@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――巡る巡る、死地への途。挑む挑む、靴の奏でる音。揺らぐ揺らぐ、常なる筈の理。
其処には椅子も天井も照明も無かった。
見えぬ床で唯一天地の区切られた宇宙空間という表現が一番正確だろうか。
そして視界を埋める、列を組んで前進する異形の群れ達。
――その光景、まさに昔懐かしきあの大流行アーケードゲーム。
「おやおや、何て無駄に頑張った再現率でしょうかねこれは」
「……何処からどう見ても、インベーダーゲームだな」
影郎と残菊の声が重なる。
「んじゃとっとと撃ち尽くしてクリアしちまいますか。時間も余り無ぇ事やしね!」
彩晴が頭上斜め前方へ撃ち込んだ魔力弾が弾け、流星群の如く異形の群れに降り注ぐ。
「ルチャ影参上――久し振りに忍者らしく死角狙いでもしてみましょうかねえ」
「此処だけはどんな武器でも遠隔攻撃可能な筈だけど……振りかぶればいいのかしら」
慣れた風で刃から疾風を放つ影郎の隣、半信半疑で箒から緋色の花弁を飛ばすはたる。
「俺は普段からロッドだから変わらないかな……って思ったら俺のまで変わってる!?」
「急ぎの戦いで無ければ暫く遊んでいたい気分になってしまいますね、この変化は」
宙を裂き異形へと飛ぶ黒白の羽根に驚くユエ、小さな結晶輪の如き六花弾に笑む雛。
因みにモルモのパチパチ火花も、きらきら瞬く花火のように暗き宙を駆け抜けていく。
「……さて俺は何が出る事やら」
「そんなに難しい顔するような事じゃないと思うんだが、寅靖……」
狼の牙を思わせる鋭い葉の嵐を起こす残菊の視線の先、寅靖が撃つは弧を描く淡金の刃。
様々な魔力の弾丸に撃ち抜かれていく異形達の頭上から降り注ぐ流星群、再び。
通常なら銃弾であるバレットレインすら、この空間では文字通り煌く星屑に姿を変えて。
「――もし此処に居たら水の燕か何かになっていたのかしら」
「あ、それか水なのに雪の形してたり……かもね」
「もうここまで来たらインベーダー通り越して弾幕シューティングですよむしろ」
「なる……確かに皆で違うモンになってる辺りそっちのが近いやもしらんわ」
それぞれ特殊能力とか違いそうだなゲーム化したら、と適応力の高い者達あり。
「弾幕? ……そのようなゲームがあるのでしょうか、聞いた事はありませんが」
「いや、俺もさっぱり。元々知らない事の方が多過ぎるから、何の事だか全く」
「……俺を見ても答えは出ないよ残念ながら。向こうの流茶野辺りに聞いてくれ」
多分そういうゲーム自体に余り縁の無さそうな(又は無かったらしき)者達あり。
「まあ、でもこの調子なら普通にインベーダーで終わりそうな感じでしょうかねえ?」
異形達からの反撃弾を避けようと障害物の影に隠れた影郎が誰とも無しに問う。
向こうは此方の動きに合わせて弾丸を放つものの、見切れさえすれば脅威では無い。
隙を見て彩晴が4度目の流星群を降らせた後に残った異形の数は2桁を切るか否か。
接近する異形から着実に狙い撃てばその数はどんどん減って行き……残り1匹。
――その残り1匹が色々と問題だったという結末を誰が予想しただろうか。
本気モードでも搭載していたのか有名弾幕ゲー真っ青の雨霰をぶちかます暴挙に出たが、
その隙間無い反撃弾の僅かな空隙を縫い肉薄したモルモの零距離火花に遂に沈黙。
……今回の命懸けシューティングプレイにて小さな英雄になった事は言うまでも無かった。
異形達が一掃された宇宙空間に、ぽっかりと浮かぶ次へのドア。
「特殊空間を出る時に強化の効果は強制解除される、と堤は言っていたな」
「次は突っ切ってく5両目だから、無理して再強化する必要は無さそうだよね」
「ち、結構最後の弾幕で抉られてんな……丁度良いから一度インフィニ使っとこか」
「では私の方でも慈愛の舞を。どうやら無傷の方はおられないようですし」
強行突破を図る分、今まで以上に消耗は激しくなる筈。
ドアを開いて進む前の準備を怠らない面々の横、宇宙空間を見上げるはたるに気付く残菊。
「……大丈夫か? やっぱり、心配……だよな。すまない、変な事を聞いた」
「いいえ、御気になさらず。……こうもまで車内が揺れない事が奇妙だと思っただけで」
確か運転席にもゴーストは存在している、と彼女は言っていた筈で。
手が空けばそちらも同時進行で消してはおくと制御者本人もとい弟も告げてはいたが、
しかし彼が全体的には粗忽の部類に入るのは重々分かっている事でもあり……。
端から悪路走行を想定していた姉の自分にとっては、何よりも奇妙な、現状。
「まあ大丈夫だと思いますよ、初っ端から震度5レベルで動けないより良いじゃないですか」
自分で運転席選んどいて何揺らしてんだってストレス溜まるよりマシですよ、と続ける影郎。
その言葉に一瞬刺すような視線を向けた寅靖だったが、直ぐに目を伏せ首を振る。
「次を越えれば、半分。5両目は前半最後の車両ですから」
「……うん。そうだね。そして半分を過ぎたら」
まるで曇り硝子でも使われているのか先が全く見通せないドアを眺めて雛が言葉を紡げば、
抱きしめたモルモに視線を落としたままのユエが静かに返す。
「――後で泣かせてしまえばいい。流石にあの従兄貴も思い知っとく頃合いだろうから」
不意に、彼女達の横から響く声。しかしそれは西寄りイントネーションの消えた標準語で。
「但しそれも全員無事に先頭車両に行かなければ叶わない話。――皆サン、準備は宜し?」
最後だけ普段の西訛りに戻った彼の表情は、やはり平時の不敵な笑みが浮かばぬまま。
むしろ余り表情の変化が見られない気がする、と見知った関係の者は感じたかもしれない。
「……彩君」
「へーきへーき。はたちゃんは自分の事心配しとき、俺の事よりも」
がたり、とひとつ揺れた車両。
それは予兆か、それとも。
――災厄の主が、最後の仲間が待つ先頭車両まで、残り5両。
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