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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「……あー、やっぱソレ秀真(ホツマ)やったん?」
「そう。父さんの私物から神代文字の本も見つかったから後は翻訳だけ」
「翻訳用に拾い出すんが面倒なんよねこの手のは。……で、何やその右耳インカム」

「……時間が冗談抜きで惜しいから同時進行。『踏』の舞曲頭に叩き込んでるとこ」

「ま、た、か。無茶しよんなぁ、ホント……」




--------

12月31日。大晦日。

離れの中、朝っぱらから座卓に向かい合わせてシャーペン走らせてる俺と彩晴。
彩晴は楽譜と呼んでいいのか分からない『唱』の紙から秀真文字の抜き出しを、
俺は抜き出し終わった記号にしか見えない文字の翻訳を。

……この楽譜もどき、まさにブラフと暗号の塊。
が、伴奏に当たる楽曲を既に音楽データとして貰っていたのが本当に不幸中の幸い。

楽曲を聞いた限りで補助の線を引けば五線譜どころか大幅に超えた九線譜になり、
線の群れと化した紙に基準になるト音記号を書き込んでみたら実質的な天地が逆になり、
装飾として散らばっているように見えた記号が実は神代文字の一つ秀真文字だった、と。
旋律音を表すらしき疑似折れ線グラフに対応した位置に書かれている事から察するに……

「……歌詞だよな、やっぱり」
「じゃねーの? 言い回しが古いっつか本当にコレ古典文法に合ってんか的感じやけど」
「……何で分かるんだよ」
「一部同時翻訳。猫被り時代に書物蔵の中で読み漁ってた経験の賜物」

耳を疑う言葉と同時に渡された記号の山の一部に傍線が引かれ、片仮名が添えてある。
……技術家庭と美術と声楽以外は器用とは程遠い俺と違って多方向に器用な奴だ。
それだけ、猫被りの時に色々言えない事も出来ない事もあったんだろうとは、思うけれど。

「……へい、コレで転記終了。そっちはどーよ」
「ええと、今3枚目の翻訳が終わった所……目がちかちかする」
「んじゃ既にカナ振った方寄越しな。文章に出来そなら別の紙に体裁整えて書き直すけん」
「……お前も大概無茶するよな彩晴」
「だって正月突入してもうたら俺に出来る事殆ど無ぇやんか。今やらんでどーするんよ」

……声音は普段通りだったが、明るい筈の緑の瞳は何かを孕むような深い色味で。

「実際問題コレやて俺が見たらホントはマズイ物なんやろ? 見た以上は両足突っ込む」
「見なかろうと敢えて両足突っ込む癖に何を言うか。……悪かった、直前まで黙ってて」
「いや、コレばっかしは黙ってた方が正しい話やったと思うがな。もろ秘匿事項ギリやし」
「……それを最後まで黙ってられないってのは、やっぱ俺は結局餓鬼なんだな……」
「別にええやん、ガキでも何でも。この歳で悟り切ってる方がおかしいっつの」
「……悟れる程人間出来てないから。女々しさ優柔不断さは誰相手でも勝てる自信ある」

自分で言ってて心の錘が空しい方向に増したような気がして、溜め息を零す俺。
いつの間にか右耳に流し込んでいた筈の音が止まっていた事に気付き、“本体”を見た。

「……げ、電池切れてる」
「渡した後に俺が見てから3度目か、電池飛んだの」
「酷使激しいからな……もし全部終わった時に何処か壊れてたら本当にゴメン」
「んな心配する前に電池替えれ。ソレ3年はアフターサービス効くらしいから」



昼過ぎ。
耳の負担を和らげる為スピーカーから『踏』の舞曲を流した離れの中に、ひとり。
……脈打つ左足首の痛みに耐えられず、仰向けの体勢で天井を仰ぐ。

積み重なった疲労が思考能力を削り取っていく。
今日だけで何度、心臓が痛むような感覚に襲われて胸を押さえたか。
そろそろ血を吐いたとしても不思議じゃ無いのが笑えない。
……まだ、死にはしないと思う。
畳の上で安らかに死ねるような幸運の持ち主じゃ無いと、俺自身確信している。
今此処で死ぬのが安らかな死かどうかに関してはまた別の話だけど。

