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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――只人は眠る。熱漂う夜を。眠らぬ者は熱斬り裂き屠る。只人と共存出来ぬ存在を。






極めて近未来的な外見だった列車の内装は、彼等の想像とさして乖離しないものだった。
もしこれが夢の中の出来事なら胸躍る未来旅行と洒落込めた事だろう。
ティンカーベルの粉が齎す夢なら平和な一夜だっただろうが現実は其処まで甘くない。

静かに最後尾のドアが閉まる。
微かな振動と共に窓の外の風景が後ろへ、後ろへと送られていく。

「8両なんて案外短いわよ」

それは自分への叱咤か、今はもう此処ではない遥か前方にいる存在への言葉か。
小さく呟くはたるが、花蔓巻く金属の装飾で補強した箒の柄の先を向かう側へと翳す。
この車両での邪魔者は――先頭への道を塞ぐように蠢く屍10体。
咲き綻ぶ白燐奏甲の花弁がふわり、残菊の斬馬刀に触れて燐光を煌めかせる。
先端に魔力の翼が形成され始めたマジカルロッドを掲げるユエと隣に浮かぶモルモ。
獣爪とアームブレード、各々の得物を静かに構え最前に立つ寅靖と影郎。
着物の裾を捌き優雅な仕草で薙刀の柄を握る雛の黒髪が一房、振動で揺れる。
かちり、と軽い音を立てて詠唱銃の安全装置を外した彩晴の表情に普段の笑みは無く。

「短いのよ。――案外、ね!」

屍の群れに叩き込まれた炎の魔弾。
それが、全ての始まりの合図。



腐りかけた屍の群れが我先にと出迎えた8両目を難無く蹴散らした7人と1匹。
だが次の車両、7両目は些か順調とは言い難く。
蛇を従える彼女達――リリスの集団は狡猾な頭脳を以て乗客達の分断を図った。
強き者、弱き者、穿つ者、支える者とを分析した結果――

――それは2点集中攻撃という形で牙を剥いた。

「……下がり。はたちゃん」

黒き鷹の舞う詠唱銃、その銃口を幼女リリスにぴたりとポイントした彩晴。

「暫し御下がり下さいませ、寅靖殿。戻られるまでは私が止めてみせますから」

メドゥサの如く無数の蛇を揺らすリリスに白い薙刀の切っ先を静かに向けた雛。

「はーい皆様揃ってぶっ倒れてもらいますよ、こっちも時間競ってますんで」
「こんな所でモタモタしてる場合じゃないもんね! モルモ、怪我した人お願いっ」

タンッ、と床に響く小気味良い音とは裏腹に強烈な衝撃波を撒き散らす影郎の後ろ、
勢い衰えぬ炎を纏った隕石の群れをリリス達の頭上から容赦無く降らせるユエ。
功を焦ったか蛇を伸ばしたリリスは残菊に阻まれ、次の瞬間黒き斬撃の餌食となった。
燐光の花弁を再び纏い態勢を整え直したはたるが次に白燐奏甲の加護を齎した先、
主の指示を受けたモルモの癒しは加護により力を増して寅靖の傷を塞いだ。
ほぼ同時に影郎と彩晴が描いた三日月の蹴撃は刻まれた相手を共に消滅させ、
隙を突いて振り下ろされた雛の薙刀にまた蛇の化身が断末魔と共に消え去っていく。

「あーと、やっと半分掃除完了てか……ちと時間食われてますね予想より」
「元の数とあの集中攻撃の威力考えたらまだ充分早いですって。ねえ渕埼寅靖?」
「……五月蝿い。不覚を取っただけだ。急ぐに越した事など無い」
「でも、確かに皆怪我が多い。去年のようにはいかないみたいだ……」
「それだけゴーストも強力になって来てるって事だよね。俺達も強くなってるけど」
「しかし例えゴースト達が強くなろうとも勝つのは私達。今まで何度も証明してきましたもの」
「ええ、負けるわけにはいかないのよ……絶対に」

再び漆黒の斬撃を放つ残菊を援護するように彩晴が息絶え絶えのリリスの眉間を撃ち抜き、
ユエが撃ち込んだマジカルロッドの術式弾に被さるように炎の魔弾を放ったはたる。
魂ごと抉り取るかのような寅靖の一撃に耐えきれず霧散したリリスのその後ろ、
マシンガンを構えて乱射しようとしたリリスに迫る影郎のアームブレードがその首を飛ばす。
舞うような動きで薙刀を振り翳した雛に鋭い一撃を刻まれた最後のリリスが後退るものの、
ユエ、モルモ、彩晴、残菊と立て続けに放たれた攻撃の前には存在を保つ事も出来ず。

振動音が静かに響く車内、リリスの姿は完全に消滅した。
ふわふわと出口のドア傍の非常ボタンに近付いたモルモがぽちっ、と一度押下する。
車内には何の変化も無いが、先頭車両の先端には聞こえている筈だ。
非常事態を知らせる警告音に託された、『此処に居る』という存在証明の音色が。

そういえば。
8両目、7両目と全体の4分の1を踏破した形になるが大きな揺れの類は未だ無い。
彼の制御が存外上手くいっているという事なのか、又はさして難しくはないという事なのか。
本人に尋ねる術が無い以上、現状では推測する事しか出来ないが。
典杏の運命予報通りなら、前半はほぼ制御に集中出来る状態に彼はいる筈だ。
しかし、後半は正反対の状態になってしまう。――曰く、擬似『ゲーム』と。

「……次は、6両目。確か、この辺りからは突っ切る事優先だよな」
「あー、インベーダーゲームもどきやっけ……さて一体何匹出てくるんだかねぇ」

余り数が多いと散らすのにも時間がかかる、とぼやく者あり。

「それにしても一体今どの辺走ってるんだろう。暗いから全然外見えないや」
「見えない方が幸せかもしれないわよ。……本物の列車じゃないし」
「もしかしたら地上にいない可能性だってあるかもしれないのですよね……空中とか?」

静かな揺れの中でその先を見通そうとする者あり。

「それじゃ行きましょうか。あと6両、まだまだ先は長いから」
「……ああ」

道を切り開こうとする者あり。



――災厄の主が、最後の仲間が待つ先頭車両まで、残り6両。
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