◆色鉛筆色のケーキ

『彼』が秋口に買っていたスケッチブックと色鉛筆。

スケッチブックの余白は日を追う毎に少なくなり、
背高のっぽだった色鉛筆はもう半分以下に縮んでいる。


真白の紙を埋めるのは色とりどりのラフ。
大小様々なそれは全て、聖夜のモチーフが随所に踊るケーキ。
色鉛筆色の、優しい色の。

ラフの隙間を、更に正方形の付箋メモが所狭しと占拠する。
行書寸前の日本語と異国の単語が書き付けられ、
中には何かの分量を意味するのだろう箇条書きだけで埋まったものも。


聖夜まであと少し。
この中の幾つかはきっと、絵から抜け出していくのだろう。
本物のケーキとなって、誰かを笑顔にする為に。

絵と同じように、『彼』の手に拠りて。

……ルミナリエを、見上げて。

今は後期中間テストの真っ只中。
このテストさえ終われば、クリスマスと冬休みとお正月が待っている。
何事も無く、何事も無く。

……そう、普通のクラスメイトは、一般人は何事も無く。


でも、能力者の僕達は一寸違った。
テスト直前に、生死の境を渡るような戦いを神戸で繰り広げた。
来訪者同士の因縁の争いを止めるべく介入する形で。
沢山の仲間が傷を負い、幾人かが命を落とした。


それでも表面上は、何事も無くテスト日程が過ぎていく。
一般人はどう捉えて、どう思っているだろうか。
教室内の、包帯や絆創膏がやけに目立つクラスメイトの存在を。

まあ、かく言う僕も腕に包帯、顔に絆創膏なんて格好なのだけど。

……制服に隠れた胸や脇腹にまで、幾重にも幾重にも包帯を巻いて。

天気予報に雪だるま。

ここ数日、鎌倉も寒い日が続くようになった。
ひんやりとした風が吹き抜けては街路樹を揺らしていく。

……聞いてはいたけど、故郷の冬の景色とは大分違う。
空は青いし、空気は乾いてるし。
慣れないうちは喉を痛めるかもって助言は当たりそうな気がする。

向こうの冬はまず青空の日が少ない。
どよんとした曇天、止んでは降る白い雪。
天気予報で故郷の地域は、もう雪だるまが顔を見せている。

…………歳暮れ正月、帰ろうか残ろうかどうしよう。
クリスマスまでは伯父さん達の手伝いするって決めたから、それ以降。

余りにも久し振りかも。

凄い勢いで　日付が　飛んでる　。

……うん、下書き箱（＝非公開ログ）に山程ある割に公開処理してなかっただけというオチ。
手直しとか抜けとかが一寸酷いから修正終わった部分から順次綴じ込み予定ー。


今のうちにダイジェストだけ置いてくと、（■：戦闘系/○：イベント系/△：ＳＴ系）

■夏休み終盤に竜宮城決戦へ。なので予定激変、実家に戻れずorz
■……変態地縛霊退治で初の女装。夏の終わりの羽目外し？

○前期期末返却。中間より点数も順位も上がったー！　……社会？何それ？（遠い目）
△美術９９点取った事でコミマスへバイトチェンジ。ギンギンパワーＺ強い、けどＣＰ重い。
○運動会、走り回ってくたくたに。２Ｂ桃連合は７位。
△土蜘蛛と鋏角衆が集中講義終了・編入。逆鱗＆飛斬帽欲しさに鋏角衆へバイトチェンジ。

