◆真夏夜に舞えGhost Dance!! -12-

――2009.08.10　　　KAMAKURA

「……向こう３人で５分、俺と彩晴足して１０分……賭けとしては分が良い方か」

姉達に比べれば場数を踏んでいるとはいえ、自分も従弟も精鋭には遠い。
しかし単純に２人足して倍になるなら、此処にいる仲間ならばその数倍延ばせる筈。
集まった仲間なら互角に持ち込めるという典杏の言葉もある。
……それなら充分だ、と。

「典杏の予報に俺の方で少しは補足出来る。主に向こうの能力者関係だけど」
「ええっ、何でいちる兄ちゃんがそんな事知ってるの！？」
「さっきの話に出てきたケットシー連れの奴から色々メールで近況聞いてるんだ。
向こうで最近ゴーストの姿を見るようになっただけじゃなく凶暴度も増してるってさ」
「そういえばいちるって実家新潟だったっけか。向こういた時の知り合いなのか？」
「幼稚園から小学校時代の悪友。能力者と発覚したのはつい最近だけどね」
「……なるほど。その彼のジョブに心当たりは」
「本業は除霊建築士。……何故風水盤振り回してるのかは本人に聞かないと分からない。
魔道書持ってる藍色の瞳の子は魔弾術士。ただバイトが何なのかは未だに知らない。
それと最後のヌンチャクの子だけは誰なのか俺も分からない。
武術短棍と仮定して装備出来るのは青龍かチェイサーだから、どちらかは確実と思う」
「未だに、って……いちる、魔弾の子は前から覚醒しているって事なのか？」
「……生まれた頃から。猫の姿が白に焦げ茶の虎縞だからまるでミニ白虎縫いぐるみ」

滅多に猫の姿にはならないけど、と呟くいちるの表情から一切の感情が消えた。

「生来弟の干渉を激しく嫌がる気質なのは承知の上。でも今回ばかりは首を縦に振らせる」


「ええと、俺達と向こうで合わせて９人とモルモとジャックと楓とケットシー、だよね？」
「ジョブ構成は此方の方が安定しているな。モルモもいるし自己回復も揃っている」
「迎撃側で回復使えるのは魔弾とケットシーだよな、但し他者回復じゃ無ぇのが痛い」
「それに関しては僕の方でなるたけ補填試す。……良かった、今バイトが白燐で」
「彩晴……だっけ、いちるの従弟。その子のジョブ構成は？」
「本業ゾンハンでバイトがエアライダー。……人の事言えないけど見事過ぎる博打構成」
「その分戦闘力は申し分無いんじゃないか？　多分彼で迎撃側最大火力が狙える」
「あ、それに迎撃だって事は死人嗅ぎも使えるんじゃないかな？」
「――それだ！　感知したら俺等にも連絡くれりゃタイミング掴めるぜ！」
「携帯だと電波が妨害されると聞いてる。何かアナログな方法を用意した方がいいか」

典杏が示した図を囲み、幾つかの方向性が示された。

銀誓館からの依頼を受けた側は敷地内のグラウンド近辺に隠れ挟撃を狙う。
現地の迎撃側は予報の通り、講堂への進路を妨害する形で待機。
正面からでは１０分持たないという未来視を逆手に取りゴーストの油断を誘う為に。
それは隠し玉である挟撃を悟られない為の行動でもある。
ゴースト出現が目視出来るレベルなら戦闘開始は共にそれで判断するが、
もし見えない間に死人嗅ぎで感知したら何がしかの方向で挟撃側にも合図を送る。

最優先は、講堂にいる一般人の全員生存。
次点として迎撃側能力者のうち現地３名の被害を出来る限り抑える事。

挟撃組は予報期日に間に合うよう現地入りとなった。
現地の迎撃組となるいちるは従弟の彩晴を伴って先に実家へ戻る予定だと言う。
当日までの情報交換は携帯を利用すれば充分可能だろう。
運命予報士の典杏も、新しい運命予報を得次第、両方の組へ連絡すると確約した。



役者は揃った。

真夏の夜を舞台に禍津祓うが為、能力者達が詠唱兵器と共に舞う。





――待ち受けるは惨劇か、それとも英雄譚か。