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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――納曾利はあなたの僕。呼ぶ声に応え、必ずや。



あの奇妙な面を被った人影は、確かに俺にそう言った。

……その一瞬だけ。
何かを思い出した気がした。
だけれど、次の瞬間には蜃気楼のように霞んで消える。


……やっぱり、何か、奇妙だ。
俺の、記憶は。






--------

「――掛っ、いい加減休めこの馬鹿っ!」
「……俺に休んでる暇なんか無えんだよ、一分一秒すら惜しい」
「だからってその足で舞おうったって無茶なんだよ傷痕真っ赤じゃないか左足首!!」
「どうせ只の痕跡が止めろボケって騒いでるだけだ放っときゃいい」

……事実、絶叫寸前の痛みを放ってはいるんだがな。医学的には完治した筈のこの傷は。
そんなに俺に三祷挑ませたく無いってのかよ、畜生。


此処は茅都先輩が懇意にしているという舞踏家の離れ家。
部室じゃ狭過ぎて危険だし体育館を借りるのは難しい、と先輩が手配したという。
防音設備も完璧だから大音量でBGM鳴らそうが言い争いしようが大丈夫……という訳で。

……因みに現時点で俺と言い争ってるのは……夏来なんだ。恐ろしい事に。
失語症の影響はかなり根深い筈だというのに、数秒前も普通に怒鳴りつけてきたし。
食らった直後は驚いたが……数分後にしっかり思い出した。
彼の本来の実家だった一座が1年の間だけ新潟に逗留していた頃に興行を見に行ったが、
何故か舞台上にいる時だけ、失語症とか嘘だろって位に流暢な台詞回しだった。
どもったりぶつ切りだったり一切無し。
で、本人曰く『非日常の場なら喋れる』、と。……そんな都合のいい話あってたまるか。
それじゃあれか、まさかイグニッション時も流暢だったりするのか夏来。何処が失語症だ。
……その非日常の場に、舞台に立つ事こそが失語症を患う発端だったというのに。


「……そろそろふたりとも少し休憩したらどうだ? ぶっ通しは身体に障るぞ」
「首座先輩こいつ止めて下さいってか一度床に沈め落とした方が良いですって!」
「黙れ喧しい、何度も言ってるが俺には一分一秒すら惜しいんだよ!」
「図に乗ってんじゃない! その足で倒れて捻挫でもしてみろ全てが水の泡だ!!」
「此処に来てから脳内フル回転で叩き込むしか無いのに図に乗る暇があると思うか!!」

「――ええい、いい加減黙らっしゃいこのジャリ共がっ!!」

……俺と夏来、瞬間冷凍もかくやの硬直。何て迫力だ、茅都先輩の怒号。

「宍矧夏来、お前はまず自分の喉に気を配れ! 総揃い前に完全に声潰す気か!?
月主もとっとと床に座れ! 左足庇って舞ってるの足捌き見たらバレバレなんだよ!!」

剛速球ばりにぶん投げられたペットボトル入りの水とタオルと氷嚢。
……一時休戦、確定。


「うあ……座ったら一気に疲労が」
「……こっちも。喉、ひどく、熱いし痒い」
「明日大丈夫なのかよ夏来……俺も筋肉痛で死ぬかもしんない」
「はは、ヤバい、かもね」
「今更後悔しつつ休憩してるようにねジャリ達、“黄香”流しっぱで五月蝿かろうが耐えといて」

……派手に勇壮な神楽から琴と篠笛の舞曲に変わったBGM。

俺が今習っていたのは、実は三祷の“踏”では無い。
舞踊の類に関して一切の素人でしかない俺にとって頭から“踏”は無謀だという現実。
まず舞う事に慣れる為に、多少“踏”に近いらしい神楽舞の一つを習っていた。
槍を模した棍を手に跳んだり走ったりと勇壮な舞。
……故に、左足の傷痕の激痛が全力で足を引っ張ってくれているという状況。
形として氷嚢乗っけてはいるものの、まやかしの痛みに患部冷却が効くのかどうか。

「……夏来」

後ろに転がっていたノートとペンを何とか引き寄せ、夏来に渡す。

「……納曾利って単語に心当たり、ある?」
『雅楽の演目の一つ、又はそれに使う舞楽面をそう呼ぶ。竜の頭模した物なんだけど。
しかし又突拍子もない事聞いてきたね、何があった?』
「……奇怪な面被った子供がそう名乗った」
『子供?』
「へぇ、なるほど。その面ってのはこんな感じだった? 美術の成績微妙だけどさあたし」

いつの間にか会話に参加していた茅都先輩が夏来のノートに何かのラフを描く。

「……確かに。こんな感じだったかも」
『あれ、この面こそが納曾利面なんだけど?』
「……マジ?」
『大マジ』
「おや? 月主は御存知じゃなかったのか?」
「何がですか茅都先輩」
「いや、納曾利を」
「ありとあらゆる意味で初耳ですが」
「……おや?」

きょとんとした表情で首を傾げた先輩。

「知ってるものだとばかり思ってたが……だって納曾利は月主の下命で動く一団で」
「……いや待って一寸何の話ですかそれ!?」
「いや、待っても何も今言った通りの話なんだが。……宗主が話してないだけなのかな」
「……そうでなけりゃ、虫食いだらけの俺の記憶の弊害がまた一つ、か」
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