◆Shake the Door -δ-

――from Nei Kakehagi

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……友達の死の前と後、ねえ。
表面的な変化は確かに皆が言うように沢山あったかもしれないわ。
それでもわたしが見ていた限り、変わらなかった事もあるの。

そうね、歌う事は変わらなかったかしら。

どちらかと言えば、多分今でも貴方はお祖母ちゃん子だと思うのだけれど、
わたしの部屋に来て童話の本を開いたり、ＣＤプレーヤーを弄っていたっけ。
だけど友達が亡くなる前までは、物語は聞くだけで。
亡くなった後は静かに自分で読んでいたような記憶があるの。
本に触れる事が増えたのは、変わった所ね。

歌だけは変わらなかった。
その日の前も、後も。
確かに人前で歌う事が増えたのは、後の方ね。
『ミサに出る聖歌隊の人間が急に足りなくなったからいちも来なさい』って、
互いに基督教でもないはたるに何度か教会へ引っ張られた事、覚えているかしら？
他の事なら拒んだり文句零しつつだったりなのに、その事だけは素直だったのよね。

後は……そうね。夢見をさほど信じなくなったかしら。
その前まではわたしと一緒になって夢の徴を解こうとしていたけど、
亡くなった後は夢について聞く事自体が減ったわ。話にも出さなかったわね。
又わたしに夢の予兆を尋ねるようになったのは本当につい最近で。
夏の時もそうだし、そして昨日と今日ね。
しかもどうやら、貴方は昔以上に夢見を信じ始めていないかしら？

あら、意外って顔したわね。

だけど信じていないならわたしの解釈にそう一喜一憂はしない筈でしょう？
常識の先で揺らぐものは何であれ真実と虚偽が入り混じっていると思った方がいいわ。
当たらない占い程度に思っていればいいのよ、夢見は。

……どうしたの？

あらら、わたしは泣かせる程酷い事言った筈は無いのに。


そうだわ……そういえば。



貴方の涙を見たのは、友達が亡くなった後から、初めてかもしれないわ。

悲しい顔をしていた事すら、殆ど無かったんだから……。