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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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……題目だけ見たら未来IFに見えて実は過去譚という話。


≪状況整理≫
ネタの大本は
双弟の見た白昼夢
それは忘却期以前、詠唱銀と禍津(ゴースト)と異能とが当然だった時代。
……今回はその時間軸より少し後、忘却期との狭間の時代を想定。
つまり人々が次第に異能を失い、禍津も銀の雨も過去の話になっていくその直前。

今回の主人公と何処ぞの双子に血の繋がりはあるのか全く不明。
『矧』自体血縁では無く意志で繋がってた集団なので思い切り逸れた血脈の可能性も。
先ず主人公自体人間じゃないですが。来訪者来訪者。
ここぞとばかりにアンオフィ絶好調で突っ走る予定の為閲覧は自己責任の上にて。


……此方の方に触発されたとかそんな事h……ゲフゴフリorz







--------

――辰砂(しんしゃ)、何処へ行くの辰砂!?

――真砂(まさご)……あたしはもうあんたの傍には居られない。



……畜生。
又あの日の夢を見た。
あたしを育ててくれた巫女から、真砂から逃げた日の。

あたしは辰砂。
名の由来は此の身の燃えるような赤い瞳と髪色。
……真砂が付けてくれた名だ。
あたしの事を他の蜘蛛童達と共に、真砂がずっとずっと、慈しんで育ててくれた。
だけど、あたしはその想いを裏切った。

――蜘蛛の成り損ない。

それが、あたしの成れの果てだ。
あたしは鋏角衆。
土蜘蛛にはなれなかった。
巫女達の信奉の向かう先にも勇敢な強者にもなれなかった。
……真砂を、裏切ったのだ。

だからあたしは真砂から逃げ出した。
許せなかった。
土蜘蛛になれなかったあたしを。
真砂の想いを裏切ったあたしを。
縋り付く巫女装束の真砂を振り切って……逃げ出したんだ。



此処は海の畔。
土蜘蛛氏族の館から逃げ出して一月余り、迷った挙句辿り着いた場所。
山の中だった館の周囲とは全く異なる光景。
目の前の海が放っているのか、独特の匂いの漂う場所。
ふらつく足を叱咤して岩場を覗き込むと、水の中に魚の姿があった。
携えた長槍――数少ない持ち物にして得物――を静かに狙い澄まして、貫く。
そうして狩った魚に齧りつく事で飢えを凌ぐ事、もう七日目か。
長い髪は縺れて絡まり、べったりと肌に貼り付いている。
海の水で砂や汚れを落とそうとしても余計ぐしゃぐしゃになるばかり。
……それももう、どうでも良くなっていた。
疲労困憊の身体を何とか引き摺り、海辺の樹に凭れこむ。

ああ、もうあたしは死ぬのかな。
真砂から逃げた罰なのかもしれないな。
巫女から受けた恩を仇で返した土蜘蛛の成り損ないには、当然の報いか。

そんな事を……ぼんやりと思った。


「……水、要る?」


知らない声がした。
首だけ声の方向に曲げると、紺の着物を着た子供がいた。
その身体つきには大き過ぎやしないかと思いたくなる大きな手桶を提げて。

「塩が過ぎると身体が壊れる。……水、要るだけ使って」

ゆるく結われた、茶がかかった黒の髪。万色を混ぜたような黒の瞳。
細っこい身体の何処からそんな力が出るのかと思う速さで寄ってあたしの傍に桶を置く。

「……柄杓、あるか? 身体動かねぇんだ、飲ませて貰えるとありがたい」

こくりと頷いた子供が柄杓で水を掬い、口元まで水を運んでくれた。
……水は、生きてきた中で一番冷たくて、甘かった。


子供の名は茅流(ちる)。
水を得た事で生き返ったあたしを湧水まで案内し、身体を洗うのを手伝ってくれた。
どうやら、この近くに塒(ねぐら)を作っている人間達のひとりらしい。

「……『矧』……?」
「そう、矧。此の世が如何に裂け綻びようとも繋ぎ止める為に、異能にて尽くす」
「異能……ああ、化け物達と戦り合う為の力か」
「自分達は禍津と呼んでいる。銀の雨が生み出す、ひととは相容れない者達」
「……あたしもヒトじゃないぞ。蜘蛛の成り損ないだ」
「……貴女も、ひと」
「違うっつってるだろ。あたしは鋏角衆、蜘蛛の成り損ないだってば」
「……禍津でないならば、すべて、ひと。だから貴女も、ひとのひとり」

……万色の黒が真っ直ぐにあたしを射抜く。目を逸らす事無く真っ直ぐに。

「……辰砂、行く当ては、ある?」
「あたしは裏切り者で逸れ者で余所者だ。当てなんかあるわきゃない」
「……なら、矧に来るといい。客人は歓迎される。居たいだけ居たらいい」
「……さっきも言ったが、あたしは鋏角衆で蜘蛛の成り損ないなんだぞ」
「関係無い。禍津ではなく、ひとならば、矧は必ず護る」

……居たいだけ居たら、か。
居辛くなったら暇乞いをすればいいか。
いや暇乞いも何もさっさと出て行ってしまえばいいのか。

確かにその時のあたしは、綺麗さっぱりはしたものの身体はボロボロだった。
この身体がまともに動くようになるまで無茶は出来そうに無い。
それまでの間、寝場所と食事を貰えるのならばこれ程良い話は無い……と。

「分かったよ。御邪魔になろうじゃないか。……歓迎されるかは分からんが」
「皆が喜ばない筈が無い。この塒の外を知るひとは、滅多に此処まで来られない。
寄ってたかって色々聞いてくるかもしれないから、それだけは覚悟していて」
「……それ一番最初に言おうぜ。一番面倒じゃねぇかそれ……」

ぼやきながら、茅流の背中についていく。


……それは巫女から逃げた鋏角衆が、人間の手を取った日、だった。
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