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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「……あれ? おかしいな、また行き止まり。もう進む所無いよ?」
「何ですって……もしかしてユエさん、前のターンと又同じ曲がり間違いをしていませんか?」
「うそー!? 待ってどこまで戻ったら大丈夫なの?!」
「とりあえず直前に十字路があれば其処まで。サーチマークで光らない道を進んで下さい」

「……あー、うん、多分大体のルールとアビとスキルは把握、した?」
「疑問形かよ……しかし彩晴がこのゲームを全く知らなかったとは思わなかった」
「大人数前提プレイなのは肌に合わんし、何より迷路の壁はぶち抜いて最短通りたい病が」
「……瞬間移動魔導師や接触アウトな火の玉が出る60階建ての塔の事かそれは」


午前中の電車内には7人、回る携帯ゲーム機は3台。
通路を挟んだボックス席を共に占領する形だが閑散とした車内に他の乗客の姿は無く。
どうやら朝晩のラッシュ時間帯を除けばとてもとても長閑過ぎる路線らしい。
そんなわけで、通信機能フル活用大迷路探索ゲームも迷惑にはなってない模様で……。






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――一寸ゲームの説明に時間を割く事にする。

先ずは各プレイヤーが分身となるキャラ作成。ジョブと武器をそれぞれ決定。
ゲームを開始すると、プレイヤーは大迷宮の全て違う地点にバラバラに配置される。
中央部分に全員が揃わないと開かない扉があるので各々其処を目指し探索。
但し、プレイヤー全員が扉の前に揃っても全員分の『鍵』が揃ってなければ実はアウト。
そして『鍵』は1プレイヤー1個しか拾えないという厳しいルールも。
……そんなわけで情報だの戦闘だの等々で協力不可欠なゲームだったりするのだ。

加えてプレイヤーの内1名は『ナビゲーター』という特殊なポジションに就かねばならない。
『ナビゲーター』画面は他と違い、最初に映っているのは皆がいる大迷路の全体図だけ。
プレイヤー達の行動次第で部分的な情報や誰が何処か分かったりが漸く判明する。
集約されていく情報を頼りに他のプレイヤー達を中央へ導く大事な役回りなのだ。

……で、今回7人がどんな役回りになっているかというと。

【1台目(ナビ役は常時手持ち)】
・ナビゲーター:典杏

【2台目(3人ずつキャラを登録)】
・デモニスタ:ユエ/杖(遠隔戦闘の破壊力は随一。選択武器効果:サーチマーク)
・魔獣戦士:寅靖/獣爪(近接戦闘に向かう所敵無し。選択武器効果:素早さアップ)
・狩猟者:彩晴/ハンマー(獣精霊を操るサバイバリスト。選択武器効果:CRIアップ)

【3台目(2台目に同じ)】
・スカイランナー:影郎/アームブレード(移動可能距離最長。選択武器効果:連撃)
・魔想紋章士:はたる/魔道書(描く紋章で仲間を援護。選択武器効果:魔法ストック)
・魔法剣士:いちる/燕刃刀(魔法と剣術の使い分け可能。選択武器効果:遠隔攻撃)

……因みにどのキャラもメイキング機能の無駄な豊富さで本人に近い姿形である。
更に携帯ゲーム機の持ち主は典杏と双子だった事を報告しておく。なして持ってきたし。



――さて話を元に戻そう。

「サーチマーク、サーチマーク……あ、これだっ」

ユエが今持つゲーム機の上画面、彼女に似た銀髪キャラの前方と左側の地面に変化が。
其処にはゆらりぼんやりと浮かぶ足跡型の光。
振り返ると目の前にも足跡。

「……前と左と後ろに足跡、って事は右に進めばいいんだよね?」
「はい、一度でも通ればフットマークは出るので無い道が未踏破方向だと思います」
「それじゃ右に進んで……ん、歩けるのここまでだね」

移動可能距離限界まで進んだユエがターン終了を選択、次の寅靖にゲーム機を手渡す。
それと同時に影郎が手にしていた最後の1台の上画面が切り替わりターン開始を告げる。

「おや出番ですか。では突っ走るとしましょうかねえ」

最長距離移動が売りの影郎のキャラが(勿論眼鏡と白マフラー装備済)迷い無く進む、が。

「――あ」

……モンスター召還スイッチ踏んだぞこの人。
大迷路内に数匹のモンスターがランダムに現れ徘徊を始めた旨のメッセージを見て、
露骨に刺すような視線を影郎本人に投げかける、ゲーム機操作が未だ心許無い寅靖。

