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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.08.28   NIIGATA



その空間で人の形をした者は先程よりも多かった。
だが明らかに仲間の数は減っている。

愛剣の宵灯を構え殺気を漲らせている唯。
血を流す理紗を助け起こそうとしている一真。

……ほんの少し前まで2人の傍に居た筈の相棒の姿が無い。

楓をとっさに庇ったのか、腕から足から緋色が滴る残菊。
対照的に間一髪で避けたか目立った傷の無い寅靖。
顔を歪ませ長柄鎚を杖代わりに何とか立ち上がった風の彩晴。

そして、最も大きな血溜まりと思しき緋の床の中央に立つ人影。
真白の短刀も銀刃の直刀も青紫色の鉄線花も全て紅く色代わりしたその姿。
……望んで必ず叶うならば最も見たくなかった光景に、はたるの思考は硬直した。


神経質そうな表情に目を赤く血走らせた着物姿の痩せぎすの男。
小学生位の子供からいい歳した大人まで年代も服装も新旧ばらばらの人々、5人。
彼等のたったひとつの共通点である、其の身に絡み付く鎖の音をざらりと耳障りに響かせ、
現の世と切り離されし領域に迷い込んだ生者に襲いかかろうとする、まさにその瞬間。


「「――止まれっ!!」」

重なる絶叫と咆哮。
大地の気を乱し足止めする八卦迷宮陣と強靭な力で全てを束縛する土蜘蛛の糸、
一真と寅靖による同時妨害は幸運にも全ての地縛霊を留め置く事に成功した。
反動として寅靖は異能の術を封じられたが、今は仲間を助ける事が先と判断しての事。
それ程までに、仲間の中で無事でない者の方が多かった。
……床に広がる夥しい緋色を、その証拠として。

「……彩、君?」
「……一番奥のが頭やて事以外俺にも分からん。奴が何しよったんかもな……」

その結果はコレやが、と自分の身体を示す彩晴。
何がしかの力に掻き毟られ引き裂かれたような傷が、体の左半分に集中していた。

「何つーか……こっちに引きずり込まれた瞬間食らったて感じ」
「……声だ。文字通り、全てを引き裂くような怨嗟の声。しかも弱点を的確に突くようだ」

運良く避けたらしい寅靖が続ける。

「まるでブラストヴォイスを凶悪にすればこうなるだろうという、な。……厄介極まりない」

理紗の意識が戻ったのか、特殊空間内に癒しの歌が満ちる。
癒しの力としては弱くとも全員がその恩恵を受けられるだけに貴重な異能。
それでも、仲間の大事な相棒達を再び引き戻す力が無い事だけが彼女の悔い。

「――ああ、だから1度意識飛んだのか」
「……この現状でその思考に至る前にすべき事があるだろう掛葉木」

寅靖の推測に心底納得したような風でさらりと言い切った人間1名。

「はた、そこで突っ立ってるしか出来ないんなら下がれ。壁にされても文句は聞かない。
ユエちゃん、モルモに残菊先輩の治療お願い出来るかな。先輩が倒れたら二人減る。
それと何より彩晴、お前はもう博打禁止。やらかしたら此処に捨て置く」
「……善処はしとく。しとくがこのタイミングでリミットブレイクとかマジ止めて下さい」

マジ切れ通り越して凌駕直後が一番怖ぇ、と血染めの従兄に視線を合わせず彩晴が応え。
……了解ではなく善処、だったが。

いちるを見れば確かに先程まで身に纏っていた筈の水霧も蛍火も掻き消えている。
あの着物男の地縛霊の声にエンチャントを根こそぎ引っ剥がす効果があるのでなければ、
彼が一度戦闘不能まで叩き落とされたが魂の凌駕で踏み止まった事が推測出来た。
そして傷を負うも白燐奏甲の力が残っている彩晴や唯の状態を見る限り、どうやら後者か。
足下の緋色に頓着する事も無く姿を映す水霧を生みながら澱み無く指示を出すという、
普段ならば尚更、いや戦闘時だろうと彼の性格からして決してあり得ない筈の言動。
只でさえ冷淡な本性から感情が消え理性と情報だけで動く様はまるで機械人形。
……一番怖い、も強ち間違いでは無いのかもしれない。

「う、うん分かった! モルモ、残菊兄ちゃんを!」
「もきゅー!」

モルモが向かった残菊の隣では唯が旋剣の構えで自分の傷を癒し、
理紗のヒーリングヴォイスの効果もあって彼女も一真も目立つ傷は殆ど消えた。
インフィニティエアの効果が未だ続く彩晴はこれ幸いと再び烈風を起こして傷を塞ぐ。

「さて、この特殊空間の主があの着物地縛霊なら倒せば脱出は可能か」
「見た感じそうだろうな。ただ周囲が凄ぇ邪魔だぜ……今すぐジャックの礼がしたいってのに」

剣の柄に結ばれた橙色の紐を強く握り締め地縛霊を睨みつける唯。
同じ紐を大鎌の柄に結ぶ無二の相棒を傷付けられた分の礼は返さねば気が済まない。
唯と同じ想いを抱いているだろう一真も目の傍を流れる血を袖で拭いながら立ち上がった。

「……絶対許さねぇ。マウの痛み、何倍にもして返してやる!」

生涯初めて心に抱く混じり気無しの憎悪が形を取ったような不浄泥濁陣が床に具現する。
毒沼の色を黒く黒く、光を一切通さない漆黒に染めて。
間髪置かずに蝕みの沼とまるで同化したかのような唯の影の腕が一直線に着物男に迫る。
だが主の地縛霊は血走った目をぎらつかせ、そのどちらをも袖を翻して霧散させた。
しかし周囲の取り巻き達に避ける術は無かったか毒の餌食となっているのがまだ救いか。

「――アイツモコイツモドイツモ! オレガイッタイナニヲシタ!!」

着物男が吼える。
再び凶悪な声の刃が巻き起こるが、戦陣を薙ぎ払った最初の一撃程の力は無い。
それでも元々の体力が無い者にとっては充分な脅威。
何とかやり過ごした理紗が再びヒーリングヴォイスで仲間達を支える旋律を響かせる。

「……何をした、か? アナタは私に世界で一番見たくないものを見せてくれたわ!!」

はたるの半ば絶叫に近い声と共に業炎が撃ち込まれるも、着物を焦がす程度でしかなく。
ほぼ同時に放たれていたユエの雷の魔弾も幾らかの衝撃を与えるに止まっていた。
ギリギリまで間合いを計って仕掛けた彩晴の蹴りは取り巻きの1人を何とか霧散させるが、
周囲の他の地縛霊の標的として狙われた所をフォローに回った寅靖と耐える形に。
2人を援護しようとユエが狙い定めた雷の魔弾が取り巻きの1人に直撃し、雷が縛り上げる。
すかさず残菊と楓が麻痺と毒に絡め取られた異形を斬り捨てた。


――残りは3人と、怨嗟の声を刃と為す着物男。

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