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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――理性は英断を躊躇わせて、激情は最善を見誤らせる。正気と猟奇は紙一重の裏表。






漸く辿り着いた先頭車両。
駆け込む能力者達の視界、照明の落ちた薄暗い車内に人影ひとつ。

「――いちるちゃん! 来たよ来たよ、此処まで……っ! だいじょうぶっ!?」

雛の呼び掛けに込められた想いは、皆同じ、だったのに。

「イイネ、イイネェ! 此処マデ辿リ着ク有望ナ奴ガコンナニ一杯ナンテ!!」

……その想いごと一瞬で水泡に帰したのは狂喜一色に染まった甲高いキンキン声。


刹那、照明機能が回復して人影の全貌が露わになる。
艦長の制服か何かを気取っているのか怪しいタイトな衣装に豪奢なマントを羽織り、
何故か無駄に邪魔としか見えない羽根飾りの付いた制帽を被る派手な女。
ある意味ハードな装飾に見えなくもない棘付きの鎖がその身に巻き付いていなければ、
前衛演劇の舞台で大見栄を切り威風堂々と現れる役者と言い張れそうな雰囲気で。
……役者は役者でも、頭に某野菜の名がでかでかと冠されそうだったが。

「アノ強者揃イノ親衛隊達全部倒シテクルナンテ即戦力トシテ申シ分ナイネェ……
デモデモ何ヨリ嬉シイノハ、ドイツモコイツモコノアタシ好ミノ造形バカリッテ事サ」

正気の欠片も無い瞳の光、能力者達をじっとりとねめ回すような視線。

「オ人形ノ顔(かんばせ)ヤ異国ノ色薫リ、落トシテモ壊レナイ強カサ、
アタシノ素敵コレクションニ、コノアタシヲ護ル栄誉アル親衛隊ニピッタリダ!!」
「……御託はもうええからさっさと返してくれん?」
「1人足りないのよね、今夜の“乗客”一同から貴女がかっ攫ってくれたお陰で」

此処へ辿り着いたのならば既に運転席のドアは開く筈。
最後の仲間たる後輩が、先輩が、従兄が、双弟が孤独の死闘から解放される筈だ。
にもかかわらず、その気配が微塵も感じられない。

「アァ、ソウイエバ居タネェ。黒イ目ノ細ッコイノガ」

キンキン声の女艦長は今しがたやっと最後の能力者を思い出したような素振りを見せ。

「泣イテ喜ビナ、予想外ニ腕ッコキダカラ特別ニアタシガ“全部”貰ウ事ニシタヨ!!」

――腹の底から湧き出したような狂気の哄笑を響かせた。


「勿論オ前達モアタシノ物サ! 新シイ親衛隊トシテコノアタシニ傅(かしず)イテ貰ウヨ!」


……何て、言った?

……今、この地縛霊は、何と言い放った?


「見目麗シキニ屈強ナ親衛隊、ヤット手ニ入レタ腕ノイイ管制官、ミンナミィンナアタシノ物!
コレデモット、モット速ク何処ニダッテ進ンデイケル! 最速ノ称号ダッテアタシノ物サ!!」

「……なあ、“全部”って……全部ってどう言う事だ……?」

「“全部”ハ“全部”サ! ソノ為ニ『ぱーてぃー』マデシテオ膳立テシタンダカラネェ!!」

「……『パーティー』……だと……」

「ハハハ、『ぱーてぃー』サエ成功スレバ永遠ニアイツハアタシノ管制官サ! 永遠ニネ!!」


……全部?

……永遠に?

