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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「あら、頭巾じゃないの?」
「……あれ使い辛いから独断変更。顔隠れさえすれば何だって良いんだろ実際」
「そうなのでしょうけど。でもそれ悪目立ちしそうね」
「実はその効果も地味に狙ってる」
「……何度も言うようだけど」
「分かってる。……はた泣かす真似はしない」






--------

総揃いの間ずっと纏い続ける濃藍色の装束。
暁降月主の正装の色、白道の主を待つ夜の空の色。

装身具はずっと付けっ放しの首のチョーカーのみ。
鎌倉の大事な人達から貰って普段身に付けている物は全て外した。
……紐や金具の多い装束に引っかけて傷を付けたくなかったから。

装束の上、頭から引っ被っているのは薄い生地の単。
月は陰の主が故に顔を見せる事は控えるべきとの言い伝えによるが、
夏に一度正装して使った頭巾は邪魔で仕方が無かった上に周囲が全く見えなくなる。
それは危険だと、判断した。
……はたの指摘通り、悪目立ちも策の内。
仕掛けてくるならくればいい、と。

……しかし。
漂家大広間にて始まった総揃いの儀礼1日目である元日の今日、襲撃のしの字も無く。
騒ぎも諍いも何も起こらず、余りの静かさに拍子抜けした程だ。
流石に初日は息を潜める事にでもしたんだろうか。
だったらこのまま最後まで何も起こさないで欲しい所ではあるが、
俺にとって最も重要な三祷奉納の3日までの間に何も起きないとは到底考えられない。
……我慢比べでもしようってのか、畜生。



「……智瀬(ちせ)、智瀬?」

元日の陽も沈み、暗闇が地を染める頃。
懐中電灯片手に庭を巡りながら誰かを捜す声が摩耗甚だしい俺の耳に飛び込んできた。
装束のまま近寄ってみると、懐中電灯の主は苑夜ちゃん。

「どうしたの? 誰か捜してるみたいだけど」
「……さっきから智瀬の姿が見えないの」
「智瀬?」
「妹。身体も小さいし能力者でもない……何より、風邪気味なのに部屋にも広間にもいない」
「御両親の所は?」
「最初に確認した。まだ戻ってない」
「自分の家に帰った……って事は無いか。御家族全員こっちだしね」
「ここからじゃ一人で戻れる距離じゃない。……宗家か漂家探検してるだけならいいけど」
「俺も一緒に捜す。宗家の敷地内なら知らない所無いから。……当たり前だけどさ」

庭の端から端、宗家の部屋という部屋を総当たりで捜したが全く手掛かりが掴めない。
はたと彩晴にも手伝って貰い、漂家でも同じ事をしたが見つからなかった。
……もし彼女が外に出てしまっていたら迷子になり兼ねない。
ただでさえ去年の末から荒れた天気が続く新潟、大晦日も天気は悪かった。
今日は晴れているとはいえ低温、防寒具無し風邪気味という状態で迷ってしまったら……。
着替えて自転車を引っ張り出そうと苑夜ちゃんを連れ離れの横を突っ切り、裏手に回る。

その、瞬間。

……もう何度目か数えるのも面倒な、音も無く湧く黒服の山。
そして今回は漏れ無く全員獲物装備済。
さて遂に冗談抜きで俺を殺る気か、それとも只のハッタリか。

「……結局何がしたいんだよお前等もお前等の主も」

放つ声に知らず氷の青が混じる。
そろそろ少し位進展したって罰は当たらないだろうに。

「――欲しいのは月主という名の飾り物の命、又は服従の誓約と言ったら?」
「……は? 寝言吐くのも大概にしたらいい」

……ようやく返ってきた反応。
しかし本気で訳の分からない御言葉が飛んできた。
命はまだ想像の範疇内だが……服従の誓約って何だよ。
相手が誰だろうとそう簡単に服従出来るような従順さなど俺には欠片も無い。
一生聖人君子にも英雄にもなれやしないだろうさ。

「……言いたい事がそれだけなら消えろ」
「そう言う訳にもいかない。……これを見てもまだ消えろと言えるか?」

喋る帽子の黒服の隣に進み出る覆面の黒服。
……何かを、いや、誰かを……。

「――智瀬っ!!?」

駆け寄ろうとした苑夜ちゃんに一斉に向けられる切っ先。

「納曾利の小娘、異能を用いればこの娘の命は無いと思え」
「智瀬を離せ! 智瀬は矧に何も関わっていない!」
「……脅しのネタに人質とは最低だなてめえ等」
「何とでも言えばいい。月主、全ては貴方を完膚無く壊し尽くせとの命の為だ」
「てめえ等曰く飾り物の俺を壊して何の得がある」
「飾り物に己の意志で動かれては困るからさ」
「……は、俺の人権人格一切無視かよ。最低通り越して人でなしか」

笑うしかない。
人を護るべき矧の中に人でなしとは。

「智瀬と苑夜は解放しろ。無為の血を流させるな」
「非力な小娘とて立派な納曾利、放てば必ず報復が来る」
「……自分は構わない。智瀬の無事が先でいい」

感情を必死に抑え込む苑夜ちゃんを庇い一歩前へ出る。

「……『一般人』は解放しろ。最低の譲歩条件だ」

「冷たき月の主が人の情けを願うか。……聞けぬな」


――返答はそれが最後。

刹那、頭部への幾つもの強烈な衝撃。
抗う隙すら与えられず俺の意識と視界は光無き暗闇に叩き落とされた。
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