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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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諸々は 起編 参照にて。

≪今迄の登場人物≫
・辰砂(しんしゃ):焔の瞳と髪の鋏角衆
・茅流(ちる/妹)と杷留(はる/兄):年若い双子の能力者
・玉滴(ぎょくてき):長い銀髪の土蜘蛛、辰砂と義姉妹の絆を結ぶ
・鋼真(こうま):狼と呼ばれる異郷から来た壮年の男(=クルスニ)
・佐々(さざ):褐色の肌を持つ長身の男
・真砂(まさご):蜘蛛童の時から辰砂を育てていた土蜘蛛の巫女





--------

……生まれつきの病気だったんだって。
身体が弱いのに、ずっと前線で戦っていたんだって。
双子の兄を、杷留を支える為に。

もう、はにかむように笑う、海を背にして笑う茅流を見る事は出来ない。
あの畔の樹の下に葬られた彼女は安らかでいてくれるだろうか。
それとも……嘆いているだろうか。一人にしてしまった半身を、想って。


彼女の死の直後、大規模な戦いが幾つも続いた。
矧とは別の、他の集団と同盟を組んで戦わねばならぬ程の大きな戦い。
全ての戦いを頭領と共に率いていたのは、杷留だった。
……女物の装束を纏い、緋色の髪紐を靡かせた、杷留だった。
誰も、何も、言わなかった。
遠目ではきっと茅流に見えた事だろう。それ位、本当に見紛う程の、姿で。
共に戦場を駆ける黒肌翠眼の少女、亜野(あや)と並ぶと、本当に少女のようで。

そして、戦いの最中に流れる不思議な噂。
海の向こう遠い異郷で、化け物や銀の雨を追い払う儀式を行うかも、と。
それがもし成功したら、もう化け物に脅かされ命を賭けて戦う必要は無いのだ、と。

何時しか、玉滴姉様の隣にいるあたしの逆隣には佐々がいるようになった。
茅流が昔言ってた、鋼真さんの連れてた蝙蝠というのは奴の事だった。


そうして、戦いの終わり。
傷付き斃れる者が幾人も幾人も出た戦いが終わった日の事。
いつも通りに茅流の塚に詣でたあたし。
先客がいた。

緋色の髪紐。
蘇芳色の着物、紺色の打掛。
……どちらも、べったりと暗い赤が滲みた。

「……杷留……?」

既視感。

「……辰砂さん、か」
「……まさか。お前も、まさか……」
「ええ、その通り。……病に蝕まれてたのは、茅流だけじゃなかった」
「……塒へ運ぶか? ……それとも、“最期まで”此処に……いるか?」
「なら、後者で御願いします。最期位……茅流の傍にいたい」

口から零す緋色。

「……今更言っても詮無い事か。でも、生まれるなら女が良かった」

……今、何と。

「だって、俺が男だったせいで、ずっと茅流に要らない気を遣わせ続けてしまったから。
同じ女の双子だったらそんな事無かった。……最期まで一緒にいられたかもしれないのに」

――男に、生まれたかった。
――そうすれば、杷留にばかり辛い思いをさせずに済んだのに。

「……でも、もう終わりだ。もう、禍津に怯える必要はないんだ。
だから、俺の役目も終わり。やっと、茅流に……」


途切れた言葉。
あたしの膝の上で、口の端から血を零しながら、杷留は息を引き取った。



……禍津に怯える必要はない。

そう言って逝った彼の言葉の真意を、あたしは直ぐに知る事になる。
化け物が急速に消えていく。
銀の雨を見る事が殆ど無くなる。
……そうして、同じようにあたし達の力も、薄れていく。
元々この力は化け物達と同じように銀の雨が齎していたのだろうと、鋼真さんは言った。
ならば銀の雨が消えれば、この力も消えるのだろうと。

玉滴姉様は、他の蜘蛛と童達と洞の奥深くで深い深い眠りについた。
真砂は姉様の眠る洞に封印を施し、傍に建てた御堂で護る日々を過ごす事になった。
鋼真さんは狼の姿を封じ、山の無頼漢達を纏め上げて矧に組み込んだ。
あたしは……ただ鋏角衆の力を全て失っただけで、眠りにつく事は無かった。
その理由は、きっと。



「――よう、茅流、杷留。久しいな。元気か、って聞くのも野暮か」

年に一度の塚詣で。
双子の眠るこの塚の垣には、葬られて後に不思議な事が起きている。
誰も植えてはいないのに二種の蔓花が咲くようになった。
淡く青白い鉄線花と、柔らかい赤の蔓薔薇と。

「今日はな、見せたいものがあるんだ。――なあ、佐々?」

……これが、きっとその理由。
あたしは、佐々の伴侶になったのだ。
蝙蝠の力は失ったが、お前だけは絶対守ってやるから。そう言われた。泣かれた。
妹弟のようだった、守れなかった双子の分も一緒に、と。

「ああ。二人とも驚くぞ? 何せ俺等の子供も双子なんだからな」
「そうなんだよ、何て偶然だよなぁ本当に」

姉の名前は、蓮(れん)。弟の名前は、橘(きつ)。
それぞれが一番大好きな花の名前を子供に託した。因みにあたしは橘の方。

「で、なぁ。あたし達の子供だから蝙蝠か蜘蛛かで生まれると思ったらそうでないのな」
「どっちも普通の人間と変わりないんだ。……いや、もうそれでいいんだ、きっと。
というかな、蝙蝠蝙蝠って言うが俺は夜の氏族で蝙蝠は眷属だって何度言えば……」

もし力を宿して生まれていたら。
姉様や他の集団の蜘蛛や狼や蝙蝠のように、眠らねばならなくなったかもしれない。
あたしや佐々や鋼真さんのように力が封じられてしまえば、この世にいられる。
それにもう、化け物相手に戦う必要が無いなら、力なんか要らないんだ。

「ああ。そうそう。この話はふたりにはして無かったっけ。
流石に力失った状態で塒に住むのは危険って事でこの周囲まで降りる事になったんだ。
だからこれからは毎日塚まで来れるって訳だ。もう淋しくなんかないからな?」



姿が変わる。住処も変わる。力も変わる。
それでも、変わらないものもある。

「約束するよ。あたしは約束絶対破らないから、安心して見ててくれ」
「勿論、俺もな。例え力はもう無かろうと、心の要は決して揺らがねぇ」





――例え此の世が如何に裂け綻びようとも。

――繋ぎ止めろ。


――それが、『矧』だ。
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