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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.08.28   NIIGATA



「――自分の立場が悪くなれば直ぐ逃げると。リリス以前に只の餓鬼だな」

口火を切ってせせら笑ったのは、残菊。楓は興味無さげに明後日の方向を眺めたまま。

「そそる要素の欠片も無ぇし、まずお前本当にリリスか?」

……ぴたりと幼女リリスの動きが止まった。
それはもうまるでリモコンの停止ボタンでも押したかのように、ぴたりと。

「あ、俺もそれ思ったぜ? 余りに餓鬼だからてっきり地縛霊かと」

さらりと同調した上に遠慮無くストレートに破壊力を上げてみせた唯。
隣でジャックが頷いているように見えるのは、きっと、多分、風のせいじゃないかと。

「それにしても本当に魅力無ぇよな、魅了で堕ちる奴がいたら見てみたいぜ」
「……こら、2人ともそうピンポイントに苛めてやるな。今回の首領は向こうのリリスだろうに」

優しくフォローしたように見せかけて確信犯(誤用)的な一撃を容赦無く叩き込んだ寅靖。
……ああ、だからあの大人リリス残したのか。そりゃ確かに並べば向こうの方が頭っぽい。

「とはいえ、子供が色仕掛けとは笑わせる。子供と戦う趣味も持ち合わせていないのだがな」
「……さ、さっきから餓鬼餓鬼って連呼して何様なのよあんた達はー!?」
「だって俺より背だってちっちゃいし、どう見てもお子様じゃんか!」
「どう見てもスカート着てる男のお子様にしか見えないあんたに言われたく無いわーっ!!」
「い、一番俺が言われたくない事言ったなーっ!!?」

何とか悪口を思いつくも反撃されてしまい、わなわなと怒りで肩を震わせるユエ。
……何か横にいるモルモが物凄く外見に似つかわしくないオーラ放ち始めてるんですが?

「じゃあ何て呼べばええんよリリスさん? 名前知らん以上餓鬼って呼ぶしか無いやんか」
「良くぞ聞いてくれたわ! あたしの名前はシシィよ、シシィ様を敬って諂いなさい!!」

フォロー体質の為せる技か名前を尋ねた彩晴だが、彼女の返答に思わず吹き出す。

「し、シシィって柄かお前……っ!! ヤバいツボに入った、マジ冗談抜きで腹痛ぇ……っ」
「うわー、シシィは無ぇよシシィはなぁ。お前が名乗っていい名前じゃ無ぇぜそいつは」
「ええと、確かに黒髪な所は同じですが……余りリリスの方には名乗って戴きたくないです」

同調する一真や理紗の言ってる事が本気で分からず、いちるは横の姉に助けを求めた。

「……ゴメンはた、何の事やらさっぱり」
「世界史浚い直しなさい。まあ言うなれば、あの名前は実在した美貌の皇后の愛称なのよ」
「実在した皇后の愛称……ああ、その人に限り無く失礼って事か、奴が名乗るのが」
「そうそう、あんな色気も金気も無いリリスじゃどう足掻いたって名前負けよ」
「というか名前自体要らないだろリリスなんかに。サンプル調査してるわけじゃねえんだしさ」

流石は中身勇者と称される彼女、説明の合間にしっかりと刃を仕込むのを忘れない。
双弟も双弟で彩晴からの話の流れを一刀両断して無かった事にする気満々。
……とりあえず全員、幼女リリス改めシシィのプライドを完膚無くぶっ壊しにかかった形に。
宍矧典杏が齎した運命予報による足止めのヒントを最大限に活用した訳だが結果は……

「……あんた達……あんた達絶対赦さない!! 全員あたしが喰らい尽くしてやる!!!」

――OK、この上無くクリティカル。



逃げるという選択肢を完全に手放したシシィに対し最初に動いたのは……勿論、ユエ。
ふつふつと湧き上がる怒りを力に変え、全力を超えた威力の雷の魔弾が炸裂した。
凶悪なまでの電撃がシシィを縛り上げるが、ユエはその後の手を出そうとしない。
……出すまでも無いのだ。
だってシシィの背後に、白くてもふもふした、もきゅーと鳴く可愛らしい相棒が迫ってるから。
背後から近付いてわざわざ回り込んでシシィを見上げるモルモ。
そして。
……モルモも全力でパチパチ火花をお見舞いした。
甲高い悲鳴を上げるシシィの麻痺がそう簡単に解けないだろうと見越した一同、残党掃討。
刃が、鉤爪が、マジックロッドが、鎚が、武術短棍が、風水盤が、魔道書が異形を消す。
策のためだけに残されていたあのリリスも集中攻撃を受けて敢え無く霧散した。

残るはシシィ、彼女ひとり。
雷撃の束縛が未だ解けぬまま、指一本動かせない彼女の周囲を囲む。

「……そうね、最後の消え方の希望位は聞いたほうが良いのかしら」

そう言う割に指先で既に炎が巻き起こってるのは何故だろうかこの女勇者。

「それとも……貴女、さっきの悪口の仕返しをし尽くしておく?」
「うーん……さっきの魔弾とモルモの火花でスッキリしちゃったからなぁ……」
「きゅきゅー……」
「そう、良かったわ。……私は今更ながら怒りが湧いてきたけれどね」

……本当はこのリリスの手により、私もいちも彩君もクラスメイトも死んでいたのだから。

掠れるような声で呟いたその一言が聞こえた者は一体何人いただろうか。


次の瞬間、炎の柱が骨すら灰すら残さずに、全ての始まりを焼き尽くして……消えた。



「……あーあ、一時はどうなる事かと思ったがこれで全部終わりだなー」
「そうですね、これで誰も死なずにパーティーも無事終わらせられますね!」
「パーティー……そうだ! なあ俺等も講堂入っていい? 生アルデ見せて生アルデ!!」
「……彩晴、終わって直ぐそれかよ」
「いいじゃない、家族参加もOKだし友達だって言えば誰も怪しまないわ。……あら?」

ポケットの中の携帯に着信メールが1件。
受信時刻を確認すると、丁度戦闘の始まる少し前。
小さく首を傾げて送信者とその内容を確認し……弟を呼んだ。

「……いち、一寸」
「……どうした、はた?」
「このメール……母さんからよ」
「母さん?」
「ええ。……見て頂戴」


――耳を澄まし、目を凝らして。
――この世に有り得ない事など無いのだという事を忘れないで。
――あなたの目の前のその終わりが全てとは限らない。


「……どういう事だ?」
「分からないわ。……でも、嫌な予感がする」





奇しくもその予感は、現実となる。

グラウンド全体が黒い海と化し、仲間達が次々と飲み込まれていく。


……最後に飲み込まれたはたるとユエ、モルモが其処に辿り着いた時。

古き時代の寺子屋を思わせる空間の床に幾つもの血溜まりが生まれていた。



――そう、今しがた生まれたばかりの、人の流す血に因る血溜まりが。
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