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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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諸々は 序編 参照 で 。




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「進路希望調査票、か……どーするかな、コレ」
「……掛葉木は、決めてるのか?」
「んー、高校どーしようか止めようか位しか。どっちかってたら専門行きたい」

調理師の、だろうか。
夜間の皿洗いで格段に技術向上したらしい彼の言外の希望を残菊はそう推測した。

「何かさ、伊勢の方に調理科で物凄い有名な高校あるらしいんだけどさ……遠いよな一寸」
「遠い、か? 日本の中なら……そう遠くも無い、だろう?」
「そりゃな、俺独り者だから何処にだって行けるけどさ……叔父さんと父さん達の墓からは」

遠くなってしまう、と零した。
叔父の墓は此の地に、両親の墓は同じ県内ながら北部にあるらしい。

「父さん達の墓はまだ誰かが来るだろうからいいけどさ、叔父さんの墓はきっと誰も」

……来やしないだろう、遺産だけ貰えりゃ良かったんだからあいつ等は。

その一言が吐かれた瞬間、黒い筈の瞳が一瞬だけ緋色に揺らいだような錯覚を覚える。
彼の感情の触れ幅が著しくなった時だけ何故かそう感じる理由は未だに分からない。
水中にいようが呼吸に支障が無いという特異な体質の理由も。
面倒な事にしかならないから他者に発覚しないようひた隠しにしているのだと言っていた。

……そういえば。
此処に転校してから、残菊にも奇妙な事が起こり始めていた。
最初は背後の学年主任を撒こうと死角に隠れた時、横を通った主任に気付かれなかった。
隠れている真横を通ったにもかかわらず、顔が見えていただろうにもかかわらず。
主任が走り抜けた直後にいちるが残菊を見つけたからその時は気のせいだと思った。
だがそれ以降、似た様な事が何度も起こった。
大体は教師達相手だったが、級友だったり家の近所の人だったりと対象が増えていく。
それでも、いちるだけは「何だ、此処にいたんだ」と必ず見つけてくれたのだが……

「じゃあ、そう言う七乗は決まってるのか?」
「……ええと、俺は……」

逆に聞かれて言葉に詰まった。
両親と妹との生活の中でそこまで進路について考えるような機会が無かった。
ただひとつだけ、あるとすれば。

「……花に関わる仕事がしたいな、とは。でも進路は何も」
「花か……直接的に育てるとなると園芸とか農林系じゃないかな。違う方向なら又別だけど。
アレンジメントとかそっち側なら専門学校のが近いし、化学とか生物学の分野にもあるし。
描くとか撮るとかなら芸術系統だし……て挙げてみると結構多いな」

本人以上に進路の可能性を列挙してみせたいちるに驚いた残菊が口を開こうとした刹那、
繁華街の方向から走ってくる級友に気が付いた。……多少、素行が微妙な側の。

「あ、掛(葉木)に七乗! 今向こう行くな遠回りしてけ!!」
「何したんだよ一体。又他中とのやらかし合いか?」
「最初はそうだったんだけど今はもうどうなってんのか俺にも分からねぇよ!?」
「そんなの言われた俺等の方が分からねえって。一寸落ち着け、順追って話して」

級友曰く。
最初は些細な諍いによる地域の中学校の不良側生徒同士の乱闘5歩手前位の筈だった。
その現場に立ち入ってしまった第3の中学校の女子生徒が状況を見て怯えてしまい、
自分達側は「回り道してさっさと離れな」と誘導しようとしたが相手側がそれを妨害。
結果的に無関係の女子生徒に手を上げる事態となった。
そんな行為に憤り殴りかかろうとした自分達より先に相手を血の海に沈めた人間が居た。
……それが何と、何処かの魔法少女みたいな格好のいい年した女。

「しかもその女に殴られた奴血の海でピクリともしねぇんだよ!? マジあれ死んだかも」
「……それで、逃げてきたのか?」
「だってマジ怖かったんだよ! あの女だってきゃるるん☆とか言ってやがったし!!」
「うわ、何その前時代がかった魔法少女的効果音。……でも近づかない方がいいなそれは」
「多分今頃警察ガバッと来てるって! ……あ、そうだ掛の事探してるっぽい奴がいた」
「俺の事を?」
「そ。数日前だけど、前に川に飛び込んで小学生助けた男子ってこの辺の人間かって」
「……確実に掛葉木だな、その人の探し人」
「救助の事だけ知ってて探してた感じだったぜ。掛の名前とか外見とかは知らねぇみたい」
「で、その相手に俺の事教えたのか? 人相と性別と年齢は?」
「いや、その時丁度俺も急いでてさ。同じ中学校だって事位しか喋ってないぜ、確か。
ぱっと見俺等位じゃねぇかな、ホント普通な感じの奴。言葉遣いは西っぽかった」
「成る程……大人じゃないだけ警戒しなくても良さそうかな」

