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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.07.23   NIIGATA



「……何でこんな事になっちまってんだろうな、俺……」

軟体動物もかくやと言ったぐんにょり具合の一真がぽつりと零す。
彼も彼でダンスパーティーに関する一騒動を抱えていた。
はたると比べれば些か贅沢な話やもしれなかったが、当人にとっては一大事で。
スライム数歩手前の一真を見遣り、はたるは数日前の事を思い返した。


「皆聞けー! 3組の七宮寺(しちぐうじ)のダンパ相手が遂に決まったってよ!?」

全速力で教室に駆け込んで来た男子のその第一声が始まりだった。
間も無く教室が喧噪で満ち溢れる。発生源は主に男子だが。

「おい誰だよ、その幸運この上無い野郎は!」
「御誘いの手紙が山程届いてたんだろ? まさか七宮寺全部読んだとか!?」
「うわ想像するだに半端無ぇ、一体何人手紙書いたんだよ……」

渦中の人物は3組の七宮寺理紗(りさ)。
生まれも育ちも正真正銘の御嬢様、愛らしさと聡明さを兼ね備えたまさに才色兼備。
彼女に下の名を呼ばれる為なら死んでもいいと焦がれる男子は数知れず、
そんな彼女のダンスパーティーの相手ともなれば言わずもがな……

「いや、手紙は全部ゴメンナサイしたんだと」
「一寸待て、それじゃ相手いないじゃねーか!?」

……確かに、と片方の耳だけ喧噪に向けていたはたるも思った。
手紙の相手を断ったとなれば他の可能性を考えるしかない。
既に相手は決まっていた出来試合だったのか、又は元々参加する気が無いか、
それとも望む相手からの手紙が無くて自分から申し出に行ったか……

まあ自分には関係の無い話だし、と耳だけ向けて英字小説に戻る彼女。

「んじゃあれか、いいとこの子に良くある許婚って奴か?」
「時々いるらしいぜ、ダンパを婚約者披露の場にする奴って」

男子達も同じ可能性に行き当たったようだった。

「それも違う、外部の奴じゃないし七宮寺に許婚の類もいないってさ」

おや、否定された。

「じゃあ何だってんだよその相手ってのはよー」
「相手が決まったという事はパーティー欠席というわけでも無いんだよな」

……という事は。

「勿体付けてねーでさっさと教えろよコノヤロ!」
「まさか七宮寺自身がお願いしますしに行ったとか言うんじゃねーだろうな!?」
「あり得ねぇ、そんな七宮寺あり得ねぇ!!」
「貴方だったら踊っても良くってよとか言ったってか?」
「待て貴様、七宮寺はどっかの御バカ様とは違うんだよ訂正しろっ!!」

室内温度が目に見えて上がったような錯覚を覚える程に喧しくなる男子達。

「そのまさかだよ! 2組の市川に直談判したんだと!!」

放たれた衝撃の事実に思わずはたるも男子の群れに視線を向ける。
2組の、と前置きが有ろうと無かろうとこの学年で苗字が市川なのは一真しかいない。
……暫くは一真への怨嗟だか嫉妬だかで教室が相当喧しいままだった。


当の一真も、その時の事をはっきりと覚えている。
授業も終わり後は帰りのホームルームを待つだけといった状況下のベランダ、
手持無沙汰に暇潰しをしているように見せかけ横にいるマウと遊んでいたところ……

「あの、市川さんっ」

隣のクラスのベランダから自分を呼ぶ声が。
一体誰だろうと声の方向を向くと、其処には二つお下げの女子の姿。……誰だっけ。

「はい市川は俺ですが、何か御用?」
「あ、あの、私3組の七宮寺です。突然こんな事言ったら御迷惑かもしれませんが……」

七宮寺という苗字が絶滅危惧種と名高い大和撫子の御嬢様と繋がるまでが長かった。
しかし何の接点も無い筈の彼女が一体何故、と首を傾げていたのだが。

「もし何方かとの御約束が無ければ、ダンスのパートナーになって下さい……!」

……今彼女何て言った?

「ごめんなさい突然御伺いして……あの、ええと、もしかしてもう4組の」
「はーちゃんの事言おうとしてるなら、彼女はパーティー欠席確定だってさ」

あれ、もしかして俺と彼女ってそんな関係だと思われてる?
いやいやいや普通に幼稚園時代からの悪友同士なだけだってば俺等。

「だからまあ俺なんかでいいんなら構わないけど」
「……宜しいの、ですか?」
「うん、何で俺なのか物凄い謎なんだけどさ」

隣で同じように首を傾げるマウ。見えてたら結構凄い光景だ。
そんな状況を強制終了させる終礼チャイム。

「あ、ありがとうございます! えと、続きはまた明日にっ!」

教室に駆け戻っていく七宮寺。
……そしてベランダでクラスの男子に無茶苦茶詰め寄られて尋問受ける一真の姿。



「……マウ、変な感じはしなかったんでしょ?」

一真の隣の椅子にちょこんと礼儀正しく座るケットシーのマウに問いかける。
にぃ、と返すマウの表情に危惧の要素は見当たらない。

「それに一真君、新学期早々に貴方自分の教室に細工したんでしょ?」
「……したよ、皆帰ったの見計らってこっそり祭壇組んで祈祷を」

除霊建築士の一真は祭壇を組み祈祷を執り行う事で、建物の不浄を祓える。
その力で自分の教室にゴーストを寄り付かせない細工を施していた。
……一真が悩んでいるのは、七宮寺が自分を誘った意図が分からない点。
まさか……まさかとは思いたくないのだが。

「それじゃ、少し整理しましょ。
余り想像したくない可能性はふたつね。リリスか、リビングデッドか。
まずリリスの線は相当薄いわ。彼女は小1からの内部生、此処に9年いる。
9年いて何も起きてないわけだし、貴方に声をかけたのも多分偶然よ。
リビングデッドの方が可能性は高いけど、それなら貴方に声かけないわ。
何せ周囲が既に好意やら憧れやら抱いてる男子ばかりなわけだし、
己の身体を保つ材料だらけなのにわざわざ一真君騙す必要はあるの?」

……彼が自分の力に気付いてから今までで漸く半年。
その間に結構危ない目に遭った事もありゴースト絡みにはピリピリしている一真。
そんな中でのこの状況、分からなくも無いのだが。

「そんなに疑うなら今度教室に入って貰えばいいわ。それとて判別材料には弱いけど」
「……それしか無いかー。御バカ様要るから物凄いやりたかねーけどさー」
「諦めなさい。本当にのっぴきならなくなったら従弟に来て貰うから、いちと一緒に」
「なあ、最終手段じゃなかったっけ、それ?」
「最終手段よ。……“ゴーストがひとりじゃなかったら”ね」

暫しの沈黙。

「……凄えよな、いち。あいつそういう事ばっかり見てるんだよな」
「その道を選んだのはいち自身、私も直ぐに追い付くわ」
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