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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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……と言う事で、打ち返し。


≪状況整理≫
七瀬残菊先輩との間で互いに回答した『学園生活バトン!』。
当方側の『七瀬残菊編』・先輩側の『掛葉木いちる編』を下敷きとしてSSに。
ふたりの年齢差5歳を埋めた時点でパラレル要素満載なので閲覧の際は御注意を。

残菊先輩側のSSは互いに高校3年生のふたりの銀誓館生活。
当方側は逆に中学3年生のふたりの生活。
ネタのそもそもの発端は各々の質問へのコメントと反応から。
実は残菊先輩銀誓館在校時は制服着崩してたらしい事が判明したとか、
いちるが常時チョーカー付けてるのは銀誓館だからこそ許されている事だとか、
銀誓館の自由さと能力者への厚い理解が良く分かるものだったので。

さて、一寸訳あって本編中残菊先輩の苗字を旧姓の“七乗”にしてあります。
もし七瀬の確執とかそういう物が無くて普通の男子中学生だったら、という想像。



…… 最大のパラレルは 『銀誓館何それ美味しいの?』 だったりするが!




--------

そのクラスメイトは、所謂不良と呼ばれる人間とはほんの少し違っていた。
何となく、だが。

素行が悪いわけではないらしい。
成績も優秀な方に入るらしい。
級友との仲も意外に良好らしい。
それでも、どうやら教師達が常に目を光らせる対象らしい、と。


現に転校初日の朝から、その席は空いていた。
そのまま1限目が始まって30分以上過ぎてからようやく、机の主はやって来た。

最初は本当に普通の男子中学生に見えた。
……だが、その次に目が止まったのは彼の首元。
隠す気すら無いのか留金を外した詰襟の中、革のベルトに四角い青い石のチョーカー。
少しひょろ長い印象の体型に黒味の強い焦げ茶の髪。

「おはようございます、小テストには間に合わせました」

童顔から受ける印象に反して幾分低い声質。
丁寧な言葉遣いだが遅刻を謝るどころか間に合わせたと言い切った。

「コラ30分は流石に無茶だぞ掛葉木(かけはぎ)。9割取れなかったら放課後残れ」
「えー、放課後既に予定あるので8割にまけて下さい8割に」

いつもの事と割り切っているのか軽い口調で咎めつつ席に追い遣る国語担当兼担任に、
当然の権利だとばかりに笑顔で交渉まで仕掛ける始末。
余りの光景に思わず目を点にした転校生の隣席に何事も無かったかのように座った彼は、
鞄から教科書を引っ張り出したところでようやく転校生に気づいたらしかった。
目線を合わせて、笑う。

「――掛葉木いちる。宜しくな」

不可思議なクラスメイト。
それが転校生――七乗(ななのせ)残菊が抱いた第一印象だった。


「へー、七乗北海道から来たんだ」

また遠い所から此処まで、と続けて丸のままの林檎をかじるいちる。
……早朝配達の手伝いをしている新聞販売店からまさに今朝貰った物らしい。

「……掛葉木は此処の出身なのか?」
「いや、全然違うとこ。前にいたのは九州だったっけ……長崎だったから。
というか小さい頃に父さん達亡くなってから盥回されたせいで出生地すら知らない」

深刻な筈の家庭状況を世間話的なノリで暴露した。

「此処に来たのは去年の春だっけかな、確か。
父さんの弟だから叔父さんに当たるらしい人が俺の存在知って盥回し会議に乱入して、
突然の事態で他の大人達が驚いてる間に荷物共々半ば拉致られた形で」

声の明るさと激しく反比例する内容に思わず箸を落としかけた残菊。

「凄い良い人だった。……でも今年の頭に亡くなってさ」

今は叔父さん家で自活してる、と波瀾万丈の軌跡を〆た。

「何か叔父さん、不動産の仕事してたとかでそこそこ財産があったらしくて。
ドラマでお馴染みの遺産相続愛憎劇を生で見る羽目になったぜ……あれはキツかった。
でも叔父さんの無二の親友だって弁護士さんが助けてくれて盥回しにもならずに済んだ。
ええと後見人、だっけ……そういう立場に今も立ってくれてる」
「……遺産、は?」
「激しく五月蠅かった数人に幾らか渡す代わり金輪際接触禁止の血判取り付けて、
ずっと矢面突っ走ってくれてた弁護士さんにもお礼代わりに幾らか。
といっても、叔父さんには予想が付いてたらしくて遺言状の中の指示書きに従っただけ。
弁護士さんへのお礼も、叔父さんからの最後の誕生日祝いとして渡して欲しいって」

……で、それでも残った分は俺にって。

「というかさ、俺父さんや叔父さんと苗字違うんだぜ? 向こう御蔵(みくら)、俺掛葉木で。
血繋がってないと見るのが妥当じゃん、なのに二人共俺宛にって色々遺しててさ。
……無碍には出来ないし何よりちゃんとマトモに一人立ち出来るようにならなきゃな、って」
「……だけど、だったら別に、バイトする必要は……」
「遺産には最後の最後まで触れたくない。弁護士さん曰く生活費は遺産の利子らしいけど。
……それにバイトじゃないぜ、まだ中学生だし」
「……聞いてる限りバイトにしか」
「現物支給と賄い食わせて貰うのがか?」