――まさか……まさか。


「切リ刻ムノト違ッテ『ぱーてぃー』ナラ殆ド身体ガ崩レズ有限ノ命カラ解放出来ルカラネェ!
永遠ニアタシノ下ニ居テ貰ワナキャイケナイ分ノ給料先払イ大盤振ル舞イッテトコサ!!」
「ほーかい……ほーかいもう御託はええつっとんだろ! 即刻いち返しやヴォケェっ!!」
「……久し振りだ。眼前の敵を、心から憎いと思うのは」

抑えていた感情を遂に爆発させた彩晴の一喝に重なる、低く凍てついた響きの一声。
声の主の表情を垣間見た残菊の顔色が瞬く間に蒼白に染まる。
……万物を射殺せそうな視線を放つ、微塵の葛藤も無い冷徹な表情をした親友の、姿に。

「と、とら、靖……?」
「……彼が覚悟と引き替えた先に居たのがこれ程までの下衆とはな……!」
「やっぱり燃やしてでも内容を聞いておくべきだったわ。――むしろ私が代わっておけば」

艶やかな笑みを浮かべる少女、白き燐光の筈の花弁がうっすら紅色の光を放ち始めた箒。
――総毛立つ程の凍えすら感じる空気の中、集団からスッと一歩踏み出した人影。

「一寸深呼吸しましょうか――慌てるな、焦るな、囚われるな、怒りは判断を鈍らせるぞ」

普段僕を止める側に立ってる人間が散々何やってんですか渕埼寅靖、と付け加え。

「簡単な事です。何処ででも勝つのは僕達ですよ、例外なんて金輪際認めないし起こさない」
「……そうだよ、俺達は負けないもん! 皆で、皆で一緒に学園へ帰るんだからっ!!」
「きゅきゅー! きゅぴぴぴぴ、もきゅきゅ……きゅぴっ!!」

挑む微笑、全身に浮かび上がる白い虎紋。魔力の翼が描き出す蒼く煌めく魔法陣。

「……『パーティー』、だなんて。『ゲーム』って聞く以上に気分が悪くなっちゃったじゃないの」

アイツら程の最低なんて居ないと思ってるけど……そう呟く雛の周囲の気温が下がる錯覚。

「返しなさい。いちるちゃんはアナタの物なんかに絶対ならない。――私達だってそうよ」
「……そう、そして、今夜で全部終わりだ。お前を……倒す為に、俺達は、此処まで来た」
「此処まで来れたんが今の今までどんだけおったんかは知らんがな。さあ終いにしよか?」

詠唱兵器の回転動力炉が、静かに、静かにその回転数を右肩上がりで増していく。

「――最後通牒だ。……端から聞く気も無いだろうがな?」


絶対零度の声音で告げられた最後通牒への、答えは。

……女艦長が最初から抱えていた、桁外れの大きさを誇る巨大マシンガンからの弾丸の雨。


「――キャハハハハハハッ!!! ミンナミィンナアタシノモノニナレバイイッ!!!!」

不意を突かれる形になった形の攻撃に己が身を、仲間の身を庇う暇があればこそ。
穿たれる痛みはまだ耐えられる程度だが、しかし身体を苛み蝕む毒や痺れ、睡魔の群れ。
仲間に降りかかった負の力を祓う為に舞おうとした雛の腕が、足がぴくりとも動かない。
その様を見たか女艦長の背後から湧き出した同じ制服姿の骸が錆びた刃を振り翳す。
睡魔を振り払っていた彩晴が咄嗟に滑り込み銃で刃を受けるも、別の骸に腕を撃たれ。
モルモの祈りで解放されたユエが密集地帯に隕石を降らせるが艦長には避けられてしまう。

「サアサイショハダレカラアタシニカシズイテクレルンダァイ!!? ダレガホシイ!?!!」


――は、笑わせるぜ。……誰が欲しい、だって?


混乱の戦場の隙間、するりと紛れ込んだ誰でも無い声。

「……誰もテメエなんかに傅きゃしねえよ。どの面下げられようが却下以外に無えだろうが」

戦場を、先頭車両を駆け抜け満ちる涼しい浄化の風が負の戒めを悉く吹き掃う。


「散々いたぶってくれた礼はさせて貰うぜ。……この上無い最凶の悪夢を『ありがとう』」


だらりと下げた左腕、未だ血のじわり滲む斬撃の傷。
手の、指の形がはっきりと見て取れる青黒い痣の環を露出した首筋に刻み。
右の側頭部からも緋色を流し、頬を伝い落ちていく滴が肩を染める。

それでも。



合流した最後の仲間が浮かべる笑みは、殺気を漲らせながらも悪戯小僧のそれだった。

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