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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.02.28



境内の中、二つ目の区画を左へ。
奥の鐘楼を右に回りこんで。
そして、角から三番目。

寒梅講の準備に沸く境内を、ただ一人静かに目指す場所へ歩を進める。
そして辿り着いた時……キャスケットを目深に被った少年は、あり得ない光景を見る。

磨かれた墓石、供えられた花、ゆらり立ち昇る線香の煙。

……あの死の虚構の中の光景が寸分違わずそのままで、其処にあった。

「おー、漸く来おったかの馬鹿修二世」
「……ワザとなのは分かってますがそろそろ俺の名前で呼んで下さい若住職さん」
「しょーがないじゃろ、馬鹿修のガキの頃に瓜二つなんじゃから」
「そんなに似てますか」
「奴の方が何倍と大馬鹿野郎で命知らずで外面超優等生じゃったがのう」
「……褒められてる気がしないです」
「息子のお前さんの方が遥かにいい男だから気に病むな。……今年は先を越されたの」

袈裟姿で背後から現れたのは、言葉遣いに反してどう見てもまだ壮年の男だった。
今はへろへろ不真面目オーラ全開だが、一度仕事となるとまるきり人間が変わる。
父の同期生かつ悪友を自負するだけあり少年にも色々と容赦が無い。

「墓が出来てから毎年欠かさず来てたんじゃがのう、いつもお前さんが帰った後でな」
「毎年、ですか」
「そーなんじゃよ、お前さんみたいに傘ささんで雨の中にずっと立っておってのう。
先生してると言ってた綺麗なお姉さんじゃが7年見てて全然歳取った感無いのは凄いわ」
「……先、生?」
「そう言ってたがのう。いつも先に来てたのがお前さんだと知ってるような口ぶりじゃった。
ほら、いつもお前さん墓前に供えてた物があったろう? 大体雨でふにゃふにゃになったが。
あれ見てお姉さんいつも数珠握り締めてぽろぽろぽろぽろ涙零していたんじゃよ」

じゃけど今年は朝一番に来てのう、珍しい事もあるもんだわと若住職は語る。

「又昼頃に戻ってくるって言っておったが、そういえばそろそろかもしれんの」
「……逢いました、さっき」
「誰に? ……というかその口ぶりという事は知り合いだったんかい最初に言えよ」
「俺だって“あの人”と墓前に来てたその人が同一人物だと分かったのたった今ですから。
……長く日本を離れる事になったんだそうです。もう逢えないかもしれないって」
「そうかい、それは残念じゃのう。……此処へ来るのがお前さんだけになってしまうな」
「俺は一生来ますから大丈夫です。来ない年があったら死んだと思って下さい」

この御時世実際いつ死ぬかホント分かったもんじゃないし、と冗談ともつかぬ呟きを洩らし。

「ただいま……怜、くなぎ……今年は、晴れたね。これなら、きっと今年は」

無事に届くよね、と甘い香りを漂わせる“それ”を墓前に並べる。


渡す事は叶わなかったけれど、完成していた、金太郎飴風のくなぎクッキーを。



寒梅講の帰り、冬の終わりの夕暮れ前。
参加者とは名ばかりで実際は若住職の助手として裏方を走り回っていた少年だった。
法衣が着れたのは一寸いい経験だったかもしれないが、それ以上にもうくたくたで。

「……来年は重ならない事祈ろう」

本当に容赦が無い若住職の事、来年はもっと人使いが荒くなるに違いないわけで。

毎年の墓参り、去年はその日のうちに新幹線で鎌倉へ戻っていたが今年は土曜日。
のんびり帰れるからと夜行バスにした為、出発時間にはまだまだ余裕があった。
時間を潰すのに駅方面へ戻ろうと懐かしい町並みを歩き……

「あとちょっとでひな祭りー、お雛さまお雛さまー」
「お雛様もいいがお前も飾るのちゃんと手伝えっつの。何で男の俺がやってんだよ」

そんな会話を交わす兄妹とすれ違った。兄の方は多分少年と同じ年位。

「おらテメー等、ちんたら歩いてっと置いてくぞー」
「くうな、まうちゃん、早くー」

その声にふと視線を上げる。
直後すれ違った“彼等”の姿を認め……弾かれたように振り返った。

兄に駆け寄る二足歩行の猫。
妹に寄り添い鎖を鳴らす鳥を思わせる異形。

驚愕の表情を見せる少年の視線に気付いたか、兄は顔を上げ……そして破顔した。

「ちょ、お前誰かと思ったらいちじゃねーか!! うーわ久し振り元気だった?」
「……え、嘘……一真!?」
「そーよ市川一真よ、去年の新年以来じゃねーっけ。しかし又見ないうちに伸びやがって」

