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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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……これは真夏の真昼に見た、夢。

眠っていたのは、ほんの数分。
だけれど、とても長い夢。
 


……僕に流れる血が見せたのかもしれない、遠い昔の『矧』の夢。








--------
その日は丁度、数字を見ただけでぐったり出来る最高気温が全国各地で観測された日。

開け放したベランダから風が吹き込むものの、茹だる暑さには殆ど効果無く。
冷凍庫から作り置き蜂蜜レモンアイスを一人分だけマグカップに移し、
もう既に溶け始めたアイスをスプーンで口にしながら早足で部屋に戻った。

ベランダの傍の方が涼しいだろうとカーテンの近くに座り込んだは良いものの、
入道雲が浮かぶ空を見上げたのが拙かった。

……真夏の直射日光をまともに直視し、視界が渦巻き暗転する――



-.-.-.-.-.
――気が付いた時には、僕は岩場に近い浜辺に転がっていた。

殆ど波打ち際だったにも拘らず、服は乾いたままで砂も付いていない。
海から来る風は涼しいけれど、潮風特有の塩気を全く感じず髪の毛にも変化は無い。
……多分夢なんだろうな、とその時は何故か納得していた。
意識を失う前の事をぼんやり覚えていたから。
真夏の自室から見た事の無い海辺まで瞬間移動だなんて能力者でも不可能だから。

ぼんやりする頭を振って立ち上がった丁度その時、一組の人影が近付いてきた。
片方は二十歳位の男性、もう一人は僕より少し年上に見える女性。
……着物、だった。いやむしろ、歴史の教科書に載っていた昔の衣服だった。
現実に頭が追い付かない僕の横を何の不審も無く通り過ぎ、岩場に登る二人。

……やっぱり夢、みたいだ。どうやら僕はこの世界に本来居ない者、か。

これ幸いと二人の後に続き、近くの岩場に隠れた。……気分的に。


「……噂が本当ならば、“彼等”が現れるのはこの岩場だ」
暫くして、男性が口を開いた。……良かった、声は僕にも聞こえた。
「もう俺達には彼等に縋るしか方法が無い。……どうしてあんな事に」
あの女が現れてから全てが悪くなった、と男性は言葉を吐き捨てる。
「荘の長も他の男衆も皆あの女の言いなりだ、やれ良い着物だの食い物だの何だのと!
何よりあの女に呼ばれて館に入った若い男が誰も戻らない事を誰も疑いやしない……
俺は視たんだ。戻らない親友があの女の従える蛇に喰らわれた様を、『あいつの目』で!!」

一寸、待って。
あの人の親友さんは戻って来てない。他の若い男の人もそう。
だけど、岩場にいるあの人は、その惨状を、『その親友さんの目で、視た』?

……なら、『断末魔の瞳』だ。
ゴースト事件の被害者の文字通り最期を視る霊媒士の本業能力。
だとしたら、あの男の人は霊媒士の力を持つ能力者……

「それだけじゃない。あの女、それに飽き足らずチナ(千那)……お前まで狙いやがった。
何が『妾の部屋で冬でも蛍を連れる様を見せてくりゃれ』だ!喰う算段に決まってる!!」

冬でも蛍を連れ歩く……連想出来るのは『白燐光』。白燐蟲使いの本業能力。
それじゃ、この女の人も能力者?


……ふたりの能力者、多分リリスなんだろう『あの女』、そしてかなり昔の衣服……


何かを思い出しそうでこめかみを押さえた僕の後ろで、突如大きな波音が立つ。
驚いて振り返った時、其処には人影がひとつ増えていた。

――十歳位の、子供が。

「……黄昏岩辺に継ぎ接ぎの巾(きれ)、確かに。『矧』の客人(まろうど)、案内は自分が」


-.-.-.-.-.
――不意に、場所が変わった。
裂け目から光が降り注ぐ洞窟の中、大きな広間。
車座に座る数十人の人影の中に、先程のふたりもいた。あの子供も。
そして見た目が若いながら威厳を漂わせる、ひとりの女性も。

「……貴方達の話は全て聞かせて戴いた。間違い無い、その女は妖しの蛇姫」
そしてあたし達の数多い宿敵だ、と付け加えた。
「縄張りの傍で巣食う馬鹿はいないと踏んだが不覚だったか……本当にすまない」
例の惨状を語ったと思しきあのふたりに深々と頭を下げる女性。
「頭領のせいではありません。私達がもっと早くに貴女に逢おうと思えばこんな事には」
「いや、これは全てがあたし達の不覚だよ。……ミサギ(未佐祇)、お前は客人を護れ」
女性の鋭い命に、承知、と応えたのはあの子供。
「サザ(佐々)は『獅子』と『鷹』から手練れを呼んでくれ。ルヒ(流日)は荘の周辺を当たれ」
「『鷹』は呼ぶ必要が無いぜ、元々明日にはアヤ(亜野)が来る。『獅子』は任せな頭領」
「承知致しました頭領。その余力で集まる異形も狩り伏せておきましょう」
黒く日焼けした青年と長い髪を結い上げた少女が各々応える。
「亜野が来るか……なら組む奴は決まったな。チル(茅流)、ハル(杷留)、3人で姫を潰せ」
「承知」
「致しました」
流日と呼ばれた少女の後ろから、殆ど同じ声音の応える声がふたつ。
……双子。髪の結い方も、衣服の型も――色だけは紺と蘇芳と――全く同じ。
「残りはあたしと共に動け。完膚無く殲滅だ。人の地に“人を脅かす妖”は要らぬ」
承知、と車座のあちこちから声が飛ぶ中、女性は立ち上がる。

「忘れるな。あたし達は『矧』だ。……此の世が如何に裂け綻びようと――」


……刹那、視界が渦巻く。


「――繋ぎ止めろ、其れが『矧』だ」


-.-.-.-.-.
……見慣れた自室の天井。
夢から、覚めたみたいだ。

不思議な事に、マグカップの中のアイスはまだ溶け切ってはいなかった。
多分、気を失ってからそれ程の時間は経っていなかったんだろう。ほんの、数分。



――とても、長い夢だったのに。

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