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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.08.28   NIIGATA



剣狼の刃が、牙が地に崩れ融けて消える。
身から生やした刃を掠らせる事すら叶わず、異形はマウのレイピアの前に沈んだ。
一撃で先陣役を屠ったケットシーの姿を見て我も負けじと彩晴も柄を握り直す。

「幸先良好! さあ完殺されたい奴からとっとと来ぃや!」

挑発に乗ったか肩を怒らせて突進する真紅の熊目掛け長柄鎚、TIME-LIMITを鋭く振り抜く。
持ち主に似た傍目華奢な外見とは裏腹に、現ずるは炎を宿す熊の骨を砕き肉を抉る一撃。
腹部を抉られた激痛に暴れる熊と黒い影が交錯した次の瞬間、その首は高く宙を舞った。
逆手に構えたままの燕刃刀の血糊を振り払い、もう一匹の熊と対峙するいちる。
ゆらりと夜風に漂う水霧に己が身を映しながら。
狂ったような咆哮と共に叩き付けられた熊の上腕を刀で受けた彼のその後方、
真直ぐ前方へ右手を掲げた理紗と、グラウンドに左手で触れる一真の姿。

「何人たりともこの先には絶対行かせません!」
「お前らはさっさと毒沼に溺れてしまえ!」

ずぷり、とグラウンドが死の沼に変わるとほぼ同時、一直線に走る衝撃波が異形達を襲う。
先頭集団の幾らかが毒に身を蝕まれ、理紗の前方真正面の何匹かが軽くない傷を負う。
いちるが進行妨害した熊も例外ではなく、毒と衝撃波を諸共に食らい身を捩らせる。
すわ好機と放たれた三日月の軌跡――彩晴の蹴撃で2匹目の熊も背中から倒れ消えた。

「どーした妖獣共、お前等の本気はこんなもんか? 完殺一途のゾンハン舐めんな!」
「先陣なんてこんなもんだろ。……此処から俺には微妙に分が悪いがな」

ほぼ無傷で最初の障害を潰し終えて叫ぶ彩晴の横で前方を睥睨し眉根を寄せるいちる。
実力と場数は迎撃側で随一のいちるだが、身の軽さと引き換えの打たれ弱さが彼の弱点。
……其処を存分に突いて来る気魄任せの妖獣達相手は不得手の部類に入ってしまう。

「は、分が悪いのは全員一緒だっつの。ぺらいの嘆く前にマウ見習えマウを」
「……そうだった、マウの方が危なかった……マウ、おいで」

とたたっと駆け寄って来るマウのレイピアにこつん、と左手の白い燕刃刀の峰を当てる。
すると蛍を思わせる小さな光の群れが湧き出しマウの武器や周囲を漂い始めた。
驚いて武器を落としそうになるマウに、大丈夫だよと笑ってみせる。

「ふわふわ視界に入って邪魔に見えるかもしれないけど大丈夫。直ぐに分かるから」
「つか初めて見たけど蛍なのかよお前の白燐蟲イメージ」
「……黙れ喧しい、俺だって母さんみたいに翼みたいなのが良かった」

……死地真っ只中でする話題じゃない言葉を交わし、即座に二手に分かれた。
左手方向の妖獣達へ彩晴とマウ、逆側の右手方向へいちる。
水霧の中で蛍が煌き始めるいちるの前方、待ち受ける巨大な猿が突如炎に包まれる。
焼き焦がす炎の軌跡を、後方を確認するまでも無くはたるの炎の魔弾だった。
一気に踏み込み、心臓目掛けて逆手のまま右手の那由他を渾身の力で突き通す。
白燐蟲の加護を載せた鋭利な一撃に、炎で既に焼かれた猿が耐えられる筈も無く霧散した。
視線のみ左側へ向けると、丁度彩晴とマウの連携攻撃で二対翼の鴉が地に堕ちた瞬間。
僅かに表情が緩み、しかし直ぐに前方から襲い掛かる妖獣達を睨み両手の刀を構え直す。
その刹那、左頬に影が掠めたと同時に刃物で切られたような痛みが走る。