普段は繁華街の先でだが、級友の忠告を受けて繁華街前で各々の家路に別れたふたり。
……そして各々、尋常では無い出来事に遭遇する羽目になった。


リアル志向のホラー映画さながらに必死の逃亡劇を演じねばならなかったのは、残菊。
しかもその相手が人間ではなく、絶対現実にいて欲しくない奇妙な何か。
……何と言うか、『人によっては充分SAN値の下がりそうな何か』。
四方八方から刃の飛び出た腐り崩れかけの、しかも大人より大きな赤子とか恐怖だ。
そんなモノに付かず離れず追いかけられていた残菊の心中はいかばかりか。
しかもこんなモノに限って隠れている残菊を必ず見つけてくれるのだから最悪である。
お陰で大幅な回り道と裏道を駆使して半ば迷いかけて走り続ける事、何と半時間。

……何とか撒いて家に飛び込んだが、彼の蒼白な顔に妹の楓が驚いて更に一騒動が。


リアル志向のサスペンス映画さながらの惨劇の舞台に出くわしたのは、いちる。
最初は小鳥。次は猫。次は犬。……勿論全部パーツ化済という念の入れ様。
それがぽつり、ぽつり、ぽつりと道路に緋色の水溜まりサービス付きで出迎えてくれた。
視線を絶対向けないよう違う方向に固定しながら進む彼の脳裏に浮かんだ嫌な想像、
『そろそろこれより大きなサイズは人間レベルだよな』という現実では勘弁して欲しい想像。
……果たして想像通り、パーツ化済の元人間らしき肉塊が満を持して登場。
流石にそれには耐えられず、踵を返して逆走して別の道を辿って家に帰るには帰れた。

……但しその日だけは夕方の手伝いに行けなくなってしまった。酷い吐き気に翻弄されて。



「……掛葉木? あの、生きてるか?」
「……生物学的には」

翌日。
珍しく朝礼前に来ていると思ったら、真っ白な顔で突っ伏している隣席の級友。

「……新聞配達、休んだ……あのルート、配達で、通る……」
「な、何があったんだ一体? ……通るとか何とかさっぱり分からないが」
「……りょーき、さつじん」
「……何だって?」

……猟奇殺人、と漢字を当てればいいのか今のは。というかまず何故猟奇殺人。
自分も自分で昨日はとんでもない目に遭ってはいたが彼の方でも何か起きたらしい。
それもかなり、えぐい方向で。

「あっ、掛に七乗! お前等ちゃんと無事に帰れ……てなきゃ此処いないよなそういえば」
「……無茶苦茶不安と食道逆流を煽りそうな台詞を吐くな頼むから」
「……なあ、本当に大丈夫なのか掛葉木……? あれからそちらにも何かあったのか?」
「あったもあった、昨日だけで死人と怪我人大量発生しやがったみたいだぜマジな話」

……その一言だけで口元を押さえ教室外へ出て行ってしまったいちるが気懸かりだったが、
とりあえず残った人間の務めと級友の話を聞く事にした残菊。

結局魔法少女もとい魔法女が血の海に沈めた他校生は助からなかった。
赤い目をした奇妙な大犬に噛まれただの鉤爪で引っ掻かれただのした怪我人が多数発生。
変な服を着た女に連れ去られた高校生が別の場所で血を全て抜かれて死んでいた。
暴走した無人のスポーツカーが次々と人を撥ね飛ばし死者と負傷者を生産しまくっていた。
そして隣のクラスの生徒が無残な肉塊化した状態で発見された、等々。
しかも、その肉塊の転がっていた場所というのが……。

「……あの繁華街と掛ん家を結ぶ最短距離の道路のど真ん中だったらしいぜ?」
「……一寸待て、それ……まさかとは思いたいが」

……まさか、見たのではなかろうか。
それを。
だとしたら彼のあの真っ白な顔も配達休んだのも食道逆流云々も説明が付く。……多分に。

「……胃酸しか出ねえ、何も食って無いからだけど」
「……頼むから保健室行こうか掛葉木」
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