◆其の時を紡ぐ手と -The Last Door in the Presence-

「……何、これ」
「物凄いよねー、つまりそれだけ勝負賭けてる人やラブラブな人が多いって事で」
「これ足りるんですか、テーブル。スクエア全部分解して壁切ってもギリギリじゃ……」
「あ、ラウンドも半円に分けるんだってさー。実はそんな仕掛けがあってねー」

「……人のエネルギーって、凄いよな。本当に」
「世界最強エネルギーは人間の願望だと思うよー。充電出来ないのが難点だけどねー」

◆――pendolarismo.

pendolarismo（ペンドラリズモ/伊）

：曖昧な態度　矛盾した振る舞い　動揺　躊躇　迷い　通勤


※『アモーレイタリア語辞書（http://www.notitle.ne.jp/~amore/）』より

……終わりの仮面の、夢。

不思議な夢を見た。
……行き場の無い感情に疲れた頭が見せた夢かもしれないけど。

それは、天へ、天へと伸び続ける都市国家を縦横無尽に走る人影の夢。
色濃き疾風のように、躊躇い無く、空を翔けるように走っていく。
立ち竦む俺の頭上を軽々と通り過ぎていく影は、ふと急停止して逆走する。
ダンッ、と何かを踏み切った音と……大きくなる影が落ちてくるのは、ほぼ同時で。


「――よう、しけた面してんじゃねぇか。何か時間絡みの難事でも抱えてんのかい？」

良く通る声と共に降って来たのは、長い灰色の髪を靡かせた色黒の、背の高い誰か。


……彩晴の親戚か、この人……？

西南西に願いを。

……うん、俺はやらなかったけど。
西南西に向かって恵方巻き齧るのは。

いや、だって無言で皆で一方向向いて海苔巻き齧る光景の想像だけで怖い。
元々無言無音の食事自体その雰囲気に耐えられないんだけど。
その代わり西南西方向に豆撒いておいたけど代わりになるんだろうか。
後で室内に撒いた方の豆を年齢の分だけ集めて紙に包んで頭でも撫でておこう。
身体の悪い部分を撫でると祓ってくれるらしいし。
何で頭なのかは余り詮索されたくないけど。……後期中間芳しくなかったからさ……。


……あれ、升に残ってる方から口にする為の豆は年齢に１足すんだったっけ？

Open the Door.

白く儚い蛍の代わり。
今の御伴は留まらぬ風。

ほんの少し、又揺らいで変わる。
……本質が揺らぎ続ける水である事だけは、変わらないままだけど。


再び満月に近付き始めた、天頂の白い月。
もう、１ヶ月が過ぎようとしている。

刺々しき厄災を、穿て。

片足で立つ、ジャングルジムの頂上。
遠い昔の俺の記憶より随分視界が高くなったと、今更ながら思う。

それでも未だ、太陽にも月にも星にも手は届かないけど。
失われていくかもしれない他の生命を庇う手を伸ばす事は、出来るようになった。

「……まだ足りないのは承知の上だけどさ」

ほんの少しだけプラス思考が強くなったかな、とは思う。
それは多分、失くしものを見つけて大事なものを失くさなかった結果。
揺らいで、変わる。それでもいい。



※1/19　01:10　初期“準”稿Ｕｐ（相当の情報端折ったまま。これから肉付け必至）
※1/20　00:05　初期稿Ｕｐ（情報修正・配置・交代関連・心得追加）
※1/20　00:30　修正１稿Ｕｐ（ブラッシュアップ開始）
※1/20　00:50　修正２稿Ｕｐ（余り変わったようには見えないorz）・感情活性思案中

……動き出す、小さな気配。

『結局親父の方が一枚上手でしたとさ畜生！　つーわけで暫く猫被っとく』


暫く姿を見ないと思ったら届いた簡潔なメール。
……確かに、あの蓮葵伯父さん相手に勝てる人間いるのか見てみたい気はする。

と言う事は今は……四国、か。
南にある割に、余所の予想に反して冬は寒いのだと聞いている。
曰く関東の方が確実に暖かいそうだ。向こうは炬燵も暖房も両方要るらしいから。


……今度はあいつの方が週末帰郷か……一つ荒事が片付いたと思ったら、又一つ。

……緞帳は未だ、頭上に。

「……きやら、きから、かかやざらし、ゆきしかぜとなぎはらふて」

呟くのは、隠されていた暗号の歌。
年末年始必死で覚えたそれは、未だに俺の頭の中の一部を占拠している。


緞帳はまだ下りてはいない。
狂気の貴種達が齎した悲劇は、惨劇は、未だ九州の地で続いている。
せめて緞帳を絡め取っている糸の数本位は、断ち切れるように。
関わった以上、最後まで目を逸らさないように。

何時か来るその日、その歳。

「――一通りの準備が出来たら上がって構わんぞー、明日分の体力残しとけ」


厨房から伯父さんの声がした。
シルバーの数合わせが済んだらそっちに戻るから、と返して店内を見渡した。

固定パーテーションと植栽と照明とで半個室風に仕立ててある２階も。
可動式パーテーションで大雑把に区画分けされた１階も。

スクエア（角卓）にもラウンド（円卓）にも予約済の札が、幾つも。
カウンター席も下手すると予約に使わなければならないとか、担当の人が言ってたっけ。


少し前は１月１５日固定だったその日は、今は第２月曜日に変わっている。
そして、明日がその日。



……俺にとっては５年後のその日、何を思っているだろうかと、ふと過ぎった。

◇明けていた４年目の新年

……完結迄挨拶は控えようと思っていたが間に合いそうにないorz


松が明ける前に滑り込む勢いですが、新年明けましておめでとうございます。
旧年は本当に色々ありました。
色々あり過ぎた１年間、本当に沢山の方々に御世話になりました。

今年も早々から成人式等新しいイベントが発表されたりと賑やかな銀誓館学園。
漸く鎌倉へ戻って来そうないちる共々、今年も宜しくお願い致します。