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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「うーわスッゲー! マジで360度全部海やんかココ!」
「……そりゃ海上パーキングエリアなんだから周囲は海に決まってるだろ。
それに彩晴、お前瀬戸大橋で散々海見てるんじゃないのかよ」
「あっちとココじゃ風景とか全然違うっつの! うわスゲ富士山見えるぜ富士山!!」

……現在地、東京湾のど真ん中。
この位置だと一体何県に当たるのかと調べてみたら、千葉県らしい。

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「……あーと、これで荷物全部なん?」
「うん、元々最低限だったし残りは清澄(きよと)伯父さんの家宛にすればいいし」
「ち、その手があったかお前には」
「何なら宛名だけ彩晴にして一緒に送っちゃえば? 伯父さんそういうの頓着しないし」
「幾ら同市在住で近しい親戚やからってあんまりそーゆー迷惑かけんのもなぁ……」
「別に平気だと思うんだけど…… あ、伯父さん? 荷物に彩晴分混ぜてもいいですか?」
「何当然の如く携帯取り出して即清澄さんにコンタクト取っとんのやいちっ!?」

「――大丈夫だって。何なら鎌倉駅待ち合わせで彩晴拾って一緒に家まで持ってくってさ」
「……掛葉木宗家てさ、やっぱ何処か螺子逝ってる人間多くねぇか親父然り清澄さん然り」


……その中に俺とはたをカウントしてるのかどうかで俺の返事は変わるぞ、彩晴。


……本当に長かった、と。
戻れなくなるんじゃないかと、思った事すらあった。

だけど、もう大丈夫。

明日には新潟を発つ。
だけど鎌倉一直線では無く、先ずは迎家(げいけ)と矧の中では呼ばれる旅館へ。
既に其処には今回の一件で色々大変だった面々がいるという。


……そんな事言ったら、一番大変だったのはお前だろって突っ込まれそうだな。
いざ終わってしまうと、さしてそう思わなくなってしまうというのも変な話だとは思うけど。



新学期の始業式は8日。
……7日には、鎌倉に戻らなきゃ。

二日が過ぎようとしている。
あの日から。

しかし未だ目覚めたとの報せが無い。
……彼の双肩を痛め尽くした重圧を思えば、眠り続ける方が身体には優しいかもしれず。
だが、冷酷と言われようとも、己が身に課せられた責は果たさねばなるまい。
その期限までに彼が目を覚ます事が無ければ……全ては水泡に帰してしまうとしても。


「……紫苑様。御客様に御座います。御通し致しますか」

襖の向こうの付き人の声音が、今は何故か少しだけ硬く慌しい。

「――はい、御願いします。私の大事な待ち人が御出で下さったのでしょう?」

問い掛けへの返答は無く、襖の開く音がその代わりとなる。


居住まいを正し、待ち人の姿を認め……彼に笑んで見せた。


「……もう身体の方は宜しいのですか、暁降月主殿……いや、掛葉木いちる君」
「はい。もう平気です。……長く御待たせして申し訳ありませんでした、高澤紫苑さん」


頭に未だ包帯の白が走る濃藍の袴姿の彼は、子供でも大人でもない雰囲気を纏っていた。

……目が覚めた時、俺が寝かされていたのは離れでは無く自分の部屋のベッドの中。
今までに比べると驚く程軽い身体を起こし、そこで初めて泣いている事に気がついた。

止まらない涙。
ほんの数秒前まで見ていた夢のせい、だろうか。
ぱたぱたと掛け布団に滴が落ち、染みが広がっていく。


「……怜、くなぎ……」


……いつか、逢えるのだろうか。
ふたりは必ず逢いに行くって、言っていたけど。



「――あ、よーやっと目ぇ覚めた? 頭痛いとか気持ち悪いとか無い?」

ひょこ、と入口から覗く銀髪。

「……彩晴」

何故か久し振りに見たような気がする従弟は、尭矧正装の漆黒の装束だった。


周囲が、白い。

雪原のど真ん中みたいな、真っ白の風景。


……まさかとは思うけど、もしかして死んだかな、俺。
何もかも全部、終わったのに。

鎌倉……戻れなくなっちゃった。
約束、守れなかった。

もう謝る事すら出来ない。
戻りたかったのに。

あの場所に。


審判役が囁き交わす。
目の当たりにした前代未聞だらけの奉納者の、その奉納の様を。

奇抜に過ぎる。
独創的に過ぎる。
荒唐無稽に過ぎる。

確かに、記録の一切とかけ離れたように見える、その様。

だが、おかしな事に誰も奉納を打ち切れとは言おうとしない。
その権利を持つ審判役の、誰もが、何故か。


――三祷は挑むに非ず。生き様を奉納という形で示す披露の術(すべ)でありんすえ。



母さんとは別の方向で特徴的だった口調の、女性。
『あの人』が俺に継がせた全ての“極意”。

継がせた割に“極意”が正しいか間違ってるかなんて関係無いと言い切った彼女。
矛盾に聞こえて……でも実際は強ち矛盾でもないのだと、今まさに知る。



――この世の全ては揺らいで変わる。故に“極意”とて例外ではないのでありんすよ?


明けて、1月3日。

宗家や漂家に残る者は、歳神や矧の祖霊をもてなし1年の幸いを祈る祭礼を執り行う。
そして、他の場所で最も重要な祭礼を取り行う者も。

防砂、防風防塩の為に生み出された林の中、円形に開けた地。
円の端には小さな祠。

集うは楽士、歌い手、衛士、審判者。車座に座り、時を待つ。


後は、奉納者の到着を待つのみ。

――此処は矧の宿命の儀、『三祷』奉納の地。


「……いち、貴方『一人でも成功すれば勝ち』って言ったわよね」
「確かにそう言った。それ位の賭けだった筈なんだけど」
「どう見てもこの数は1箇所分じゃないな。因みにあたし達の所は成功したぞ」
「俺も成功ー。かましたのエアアビと知った奴等の慌てっぷり超楽しかったぜ?」
「私も勿論成功したわ」
「と言う事は全員成功、完全勝利か。……別な意味で矧の未来が心配だ」



……1箇所位逃げ切って大人の矜持保ってくれたって、と要らぬ憐憫の情が過った。
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