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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――そして、変わらぬ今日が幕を開ける。只人の笑顔が、夢が、願いが導いて。






熱気は未だ去らず。
……しかし、もう禍津の気配は微塵も無い。

「……ちゃんと、戻って来れたんだな」

もう揺れる事の無いホームに立ち、動かない屋根を見上げて残菊が呟いた。

静寂のホームを一陣の風が吹き抜けていく。
熱帯夜に吹く風故に余り涼しさを誘うものではないが、今この生を実感するには充分で。

「んじゃ、とりあえず此処から出ん? 下手に駅舎の人と鉢合わせしとう無いんやけど」
「ですねえ。改札通るよりはあの踏切から外に出ちゃいましょうか」

影郎の指差す先、確かにそう遠くない所に踏切が。

「……いち、携帯鳴ってるわよ」
「あ、本当だ……」

通話ボタンを押した傍から耳に流れ込んでくる声。

『掛葉木先輩、掛葉木先輩……っ! 大丈夫ですか皆様怪我してないですか!?』
「……典杏……? まさかこの時間までずっと起きてたのか……?」
『寝てられる訳が無いじゃないですか!! それより、それより何より皆様は!?』
「……大丈夫だよ。誰も欠けてない。皆無事だから。安心してもう寝なよ、典杏」
『本当、ですか? 嘘じゃないですよね?』
「そんなに疑うなら隣に容赦無く現実告げてくれる陽主がいるから変わろうか?」
『……其処までは結構です』

途端に声のトーンが落ちた理由が分からずに首を傾げる双弟と怪訝そうな顔の双姉。

『ええと、それだけじゃ無くてですね……今まだ駅の周辺にいらっしゃいますか?』
「まだホームの上。確かこの近くに24時間営業のゲーセンがあった気が……」
『いえ、その必要は。ホームから屋上に青文字の看板があるビルが見えませんか?』
「……ああ、うん、何とか見えた。ビジネスホテルみたいだけど」
『はい、実は其処に銀誓館名義で部屋予約を。チェックイン時間も無理を通しました』

5人部屋と3人部屋ですし、レイトアウトも御願いしたので昼前迄大丈夫です、と。

『流石にゲーセンでは殆ど身体を休める事も出来ません。どうぞお使い下さい』
「……そっか。助かる。……ありがとう、典杏。予報も忠告も、何もかも全て」
『いいえ、お気遣い無く。自分にはこれしか、予報とサポートしか出来ませんから』
「その予報が無ければ能力者とて何も出来ないんだよ……卑下はもう要らない」


静かに密やかに駅から脱出した面々は二手に分かれる事に。
ホテルから多少離れているがコンビニもあるという情報から買い出しに行く側と、
流石に疲れたり余り歩き回って見咎められるよりはと先にホテル前で待機する側と。

「……流茶野を放置したら何を買ってくるか想像出来るからな」
「えー、何が楽しくて渕埼寅靖とコンビニ行かなきゃいけないんですかー」
「まあ確かに成人の方がいた方が、有事の際の誤魔化しが聞く事は確かよね……」

……夏休みの真夜中、補導狙いの警官にでもかち合ったら確かに色々面倒だろう。

「私達が戻ってくるまでいちるちゃんは静かにしてる事! もし破りでもしたら……」
「……分かってます、分かってますからもう頬引っ張るの止めて下さい」
「大丈夫、俺がちゃんと見てるから。それに、身長的に頭押さえられるのは俺位だし」

押さえられる、と口では言ったが軽く頭を撫でるだけに留める残菊。
漸く頬引っ張りの刑から解放され、トートから布の塊とペットボトルの水を取り出すいちる。
ボトルの封を切った彼は謎の布に水を半分位染み込ませ、一度軽く絞った後広げだす。

「そーいえば、何ソレ?」
「保水・冷却機能付きの繊維で作った夏用マフラーだって。……こんな所で役立つとは」
「……誰が寄越したん」
「物凄く意外だと思うだろうけど蓮葵伯父さん」
「……何故親父がそんなモンを」

俺に聞くな、とチョーカーを外して手首に付け直した後に薄藍色のマフラーを首に巻く。
他の傷は全て回復アビでどうにかなったが、あの痣だけは消せなかった為隠すしかない。

「ほーかい。……んじゃ俺も買い出しついてってくるわ、端っこ引っ掛けんなや?」

「……あら、残るんじゃなかったの?」
「最初はその心算でおったんやけどな。……ま、でも別に俺やのうても良さそうやし」

一瞬だけ、後ろを見遣る。

――狼狽した表情でマフラーの絡む首元を押さえ振り返る従兄と。
――きっと思い切り引っ張ったのだろう、マフラーの端を握りしめる銀髪の少女と。

「……泣かすのは俺の役目や無さそうやし、ね」

誰にも聞こえないように。



ベッドの上でとりとめない話に興じる者。

糸が切れたかのように眠りに落ちた者。

横にはなってみたものの眠れそうにない者。

端から眠る気は無いと開き直った者。

飛び交う声を聞くうちに寝入り始めた者。



過ぎ往く暑い熱帯夜。

真夏の容赦を知らない朝日が昇る迄……あと、少し。





もう少しして街の時が動き出したら、鎌倉へ戻ろう。

――銀誓館学園への凱旋を、誰一人欠ける事無く、皆で。
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