「……かち合い次第情け容赦無く誤爆攻撃してやりたい」

システム的に無理ですゴメンなさい。


「――あら、本当に後ろにいたのね」

ターンが回り順番になったはたるの画面に“紋章発動!”のメッセージ。
どうやら前ターン床に描いた『牙の紋章』をモンスターが踏んで虚無に食われた、らしく。

「朗報よ、モンスター1体は消えたわ。後何匹居るのかは分からないけれど」

近い場所にモンスターが固まる事は無いルール上、牙の紋章を追加する必要は無い。
そう判断して魔道書を抱えた黒髪のキャラが魔法ストックを選択。
これは選択した魔法アビを魔道書に籠める事で、好きなタイミングで発動させられる効果。
彼女が選んだのは『盾の紋章』。
もし誰かがモンスターに襲われても1回だけダメージを肩代わりしてくれるようだ。
紋章駆使の代償で殆ど移動出来ない彼女の踏破率は6人中最低だが、先読み力は随一。
……まさか徹底的にやりこんでるのではあるまいな。まさか。


「あーと、ファルコンアイで向いてる方透視出来るんよね1方向限定やけど。
しかし選択方向四方しか無いと。斜めダメなんかな斜め」
「一体どうしてわざわざ斜め方向を透視したいとか思うんだ……難易度上がるだけだろうが。
……彩晴、決まらないなら手番先にこっちに回して」
「ん? 策でもあるん?」
「補助魔法覚えたけど面倒な事に自分の前後手番キャラ以外に詠唱対象取れない。
自分に使えない以上色々と諦めてお前のハンマー補正に賭ける」
「補正? コレCRIアップて戦闘だけと違うわけ?」
「実地で試せ実地で。……確かこれだな」

目深に帽子を被ったいちるのキャラが呪文詠唱、ルーン文字と思しき環が浮かんで消える。
すると、彩晴の画面にいる銀髪翠眼キャラの足下に不思議な魔法陣が出現。
うん、まあ、魔法陣というか寧ろどう見てもルーレット。

「ちょ、何か楽しいの出てきたんやけど」
「それ『パンドラルーレット』。後は任せた」
「ネーミング時点で残念過ぎんだろ待てやいち!?」

……しかし数秒後、しっかり彩晴はCRI判定を叩き出し前方3方向の透視に成功。
同時に典杏の画面の迷路図、その一角に詳細な情報が描かれたのだった。


「――奇襲!?」

数周後の寅靖のターン、周囲を見渡そうと振り返った背後から迫る斧。
避け切れぬと観念した瞬間、突如出現した半透明の盾が斧を受け止め霧散した。
――魔法ストック、『盾の紋章』発動。
被襲撃から一転、先制の機会を得た武闘装束姿の寅靖キャラは獣爪を構え殴り掛かる。
近接戦闘の雄である魔獣戦士の一撃で呆気無く消えていくゴブリン。
……が先程迄立っていた地面に何か光る物が。

「……鍵、だな。幸い俺はまだ持ってないから此処で拾っていこう」

一寸可愛い効果音と共にアイテム欄に増える鍵マーク。
――心なしか見渡せる範囲が1歩分だけ広がったような彼の上画面。
訝しんで典杏に訪ねてみると、確かに鍵にはそんな特殊効果があるとの回答が。


「……すみません、何方か羽ペンを拾った方はいらっしゃいますか?」

おや、ナビゲーター典杏からこんな要請が。
羽ペンは使用するとナビゲーター画面にそのキャラの現在地を永続表示出来るアイテム。
表示されるのは各キャラに割り振られた色のマーカーなので瞬時に見分けが可能だ。
因みに踏破済区域に進入すると、鍵持ちキャラならマーカーが出るには出るが些か不正確。
……実に多分この辺、位の精度でしかない。
ついでにマーカーも未確定を示す灰色なので誰だか分からないおまけ付き。

「踏破率の大小と先程のファルコンアイで御二方分はほぼ確定なのですが他がさっぱり」
「あー、確定しとんのは俺とはたちゃんか。因みに誰の位置分かると楽?」
「鍵所持済の渕埼先輩以外、でしょうか。他に鍵持ちの方がいれば知りたい所ではあります」
「僕の方ではまだ鍵は拝んでいませんねえ」
「俺もまだ拾ってないよ」
「あ、そういえばさっき詠唱ボーナスで何か降ってき……ゴメンなさい今見たら羽ペンだった」
「即効使いなさい。宝の持ち腐れしてても進まないわよ」

――ぽつん、と青色のマーカーが典杏の地図に出現。

「……なるほど、其処が掛葉木先輩ですか。
でしたら次のターン、三叉路まで戻ってそのまま直進して下さい。その先が未踏破です」
「それはいいけど……どうして戻る必要が?」
「ファルコンアイ効果で今の進路の袋小路は確定済です」
「……よりによって一番近くにいたのが彩晴かよ!」


「――おや人影発見。さてさて誰でしょうかねあれは」

一直線に突っ走っていた影郎キャラの前方に人型の影が浮かび上がる。
近付いてみるとそれは武闘装束姿の男性キャラ……のようだが。

「……なーんだ渕埼寅靖ですか。だったら放置して先行きましょうか先に」

其処に居たのが犬猿通常運転である存在である事に口を尖らせて通り過ぎよう、と。
――が。

「……流茶野」
「何ですか渕埼寅靖。淋しんぼだろうが何だろうが知りません」

「――俺の画面にお前は映っていないぞ?」

してやったり、という笑みを浮かべつつ衝撃の事実を放つ寅靖。
……確かに寅靖の画面に影郎はいないし、影郎の画面の人影の装備品は……剣!?

