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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.08.28   NIIGATA



「……はは、こりゃ確かに潰し甲斐があるさね……面白ぇ」

押し寄せるゴーストを眺めて笑う彩晴。
ゾンビハンターたる矜持と完殺への渇望とが彼の力の源が故の、笑み。
そんな従弟を一瞬見遣り、いちるは後ろに立つ仲間に向き直る。

「……最終確認だ。
一真、奴等を引き付けるまでは泥濁陣でいい。迷宮陣は全部範囲に捉えてから。
はたは戦況優位になるまでに魔弾撃ち尽くさないように。魔道書だと前出て殴るしかない。
七宮寺さんは自分の身を守る事を優先して。ヒーリングヴォイスは後ろに下がってから。
ああ、身を守れを一番遵守すべきは一真だからな? 現状一番ぺらいんだから。
彩晴……は言うまでも無いな?」
「インフィニはいちの許可が出てから、やろ? 流石にミスって落ちるの嫌やし」
「せめて奏甲渡せるまで待て。万が一ヤバくなったらその限りじゃないが。
……マウ、君も無理はしないで。
君には一真を癒す力があるけど、君自身を癒す術が無い。
だから傷が深くなったら必ず俺の所まで戻ってきて。絶対に助けるから」

いちるの諭すような言葉に、にぃと静かに頷くマウ。
そんなマウの頭を撫で、ゴーストが目視可能になり始めた真正面を見据えたいちる。
両手の燕刃刀を抜き放ち、逆手に構える。
その隣でマウもレイピアを構え、彩晴は長柄鎚の柄を肩に担ぐ。
彼等前衛が庇う形の理紗、一真、はたるも各々の詠唱兵器を手に取り、構えた。

ゴースト達が地を蹴る轟音が津波の様に寄せて来る。
その先陣を果たす形で突進する剣狼の姿を完全に捉えた瞬間、いちるが叫ぶ。

「――行くぞ!!」

ほぼ同時に地を蹴り駆け出す彩晴、マウ、いちる。
その後ろではたるが宙に射手の魔法陣を描き、一真と理紗が精神を集中させる。
眼前に迫る人影を認識したか、剣狼が甲高く敵襲を吼える。

――迎撃側の戦いの火蓋が、切って落とされた。



「……何て数だ」

黒い闇から湧き出てグラウンドに現れたゴーストの群れを捉えた残菊が呟く。
典杏よりその数が数十と告げられてはいたが、実際に目にするまでは実感が無かった。
……この規模なら、講堂へ突っ込めば惨劇は決して免れ得ない。
運命予報一つあるか無いかで変わる運命と現実の重さを実感させられる、そんな光景。

「丁度10分……尭矧の合図通りか。皆、準備はいいな?」
「勿論!」
「……ああ、大丈夫」
「俺達の出番だね!」

各々の手の中のイグニッションカードが、照明の光を受けて仄かに輝いて見えた。
円陣を組むような配置で立っていた4人が一斉に起動を宣言する。

「「「「Ignition!!」」」」

4つの音無き疾風が、彼等の得物とゴーストに抗う為の異能とを瞬時に開放した。
そして新たに、3つの影が地に――主の元へ舞い降りる。
ユエの前には白くふわふわの毛並みが愛らしい真モーラットピュア、モルモ。
残菊の横には妹であり白いワンピース姿の小柄な体躯の真スケルトン、楓。
唯の背後には先生であり死神の大鎌を構えた王たるスカルロード、ジャック。
使役ゴーストと呼ばれる彼等は主との強い絆によりゴーストでありながら人の側に立つ。

「さあモルモ、一緒に頑張ろう!」
「お前も無茶はするなよ、楓」
「待たせたなジャック、大暴れしてやろうぜ!」
「これで“全員”揃ったな。――さあ、時間だ」

寅靖の言葉と、ゴースト群の先頭が植樹に隠れる彼等の視界を横切るのはほぼ同時。
直後、夜の静寂を切り裂くような一声がゴースト群の更に先から響く。
……聞き間違えようも無い、迎撃指揮者の声。

「……いちる!? 遂に始まった、のか?」
「そのようだな。待たねばならぬのが歯痒いが、それが作戦だ」
「待ってろよ……絶対ジャックと助けてやるからな」
「早く、早く通り過ぎて……! 向こうの皆が俺達を待ってるんだから!」
「きゅきゅー……」

襲撃ゴースト群の最後尾が目の前を通過した瞬間が挟撃開始の合図。
だが縦に長い一群は未だ最後尾を見せないまま駆け抜けていく。
剣狼、真っ赤な熊、巨大な猿、二対の翼の鴉、妖艶なリリス……そして、頭と思しきリリス。
予報や一真からの情報通り、幼女姿の彼女だけ何処か不自然で浮いている。
それでもこの一団を率いる存在であるが故に、舐めてかかれる相手ではない筈だ。

移動の轟音に混じる妖獣の咆哮と剣戟、宙を翔ける炎や衝撃波に……断末魔の響き。
その断末魔が人の側の発するものでない事を只管に祈りつつ、待ち続ける挟撃側。
……それは永遠にも似た一瞬。


そして、遂にその時が来る。



最後尾の妖獣の群れが駆け抜けて行った、その瞬間。

植樹の隙間を縫って疾風の如く戦場を目指す寅靖を追い、残菊と楓、ジャックが続く。
モルモへ指示を出したユエが魔法陣を描き、唯が手にする長剣、宵灯を旋回させて構える。



――この瞬間、隠し玉とも最大戦力とも称される挟撃作戦が、遂に始まった。
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