◆人ならざる語り部の話――銀誓館学園の怪談

都市伝説……という言葉では堅苦しいし、どうも夢が無い。
だから、『怪談』と、そう呼ぶ事にしよう。

――なに、あれは夏の風物詩にしか存在意義が無い代物ではないんだよ。
子供達が長い間過ごすあの場所、所謂学校と呼ばれる敷地の中では年がら年中さ。


鎌倉にね、とても大きな学校があるんだ。
沢山のキャンパスを抱えていて、小学校から高校まで揃っているんだ。
その学校――銀誓館学園と呼ばれる大きな学校に、新しい怪談が生まれたんだよ。
でも、好奇心だけでみだりに触れようと思っちゃいけない……そんな怪談さ。

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時は払暁――太陽の昇る前、夜明け前。
場所は校舎裏――確か一本だけ慎ましやかに大樹佇む場所があるだろう？
季節はいつだっていいが……きっと冬休み明けなら一番良く遭えるかも。
おや、不法侵入はダメだって？　さあ、それは此方の知った事じゃ無い。

紫色の光を振り撒く何かを携えて行くといい。
細工したペンライトでも電気ランタンでも行灯でも、危険の無い紫光を出す何かをね。

夜明け前の大樹の傍へ行って。
そして「怪談を教えて」って、呼んでごらん。

きみが、本当に――本当に怪談を聞きたいと、知りたいと思うのなら。

――フフフ……怪談の恐ろしさを知りたいのかい？

そんな返事が聞こえたら成功さ。


聞こえたと思ったら、緋色の目をした少年が其処にはいる筈さ。
線の細い、白い肌に黒い髪の少年。
もしかしたら周囲に奇妙な存在が蠢いてたり、錆び付いた巨大な鋏があるかもしれないが、
なに、怖がらなくていい。其処にあるだけで危害など無いのだから。

現れた彼は日本中の学校の怪談を語ってくれるよ。
幾つか断片を並べれば、それに合った怪談を全て話してくれる筈だろう。
夜明け前の短い間だから、一度に聞けても２つか３つが限界だろうけれど。
優しいものもあるし怖いものもある、思わず悲鳴を上げたくなるものだってあるだろう。
でも、怖いときみが思ったら怖いと正直に伝えてあげてくれ。きっと、彼は喜ぶよ。
そして、朝日の光が差し込む頃には――彼の姿は何処にも無い。


――ああ、そうだ。彼の名前は病垂愁一、と言うんだけど。
怪談の語り部として逢うなら何も恐ろしい事は無い。怪談を教えてと呼ぶだけならね。

やましい好奇心だけでただ呼んで遭おうと思っているなら……それは止めておけ。
特に「聞いてくれる奴が居なくて淋しいんだろう？」なんて彼に言ってしまえば御仕舞さ。


御仕舞だよ。
周囲に蠢くもの達や巨大な赤錆鋏であっという間に、きみも“怪談の仲間入り”。
これは冗談でも何でもないのだから。



……まあ、でも、な。

俺はこの怪談の先を知っているから、一応逃げられる方法も知っているんだけどさ。
だけど怒らせてその上自分だけ逃げようなんて考えの奴等は好きになれない。
ぶっちゃけ“そんなの助けに行くのも面倒”だと思う人間だって実際いるからね。
自業自得と言ってしまえば終わりだけど……まあこれ以上死人出したくないのも事実。
――だからその先も話すけど悪用はするなよ。病垂本人の為にも、な。

彼を鎮める方法は、ふたつ。
ひとつは、「銀誓館学園は絶対に負けない」と彼に叫ぶ事。
もうひとつは……もしきみが、学園からとある何かを受け取っているなら、『起動』。
そのどちらかで、彼は朝日の光を待たずして消えてしまう。

――怪談はいつだって消えやしないんだ。

そんな言葉を残して、ね。





「第２の病垂が来たら危ないんじゃないの？　こんな怪談作っちゃって（紙束ぺらり）」
「（龍面外して）……一応簡単な回避方法付いてるぜ？　まあ、危険度計り知れないけど」

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誠に御粗末。

今月早々９度の熱出した大馬鹿の脳は今年も良い具合に茹っておる模様でorz
とりあえず熱は下がったが咳と喉の痛みだけ存分に居座り続けてる始末で御座い。