同い年の癖にこの差かよ腹立ってくんな畜生、と悪態吐く様は全く変わっていない。
悪友一同で騒ぎ通した幼稚園と小学校の頃からずっと。

「あ、いちはこいつ見るの初めてだよな。妹の菜々花、騒ぎ盛りでものっせー喧しいの」

ほれちゃんと挨拶しろ、と無理矢理頭を下げさせられた少女の隣で異形もぺこりとお辞儀。
そして一真の横でも猫が帽子を取って一礼したので尚更訳が分からなくなった。
……何故、“彼等”が。

「おいどーしたよ、いち。俺等の傍に妙なモンでもいますみたいなその顔は」
「……いや、現に傍にいる、んだけど」
「ほー、何がいるってかい? まさかフェンサー風の猫と筒胴体の鳥っぽいのが?」

一真がニヤリと笑う。この笑みを浮かべた時は大体企みの前兆だと決まっていた。

「……うん、いる」
「ほー、そうかそんなのがいるか。そうかそうか……良かった。見えるんだなお前には」
「……いつから、一緒に?」
「俺の場合はホントつい最近。今年の正月過ぎだな。菜々花は多分その前から」

誰もいないのに傍に誰かいてキャッキャしてる風な妹をいぶかしんでいたが、
自分の傍にこの猫が見え始めた途端、鳥っぽいのが妹の傍にいるのが分かったという。

「菜々花が言うには俺が気付く前からマウは近くにいたらしいんだけどなー」
「マウ?」
「猫の名前。エジプシャン・マウの略」
「あー……そういえば一真そういう趣味持ちだったっけ」
「大ピラミッドは一生の憧れよ。んで、菜々花にくっついてんのがクウナ。空の雫だとさ」

漢字読めないのに何で漢字指定なんだかさっぱり分からんがな、と一真がぼやく。

「ま、それは兎も角何でいちが此処に? 3月ならまだしもまだ春休みにゃ早いだろ?」
「……墓参りに。今日が祥月命日だから、怜の」
「ちょ、一寸待ておい。……え、何まさか成瀬の墓ってこっちなのか!?」
「こっちというか、寒梅寺に」
「嘘だろ目と鼻の先かよ!! 俺等ホント何も知らなかったぞ!?」
「……僕が知ってたのは多分父さん絡みだと思う。若住職さん父さんと同い年だし」
「うわーマジかよー。ほらあれから直ぐ成瀬のお母さんも亡くなって他の家族も引越したろ?
故郷に戻るって言ってたらしいから遺骨もそっちに行っちまったもんだと皆てっきり」
「ああ……怜のお母さんも同じお墓の中に、一緒に。だから一人ぼっちでは、ないけど」
「そーなんか、一緒なんだな。そっか、そこは安心したわ……なー、いち時間ある?」
「夜行バスの出発は夜中だから山程」
「おし、なら今すぐ寒梅寺行って成瀬の居場所教えろ。んで来年からは抜け駆け厳禁な」
「……はい?」
「抜け駆け厳禁つったの。全員集合で大挙して墓参りすりゃ成瀬も喜ぶぜ?」
「……それお寺さん側の迷惑とか都合とか度外視だよね」
「んな事知るかよ。病院ならまだしも墓地で待ってる友達に会いに行って何が悪……あ」
「?」
「あー、菜々花はしょうがねえとしてマウと空雫まで連れてったら流石に失礼かなと」
「……ううん、その点だけは大丈夫」

怜もくなぎも、そして多分お母さんも、空雫とマウを見て物凄く喜ぶに違いないから。

「それじゃ、遅くならないうちに行こう。菜々花ちゃんむずかっちゃう前に」
「ああ、そこが一番の問題なんだが何とかするさ。マウに空雫、菜々花の相手頼むぜ?」


一人で戻ってきた道を、今度は三人と二匹で再び引き返していく。
来年はきっと、冬の終わりに沢山の花が墓を埋めんとばかりに集まるだろう。





――怜とくなぎと、そして墓標無き彼女が静かに眠るその場所に。
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