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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2002.01.07



「……この辺りだった気がしたけど」

公園の外から見えた、ずんぐりした何かを探して公園の中へ来たは良いものの、
滑り台の傍には何もいなかった。
階段で陰になる所にカートを寄せ、その上に開いたままの傘を被せて留金で固定。
これで余程の暴風雨にならない限り中身は何とかなるだろう。
上から見下ろせる場所は無いかと周囲を見渡せば、御誂え向きのジャングルジム。
“何とか普段は隠している身体能力とバランス感覚”であっという間に頂上へ。
だが其処から公園を見下ろしても……やっぱりずんぐりした何かは見つからなかった。

「……気のせいか」

溜息ひとつ。雨に濡れた服が重く冷たい。
それなりに寒さには強い方だが、この地方の冬にこの状態は風邪引きコース一直線。
……よく考えたら俺昨日まで熱出して寝込んでたんだ、確実に悪化する。
もうひとつ溜息を吐いて降りようとした時、濡れたパイプの上でずるり、と右足が動いた。
滑った、と思った時にはもう遅く俺の身体は宙を舞い――


――頭から真っ逆さまに地面にダイブ、した筈、だった。


いつまでも地に叩き付けられる衝撃が来ないと恐る恐る目を開けると、視界が微妙な高さ。
そして、誰かに抱き留められているような感触。
するとその誰かはそっと俺を降ろした後、気遣わしげに首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。

……いや、誰かじゃない。
何かが。

一見、鳥っぽくも見えた。
だけど鳥が二足歩行して真っ赤な鉤爪の手と足を持ってる筈が無い。
くちばしには到底見えない尖った何かの付いた真っ赤な仮面みたいな顔の筈が無い。
人間が頭からシーツを引っ被ったような胴体をしている筈が無い。

……何なんだ、この、何か!?

頭の中が真っ白になりながら後退る。ずんぐりした造形のその何かは首を傾げたまま。
逃げるか、ぶん殴るか、次の手が思いつかないまま更に一歩後退る。
……どう、すれば、いいんだ、俺……?



「くなー、くなぎー? 何処行ったのー、くなー?」


張り詰めた空気を破ったのは、幾分間延びした子供の声。
目の前の何かが声に反応し、その方向へぱたぱたと真っ赤な鉤の手を振る。
現れたのは俺と同じ位の、黄色いレインコートの子供。

「もー、気づかないうちに何処かに行っちゃダメだよー。くな一人だと迷っちゃうよ?」

何かにぱたぱたと駆け寄った子供は、恐れも躊躇いも無く何かを撫でる。
撫でられた何かの方も、どこか嬉しそうな雰囲気。
……何、この目の前の不可思議な光景。

「あれ? もしかしていちるくん?」



「やっぱりそうだいちるくんだー! ねえ服びしょ濡れだけどどうしたの?」

……?

「ぼくだよー、同じクラスのなるせりょうだよ」

……あ。
そこまで言われて初めて、目の前の子供がクラスメイトだと俺は気付いた。
俺の前の席で名前順も俺のすぐ前の、成瀬怜。
ほわほわふんわり、という形容がここまで似合う子も滅多にいない、そんな子。

「……上から落ちた。だけど、助けてくれた。……その、子が」
「そーなの!? くなぎすごい、がんばったねくなぎー!」

……疑わないのかよ。つか俺お前の意図した答え返してねーぞ。

「くなぎ……って言うのか、その子」
「うん、くなぎー。いっしょに住んでるともだちなんだよ」

……住んでる?

「でもすごいねー。くなぎもすごいけど、いちるくんも!」
「……どうして?」
「だってくなぎ、ほかの人には見えないんだよ? でもいちるくんは見えてるんだもん」

……何、だって!?





「……余程父さんに正座させられてお説教されたいわけね」
「誰が説教なんか」
「病み上がりのくせにびしょ濡れで咳き込んで帰ってくるあたり周到じゃない」
「もう着替えた、咳も治まった、後は誰かが言いつけなきゃバレない」
「人は口を塞げても体温計は正直よ?」
「……げ」

鼻先に突きつけられた体温計は、明らかに平熱を超えた値を示している。……マズい。
唇に笑みを浮かべて冷酷な事実を吐いたのは双姉のはたる。
似ていないようで似ている、似ているようで似てない、そんな同日生まれの姉。

「で、その鳥みたいな不思議な生き物とクラスメイトが友達だったの?」
「……怜はそう言ってた」
「そしてその生き物はそんな姿形をしていたと」
「大まかにはな」

炬燵の上には散乱した色鉛筆と白い紙。紙の上にはさっきの何かの絵。
怜と別れてカート引っ張って家に戻った俺は母さんの追及を振り切って着替えた後、
リビングの炬燵に滑り込んではたるの前で絵を描いていた。
ぶり返した風邪のせいかぼんやりする頭を無理に働かせて描いてみたとはいえ、
元々絵を描くのは苦手じゃないからそこそこ再現出来たと思う。
仮面のような赤い顔、赤い手足、シーツ引っ被ったような白っぽい胴体。

「……変な感じはしなかった」
「ゴーストみたいに人を襲うつもりなら友達にならずに最初から襲えばいいものね」
「そうなんだけど……」

「おー、シャーマンズゴースト。やっぱ絵上手いないちる、って俺お前達に話してたっけ」

後ろから伸びてきた手に掻っ攫われた紙。
振り向いた先には、黒味を帯びた焦げ茶の髪にスーツ姿の……父さん。

「んー、やっぱ話した記憶無ぇんだよな。……いちる、この子何処で見かけた?」


……説教回避は困難かもしれない。
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