら、ステラと待ってるから』
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お疲れ様…
バトンネタSS打ち返し感謝だ…
……なんというか…
こっちは最後の方めちゃくちゃだったのに、とても深みのある打ち返しで、今ちょっと、すごく感動している。
読み応えが半端ないな。
ありがとう。

ああ、えぇと、それからついでに。
ただいま。
残菊 2009/11/05(Thu)20:29:40 編集
(こそこそ)
……後ろさんが見事に仕事漬けでした。大丈夫なのかあれは。

GDが長丁場だったので今回目指したのは、
・必要最低限で纏め上げる
・エンデイ&アーリーデイズの世界観も混ぜる
・終始銀誓館の外の視点を保つ事
……だったらしいです、目標とかそういう。
パソコン転生沙汰さえなければもう少し早く打ち返せたのにとか呟いてました。

ええとおかえりなさ……え。ただい、ま?
……嘘、何処か行ってらしたんですか残菊先輩俺全然気付かなかった確かに一寸10月は百鬼夜行とか色々厳しい状態だったけど、ってうわわわ(わたおたわた)

……ごめんなさい凄い取り乱したですね、俺。
いちる 2009/11/14(Sat)00:20:05 編集
! そういえば
いやいや、十分早筆だったぞ。
もっと早くにって…まあ出来上がりは知らされていたからな、可能だったろうけど、急がなくとも大丈夫だぞ。
何でもなるようになる、ケセラセラがいいんだ。

っと、そういえば…
北へ帰ってた事は、誰にも告げてないんだったな…すっかり忘れていた。
寅靖には鍵番をお願いした時に話したんだけど、いちるには連絡付かなかったからなぁ。
一ヶ月ほど実家に戻ってたんだ。
長期間だったんでただいまは言うべきかなと思ったんだけど、混乱させたようで、…すまない;;
大丈夫か。
残菊 2009/11/17(Tue)22:35:20 編集
……な、なるほど。
……御里帰りだったんだ。吃驚した。
10月といっても、北海道じゃもう向こうは寒かったんじゃないですか?
まあ俺の郷里も雨の日が多くなってるみたいだから冬に近くなってるかもしれないけれど。

……そっか。それじゃ俺は先に宣言してこう。
クリスマスの昼には鎌倉発って新潟戻ります。早くても三が日過ぎるまで戻って来ない予定。
あ、一寸波乱含み確定なので包帯巻いて戻って来ても知らん振りでお願いしますね?

……なんてね。
普段しない事しての怪我で終わりなら笑い話で済むのに。
いちる 2009/11/25(Wed)01:34:12 編集
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