――コツ、コツ。

頭の向こうで、何かをノックする音。
何とか起き上がった俺の傍、硝子越しの向こう側にいたのは夏来。

「……鍵は開いてる。入って構わない」
「様子、見に来ただけ、だから。でも少し、換気したら?」

まるで雨でも降り注いでいるかのような結露を指差し、次に戸を開くような身振り。
……確かに、少し空気が淀んでいるような気がしてきた。
コートを手に取り、エアコンを切ってから硝子戸を開きそのまま外に出る。

「……少し、痩せた? いや、違う。やつれた、か。普通に食事、してるの、見てない」
「食事はしてる。一応は。……はたに燃やされ泣かれを再び食らうの嫌だし」
「燃や、さ……!? なあ、何したらそんな事」
「……聞くな。想像に任せる」

……まさか俺だってプール地下と戦争と依頼以外で燃やされるとは思ってなかったさ。
けれどそれだけ彼女の怒りも深かったんだと、納得している。

「首座先輩、凄い、ぴりぴりしてる。……『黄香』の練習、集中、出来ないって」
「そういうお前の『嫦娥』はどうなんだよ」
「オレは、普段通り、舞うだけ。直前は練習しないで、ゆっくり心を休めるのが、オレ流」
「お前流ってより高澤の紫苑さん流だろそれは」
「はは、そうとも、言うね。確かに、それを教えて……誰だよ一体。隠れてねぇで出て来い」

柔らかい夏来の声が、突如鋭く変わった。
手にしたイグニッションカードが消え、現じる和弓。纏う銀誓館中学部の男子冬服。

「オレにすらバレバレの気配ってどうなんだよ闖入者さん方。射抜かれたくなきゃ顔見せな」

……本当に非日常の側に立つと失語症吹っ飛ぶのか……やっぱりおかしいって夏来。

「へー、出て来ないか。オレは気が短いんでね、気配のした所に矢の雨降らす気満々だぜ」

余りの夏来の豹変振りに驚いてすっかり忘れていたイグニッションを内心慌てて済ます俺。
両手に一対の燕刃刀を呼び出し、那由他だけ鞘から抜いて構える。

刹那。
俺達に向けて降り注ぐ弾丸の雨。
被弾はするもさして脅威とは言えない威力。まだあの日刺さった刃物の方が痛い位の。
バレットレインが主力になり得るとは考えられないが、牽制……か?

「……宗家の庭で性懲りも無く又ぶちかますかこの馬っ鹿野郎共がーっ!!!」

空から響き渡る怒号。
ほぼ同時に俺達の前に降り立つ人影。その衝撃でか、ばさりと解ける黒の結い髪。
……破壊力高そうなバス停片手に。

「首座先輩!?」
「……茅都先輩何処から飛んで来たんですか」
「屋根の上から!」

そんな問答を掻き消すように再度バレットレインが放たれるも、同時に消える気配。

……逃げられたか。



夜更け。
わざわざ離れまで年越し蕎麦を運んできたはたと、2人で窓辺に座り空を見上げる。

「……遂に、今年も終わりなのね」
「長かったんだか、短かったんだか……」
「除夜の鐘撞きにでも行く?」
「……寒梅寺まで行く根性無い。それに、今は逢いたくない」

「……そうね。全部終わった後の方が良いのかもね」
「どんど焼きに俺の分まで人型依代燃やしに行ってくれると嬉しいんだけど」
「100枚単位になりそうだから嫌よ。私や彩君の分まで足したら4桁行くじゃないの」
「一寸待て、一人頭何枚燃やす概算取ってんだよ御姉様……」
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