■竜宮城決戦で逃した幽霊船を迎撃。皆無事に戻れてよかった……
■野菜跋扈する悪夢依頼へ。……タガ外した自覚はある、んだけどっ……（地面にのの字）


……うわぁダイジェストになってないや。

臨海学校、準備万端？

……ええと、荷物はこっち。明日着る服はこっち。

必要な物は全部詰めたし、打ち合わせもしたし、後は明日になるのを待つだけかな？


あ、忘れてた……臨海学校の行動予定表、クルーザー乗る前に提出するんだった！

（学園へ提出する行動予定表をダッシュで埋め始める）

……臨海学校？

（学園から送られてきた連絡冊子に目を通している模様）


……あー。なるほど。つまり『宿泊学習夏バージョン』みたいなの、なんだね。

向こうだと『宿泊学習＝冬にスキー』だったから、海にってのは思いつかなかった。
こっちだと海辺は砂浜だからテント張るの楽そうだねぇ……。

うーん、行きたいけど時間あるかなぁ？
まだ参加申し込みに余裕あるみたいだし、もう少し予定の調節してみようっと。



あ、そうだ。後夜祭行ってきたんだ。ひまつぶの皆様と。
炭酸塗れになったり海水でずぶ濡れになったりしたけど、凄く楽しかったー！
……そのせいか翌日の授業、疲れで寝こける寸前だったけど……

夏休みー。

鎌倉に来てから初めての夏。
向こうでもこっちでも暑いのは変わらないみたい。団扇必須だー。
無事に終業式は終わったけど、夏休みは何処に行こう？

お盆の間は向こうに戻るとして……うーん。
東京は通り過ぎただけだったから、観光とか面白そうかも。
鎌倉もキャンパス周辺しか知らないから遠出も良さそう。
勿論伯父さん達のお手伝いもいっぱいするつもり。

……結構出来る事多いのかも。１日も無駄にできないなぁ、これだと。


■学園祭

面白そうだったのに参加出来たのは水着コンとバトロワだけ。一寸悔しい。

……未だに水着コン書類に僕の名前書いたの誰だったのか分からないけど！
開き直って出たけど意外に楽しかったー。
終了後に投票結果貰ったらカッコいいと可愛いが半々位になってたみたい。
可愛いって言われたのは……やっぱ顔、なのかな。童顔てよく言われるし。

バトロワはゾンハンさんの粉塵爆発が凄かったー。これでもかって位に。
僕はと言えば、６試合全て残り半分（３０人）には残れたんだよ。
一番凄かった時がラス１５人位までだったかなぁ、標的にされつつ凌駕しっ放しで。
粉塵や拡散弾は回避率高かったんだけどねー……一撃必殺には出す手無し。

殆ど遊べなかった分は後夜祭で晴らしてくるさっ！海だ海だー！



■ジョブチェンジ

思い切ってバイトジョブを『符術士』→『青龍拳士』にチェンジ。
頼ってたガンナイフ持てなくなったのは一寸痛いけど、これで逆鱗使えるー！
……射撃特化型極めそうな雰囲気になりつつだなぁ。爆水掌×４しか近接無いし（汗）

青龍アビ、まずは術式連携取れる龍撃砲から拾ってこうっと。
……あれ？その前に爆水掌揃えるべき？

◆旅立ちの朝、始まりの日

空はまだ暗く、光る星と白い月明かりが綺麗。

頭上から降る、橙色の混じった照明の光。

冷たいというより痛いに近い、冬の空気。


電車を待つ客は殆どいない。

何せ正月三が日が昨日終わったばかり。
そうでなくても、始発に乗り込む乗客は余りいない駅だから。

足元のドラムバッグと、僕自身の真っ白な息と一緒に、
僕はホームで電車を待っている。

翔誓刃の頭の中。

机の上の本棚、レシピ集に偽装された日記帳があった。

良く見ると頁が一部袋綴じになっている。

但し袋綴じが不完全らしく、静かに開けば再び糊で綴じるのも簡単そうではある。

◆銀誓館学園 編入申請書

机の上。
レシピバインダーと教科書が混在する本棚の端に、大きな封筒。

中には、突然送られて来た、ある学術機関からの入学書類。
パンフレットの中表紙には、『彼』の申請書の写しが、今も大事に挟んである。

提出日は師走の暮れ。
そして受理日は翌年の、最初の日。