「一人で御相手なんて何て無謀なのかしら? でもきっと美味ね、楽しみだわ♪」

妖獣の群れの後ろから豪奢なドレスに身を包んだ女が高笑いする姿。その髪は全て蛇。
その妖艶な姿に余り似つかわしくない無骨で巨大な銃が先程の影の生み手か。

「……言ってろ、その首蛇ごとかっ飛ばしてやる」

正直な感想を吐き捨て頬の血を拭う事もせず、彼の視線はその先を目指す。
斃れる訳にも逃げる訳にもいかない。
……その先から絶対来る仲間達を信じて、立ち塞がる為に。


白燐蟲の加護を同じく受けたマウのレイピアが的確に敵の急所を狙い踊る。
一真の不浄泥濁陣が齎した毒に蝕まれる個体が多い左側の妖獣達相手であるせいもあり、
彩晴とマウが同じ妖獣を徹底的に叩く事で優位な状態を維持していた。
それでも身に負う傷は小さいとはいえ増え続けている。蓄積すればそれだけ脅威になる。
低空飛行で威嚇する二対翼の鴉は外見にそぐわない豪力で刃と化した鉤爪を振るい、
回避しようと注意を向けるその隙に巨大な猿が両腕を振り回して吹っ飛ばそうと動く。
妖獣の割に中々効率的な連携を用いてくるという現状だけでも結構堪えるのだが……

「ああもうテメェの相手は後だって言ってんだろが! 邪魔やそこ退け消えちまえ!」
「貴殿の命令は論理的、理性的過ぎて受諾出来ません。故に却下致します」

加えて迷彩服姿の面倒なリリス1名。確かアサルトメイデンとか言う個体。
理不尽な命令こそが快楽の源という彼女も長銃片手に1人と1匹へ弾をばら撒く。
……彩晴の言い分も傍目からすれば中々理不尽だと思うが彼女としては御不満の様子。
自分もマウも術式に長けている事から同じ術式型のリリスは後回しでも何とかなると踏み、
背後に迫る大猿のどてっ腹を振り向きざまに彩晴が蹴り飛ばすとマウもレイピアを一閃。
たたらを踏んだ妖獣の脳天目掛けて放たれた天球儀が涼やかな音と共に終焉の時を刻む。
が、直後響いた銃声には反応出来てもその意図を察するには一瞬遅く。

「……マジかよ!? マウ、そっちは頼む!!」

後方に下がるマウを庇う形で彩晴が鴉の突撃を阻み、腕に幾筋もの刃傷を負う。
立ち塞がる彩晴と背中合わせになったマウがレイピアを掲げ、振り下ろす。
その切っ先から迸る魔力の向かう先は……遥か後方で血の吹き出す肩を押さえた一真。
震える声で、それでも朗々と響く理紗の癒しの歌と相俟って直ぐに傷が塞がっていく。
彩晴の刃傷も流れ出る血は止まったが、抉られた鋭い痛みは未だ腕を苛むまま。
幾ら華奢だろうが鎚であるだけに重量のある得物を片腕だけで操るには限度がある。
もしもの時はと用意してある回復の術を使うか逡巡し、だが首を横に振って鎚を構え直す。

「はは、まだ絶体絶命とは程遠いさね……後数発位貰ってからやないと」

視界に捉えた他の妖獣の群れとの距離を測り、笑みと共にアサルトメイデンを手招きした。
どれだけ此方にゴースト達を引き付けられるか、背後を塞ぐ手筈が成るかで勝負が決まる。
――根の国の輩共に『気付いたってもう遅い』と言い放つ為に。

「さー、約束通り御相手したる。……さっさと潰れて逝っちまえ?」
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