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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「……そう。一応は、大丈夫というわけなのね」

……電話の向こう、未だ明るさは見えないが幾分落ち着いた声。
普段と比べれば全く元気の無い声ではあるけれど。
それでも昨日よりは本当にマシだと、思う。

「ええ、分かったわ。父さん達に伝えておく。他に何か、伝言は?」

少し躊躇うような間の後、余裕があれば蕎麦を分けて欲しい、と向こうは告げる。
返上で鎌倉に戻ったから食べ損ねちゃって、と。
……伝えようものなら蕎麦どころか餅やら新巻鮭やら山程詰め込む気がするわ。
あの両親なら、いやもとい、この家族ならやりかねない。

それから幾許か話をして、電話を切った。



……ああ、何て怒涛なの。
去年分かたれた道は、何処まで開いたというの。
私と彼は、同じ日に生まれて育ったのに。





--------
……私の名前は、掛葉木はたる。
突然の入学書類に対し、『今は』故郷へ残る事を選んだ双子の片割れ。
父譲りで猫になれる事も魔弾術式を扱える事も、隠し通して。


去年の、1年前の三が日明けに弟は鎌倉へ旅立った。
そして1年後の今年、三が日最終日に、漸く初の里帰り。
久々に会った弟――いや、いちはあの時以上にとても背が伸びていた。
中学1年としては多分破格なのに、それでももう少し背が欲しいと呟くいち。……贅沢な。

帰って来たその日は夜更けを待たずにいちは眠り込んでしまったけれど、
翌日は道路の雪掻きに始まり母校の小学校での集まりに2人して出掛けて行った。
……実は小学校時代の皆に帰省の事をこっそり教えていた私。
それは一大事だと皆が考えた、いちの里帰りを盛大に騒ぎ倒そうという計画。
いちだけが何も知らないまま。
果たしてサプライズは無事に成功し、余韻を残しつつも夕方には2人で帰路についた。

2人して遊び疲れてくたくたで、最後の力で炬燵に潜り込んで暫くした頃。
炬燵の上の携帯がメール着信を知らせた。
ライトが光っているのは黒地に銀の雪晶が散るデコレーションの携帯――いちのだ。

「一体何だろ、この時間に……あ、学園からのだ」
「学園? 呼び出しか何か?」
「ううん、新着掲示内容の連絡みたい」

でもまだ冬休み中なのになぁ、と首を傾げなからいちは液晶画面を覗き込み。


……途端、顔色が変わった。
そう、人間の皮膚はこれ程までに真っ白になるのかと驚愕する位の白さに。

「……嘘……」

ややあって口から洩れ出した声。
……まさか落第じゃないでしょうねと私が茶化す事すら出来ない、声。

「……どうしたの、いち」

声を掛けても微動だにしない。

「……はた」

呆然とした、真っ白な顔のまま、声だけが紡がれて。

「……はた、はたは銀誓館に来ちゃいけない。はたの夢……全部叶わなくなっちゃう」
「どういう事なのそれは。……箇条書き、じゃない箇条述べでいいから話して」
「今は言えない。ゴメン、今直ぐに鎌倉戻る」

……蒼白に染まった顔色が戻らぬまま、炬燵から駆け出す。
何も言わぬまま、何も答えぬまま。
そうして予定の半分も留まらぬまま、再び雪の無い関東へ戻って行った。


夜遅くになって漸く、事の仔細を父から聞く事が出来た。
いや、聞いたというより無理矢理口を割って貰った、の方が正しいかもしれない。
父も躊躇っていたから。親世代の能力者として。

曰く銀誓館学園は高等部までであり、以降の進路は個々に任される。
そして、能力者としての選択に迫られるのだという。

一方は、能力者として生きる代償として一般生活は『偽身符』と呼ばれる力に任せる選択。
他方は、己の能力者たる全てを第三者に継承する事で一般人に戻る選択。

『偽身符』は用いると己と寸分違わぬ姿に変わるが、中身までは似せられない。
簡単な受け答えしか出来ないが、生気に薄く、偽者と悟られる事は余程を除き無いらしい。
……その『偽身符』を、余程の状況を除き使い続けなければならないのだ、と。
ゴーストに関わらない時でさえも、全て。

他方、継承は文字通り全てを譲り渡すが為に、その後は決して能力者に関われない。
世界結界の影響下に置かれ、持たざる側の人間として一生を送る。
……そう、学生の間は倒せた弱いゴーストにすら為す術無く狩られる側となるのだと。


……いちの夢は、『偽身符』のいちでは到底叶わない。
だけれど、生まれた時から能力者だったいちは、夢の為とはいえ能力を手放せるの?

水練忍者であるが故に水に溺れるという事を、いちは全く知らない。
能力者であれば、世の影からとはいえ人々をいちは守る事が出来る。

他人との関わりを持てない『偽身符』では、いちの望む道は決して開かれない。
いちの夢は、いちを支え続けてきたとても大きな支柱。


……両方とも決して手放せやしない。能力も夢も、同じ位重い。
私ですら迷うのに、いちが手放せる訳無いじゃない……




次の日の夜、電話が鳴った。
ディスプレイに表示された名前を見て――即座に受話器を取った。

「もしもし、いち? ……平気なの?」

何がとは言わない。

『……大丈夫。掲示の詳細、少し変わったんだ』

耳に流れてくるいちの静かな声。
昨日よりは本当にマシな、だけれど元気は全く無い声。
それでも、安心した。




……ねえ、いち。
銀誓館に来ちゃいけないと、いちは言ったわね。

だけどね、私は決めたの。
編入のタイムリミットを。

高校までの間に今の夢が叶ったら、私も必ず銀誓館に行く。
独りになんか絶対させない。


そしてもう一つのタイムリミット。

もし――


もしも――
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