朝は販売店から旬の果物だのを戴き、夜は定食屋だの飯店だのの賄い戴きつつ皿洗い。
しかも最近は夜の手伝い中に魚の捌き方だの調理法だのまで習得しつつあるとか。
確かに中学生でのバイトは認められていないから金銭は稼いではいないのだろうが、
しかし手伝いに注ぎ込む時間以上の収穫を得ているとしか聞こえないわけで。
……中学生として色々間違ってるような気がしないでもない。

「……それじゃ、朝の遅刻の理由って」
「あ、今日は別件。不良御一行様にとっ捕まってた」
「え?」
「専守防衛で撒いて逃げたけどな」
「……いや、待て、不良って」
「何故か知んないけどこの外面だとそっち側に見えるみたいでさー。
ついでに始業時間ギリでまだ校外にいるって事はサボる気満々だと解釈されて倍率ドン、と」

こっちは学校行く為に朝刊抱えてあいつ等より2時間は早く起きてんだっつの、と悪態を吐く。
外面というのは、やはり首の存在感あるチョーカーだろうか。
転校初日で既に制服を着崩すなだの前髪長過ぎるだの耳のピアスを外せだのだのだの、
担任待ちの間に目敏く見つけてきた学年主任から早速グダグダと説教された残菊だったが、
本当に普通の学生にしか見えない彼が捕まる理由とすれば、とそんな推測をしてみた。
……にしては、担任の態度がかなり緩いのだが。

「そういえばクラス担任……余り咎めてなかった、けど」
「あー、あの人は去年も俺の担任で年明けのゴタゴタ全部知ってる。
遺産遺産五月蠅い奴等から逃げる為に保健室で匿って貰えるよう頼んでもくれたんだ。
とはいえ……俺も大概甘え過ぎだって自覚はあるから直そうとは思ってるんだけど」

……形見位は肌身離さず持ってたいし、と呟いた。
誰の、とは聞けなかった。



中学のある県は関東の中でも暖かい方ではあったが、秋が深まってくると風も冷たくなる。
早朝の新聞配達も大変になるだろうに、彼はそんな素振りを一切見せなかった。
学年主任を筆頭に教師達からアクセサリーは風紀に反すると小言を食らいつつ、
担任からは朝も夜も走り回るのは結構だが余り無理するなと笑顔で釘を差されつつ、
級友等からは手作り焼売寄越せと弁当のおかずを奪われつつ。
そんな中で残菊もいつしか一緒に職員室で小言を食らう仲になっていた。

秋の夕暮れ、帰り道。
それは川を横切る橋を渡っていた時だった。

最初に気付いたのは残菊。
昨日の雨で水量が幾分増えた川に流される、何か。
それが人だと気付いたのは一瞬後。
驚いて欄干に駆け寄るが、見る間に橋から離れていく。

「――七乗、救急車!」

パニックになりかけた残菊がそれを聞いた時、既に隣にいた筈の声の主の姿は無く。
その一瞬後に、水中に何かが落下した音が響く。
橋の上に放り出された鞄。
欄干を越えて飛び込んだように見えた影。
……まさか。

川に転落して流された小学生は橋より下流で見つかった。
小学生を抱いて川岸に這い上がるずぶ濡れの男子中学生を救急隊員が発見し、
即座に手早い処置が施された事も効を奏し小学生は一命を取り留めた。
……但しお手柄の男子中学生は気づいた時にはいつの間にか消えてしまっていたが。

「……掛葉木!」
「あ、七乗。悪い、鞄放り出したままで」
「それはどうだっていい! ……お前、一体何をした!?」
「何をって、増水した川に流されてたちび引き上げただけだぜ?」
「……飛び込んでから、発見までの時間がおかしいんだよ」
「おかしいって何が」
「……一度も浮かんでこなかった」

人間は肺呼吸の生物だから水中で酸素を得るのは不可能だ。
それ故に何の準備も無しで長時間水中にはいられない。
今回の事態なら尚更だ。
突発的に飛び込んで軽く10分は水中にいた筈にもかかわらず、
橋上落下から発見までの間に一度も息継ぎしようと浮かんできた形跡が無かった。
一介の男子中学生では絶対に不可能だ。

「……あー」
「あー、って何だよそれ!?」
「……説明が面倒。ついでに学校には黙っててくれ」
「はぐらかすな! 説明しろ!」
「……呼吸出来るんだから仕方ないだろ」
「何がだ!?」
「……呼吸が。水の中で」

冗談だろと怒鳴ろうとして、しかし言葉を飲み込んだ。
黒い筈の彼の瞳が、一瞬だけ深い青に染まったように見えたから。
髪から制服から雫を滴らせ、真っ直ぐに残菊を見つめる彼。

嘘を吐いているわけでは無いのかもしれない。
……それでも彼に纏わりつく不可思議が、又幾つも増えた日だった。
結局消防署から連絡が行った為に学校にバレた事が彼には不服だったようだが。
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