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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「……何処へ行ったって言うの、いち?」

「携帯離れに転がしっぱやけん連絡取れへん、何しとんのやあいつは……」

「女の子と一緒にいたのを見た人はいたのよ。そこからの足取りは途絶えてる」

「……まさか例の阿呆共来よったんじゃなかろうな、ったく元日から動くなや畜生!」



「……そこにいるの、はたと彩晴か?」



「「――いち……っ!!?」」





--------

「一体何処ほっつき歩いとったんやいち! もう真夜中やぞ!?」
「携帯も無し置き手紙も無し、何も無しで何考えてるの!!」

……ステレオ詰問は耳に痛いってば、2人共。

「後で話はするから先に医者確保して。急病人がいる、風邪こじらせると厄介だ」
「医者っていきなり……確かいたわね来てる中に御医者様。何処へ呼べばいい?」
「この子の親の所。苑夜ちゃん、御家族はどちら側に?」
「漂家の南の棟。お医者さん来たら自分が案内する」
「分かった。はた、とりあえず漂家の玄関に誘導して。そこからは彼女に任せる」
「御医者様、確か宗家の東だった筈……直ぐに呼ぶから待ってて!」

珊瑚色の装束を翻し、宗家へと駆け出して行く双姉。
智瀬ちゃんを抱き上げたまま漂家へと走る俺と苑夜ちゃん、彩晴。

「……濃藍の正装が上半身中心にべったり血塗れとは何しよった、いち」
「自分の血だよ。謎の吐血」
「……そう簡単に落ちへんぞ血は?」
「残念ながら装束に偽装した詠唱兵器。起動解除すれば何の問題も無い」
「……じゃあその後頭部の血の塊は吐血の前か? 後か?」
「……後頭部?」
「結構楽しい傷になっとるぞ、何箇所か」
「……マジかよ」


1時間後、宗家の離れ。昨年末から完全に俺のベースキャンプ代わり。
後頭部は小言食らいつつはたに包帯を巻かれた後で漸く鈍い痛みを感じるようになった。
奴等に気絶させられた時の傷だろう。かなりの衝撃だったが、出血するまでとは。

……温情も容赦も、どうやら要らぬ情けか。

「……全力で後悔させてやる」
「すみませんそんな綺麗な笑顔で激しく鬼気迫る事言わんで下さい超怖ぇ」

……笑ってたらしい。俺。

「後悔させるのは同意だけど闇雲に戦ったって後手にしか回らないわよ」
「そうだな、一般人の手練と狂気感染者の混在はなかなか骨が折れそうだ」
「狂気の方なら異能使い放題なんやけどねぇ……いや、それなりに威力弱めはするよ?」
「一般人の方は自分の異能で無力化は出来るかな、とは。でも大人数は難しい」
「……導眠符、一般人だと、効き、悪いんだっけ?」
「悪いと言うか……世界結界の阻害受けるような感じ。治癒の異能も一般人だと効果が」
「流石に人と人相手では予報が出来ないのが歯痒いです。何か御役に立ちたいのに」
「そう気を落とすな典杏。人と人の争いの予報なんて物は要らなくていいとあたしは思うよ」

集まっているのは、はたに彩晴、茅都先輩、夏来、典杏、苑夜ちゃん。
典杏を除き、全員謎の襲撃の被害者。
……奴等の目的――俺の命か、廃人化か――は、既に皆が知っている。

「……俺は軍師には不向きだって分かってるんだけど、一泡位は吹かせそうな案がある。
多分穴だらけだろうから聞いてておかしいと思った所はその時点で突いて構わない」

横に寄せていた方眼紙と幾つもの人型を中央に置いた。
皆を模した人型(3等身クレイドール)が無駄に精巧だと誰かが呟いたが聞かない振り。
紙の上に人形を並べ、足元傍の紙に人形の名前を記し、何人か毎に円で囲む。

「これが、現状の俺達の明日の予定」

一拍置き、人形を一旦全部回収した後に再び並べる。

「……予定を最大限に逆手に取る。誰か一人でも成功すれば勝ちだ」
「うわ又激しく無茶しよんなぁ……でもこれ見破られたりとかせんのかね、特に俺とか」
「その時は、ドーラン塗る、とか。結構、衣装で誤魔化せるよ」
「へえ、結構面白い事考えたじゃないか。だけどこの円が戦力的に危険に見えるぞ?」
「そこは勿論、他の円にも戦力は投入するよ。俺達だけじゃ賭けとしては弱い」
「戦力? 今回は夏と違って外部の力は借りれないのに?」
「外部から借りようなんて思ってない。内部から借りる。――『夜の矧』にね」

一度言葉を切り、天井を見上げる。

「……初っ端から私怨全開で罠幾つも張ろうとする月主見限るなら今のうちですからね?」
「いやいや、大層面白いじゃないかこれは。初仕事が大物捕りとは嬉しい限りですよ」

予想外の所から聞こえる姿無き声にぎょっとする面々。俺と苑夜ちゃんを除いて。
多分誰かいるだろうとは思ってたが本当にいた。この声は……泥眼頭領か。声が弾んでる。

「何処にどう戦力を配置するかは少し考えてから決めます、待ってて下さい。
その間に一寸盛大に俺の明日の行動の噂を矧中にばら撒いて戴けると助かるんですが」
「……噂、ですか?」

首を傾げる典杏に、悪戯っぽく笑ってみせる。

「総揃い始まって早々怪我した大馬鹿野郎の月主は明日一杯宗家で療養だ、ってね」




「……なー。見てみ、いち?」
「どうした彩晴? ……へえ。今日、満月だったんだ」
「“朔の望月(さくのもちづき)”って奴やよ。今日の明け方なんか月食まで起きとった」
「月食? 珍しいな、元日に月食だなんて」
「珍しいどころか史上初。ついでに月食は後2回あるとさ、6月と12月。
……まず本来朔の日に満月なんて常識的にあり得ん事の最たる例えやったんよ。
元々この国は月の満ち欠けで暦を決めとった。1日は朔、新月の日。15日は望、満月の日。
だから朔の日に月が見えるっつー事自体が常識的にあり得へんかった、と。
……だけど、今は太陽ひと周りで暦を定めとるから昔の常識は通用せんようになった。
1日だろうと満月が昇り、15日だろうと新月になる。それが今の常識」

常識も非常識も永遠には遠い、時と共に移り変わる。決めるのは自分自身だ、と。



「……負けんなとは言わんよ。その代わり何しても後悔だけは絶対すんなや、いち」


「端から後悔考える程出来た人間じゃないよ俺は。足掻き尽くすが矧の矜持、だろ?」
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