「……ああ、ミラージュ」
「味方だと勘違いして通り過ぎた瞬間奇襲される奴やっけ?」
「モンスターの中では結構強い側に入るんだよね、ミラージュって」

そんな会話が背景に流れていく中、影郎の画面では案の定泥沼戦闘が始まっていた。


「……あ、俺の目の前にも誰かいる……魔道書持ってリボン付いた黒い髪だから……」
「あら、此方にも誰か映ったわ。銀髪で杖を持ったローブスカートの女の子よ」
「ホント? じゃあ本物のはたる姉ちゃんだね!」

所変わって此方は無事に本人確認が互いに取れた図。
合流は移動限界が最大のキャラに統一されたり一斉攻撃出来たり等様々なメリットが。

「これで紋章を描いても移動が出来るわね。……ならば早速あの紋章を」

はたるのキャラの頭上、宙に描かれたのは鍵と鍵穴を意匠化したような金色の紋章。
すると魔道書からも同じ紋章が現れ、ふたつの紋章は光となって拡散していく。

「うわぁ綺麗ー。これどんな効果があるの?」
「鍵のある場所に近付くと大体の方向を教えてくれるのよ。後は重ね掛け効果で……」
「――はい、此方には鍵の場所が全部出ました。本当に便利ですねこの紋章」
「でも本領を発揮するにはストックの魔道書かダブル詠唱の護符が必須だけれどね」

……やり込みにも程が無いか、其処のダブルスクール女子高校生。


「お、扉発見。つー事はココが迷路の中央部なん?」
「何とか道すがら鍵も見つけたから俺達は此処で待機かな……」

結局の所、合流したらしい狩猟者と魔法剣士。
扉の前で魔法剣士いちるが又呪文を詠唱すると、彼を中心に光の輪が広がって行く。

「……此方の画面で中央部の詳細が一気に……まさかライト系最上位魔法ですか!?」
「補助魔法に殆ど注ぎ込んだからな、拾ったエーテル片っ端から」
「あー、どーりでさっき戦り合った時物理ダメージが魔法『戦士』なのに低かったんか」
「黙れ喧しい、補助魔法ゼロの『魔法』戦士程無意味な存在無えんだよこのゲーム」


そんな、こんなで。
6人全員無事に扉の前に揃うと、6本の鍵が扉に刺さり……重々しい音を立てて開く。
そして目の前には――巨大な漆黒のドラゴン!!

「あら、ブラックドラゴン。イージーモードの最強ボスと御対面とはね」
「……心底聞きたかったんだがあの生活の何処にゲーム時間捻じ込んでんだよ、はた」
「ええと俺達とドラゴンの間は……5マス。それじゃ俺は攻撃始めちゃうね!」

強力な攻撃魔法のエキスパート、デモニスタのユエが巨大な雷をドラゴンに落とし、
その後ろで魔想紋章士はたるが癒しを司る紋章を床に描きリジェネ効果を仲間に付加。
前線に飛び出していくスカイランナー影郎は武器効果の連撃でドラゴンに刃傷を刻み、
魔獣戦士寅靖が標的によろめき効果を与える強烈な一撃を鎮座する巨体に叩き込む。
もがき苦しむドラゴンがそれでも小賢しい人間共を焼き尽くさんと紅蓮の炎を吐き出すが、
魔法戦士いちるの仕掛けた氷の壁がカウンター発動、迫る炎の勢いを一気に殺ぎ、
狩猟者彩晴が大地より召喚した獅子の獣精霊が牙を剥きドラゴンへと襲い掛かって行く。

――6人の絶妙なコンビネーションの前では、例え暗黒の竜とて無事では済まなかった。



ゲームクリアの文字が3台の画面に出たのと時を同じくして、目的地を告げる車内放送。
もうそんな時間なのかと、慌ててゲーム機を閉じ荷物と切符とを確認する面々。

目的地は、縫いぐるみ工場。そして鄙びた隠れ家的温泉宿。





――さあ、晩冬の未だ冷たい風を吹き飛ばす癒しと湯煙と大騒動の旅行の始まりだ!
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