力は欲しい。それでも、この手のままで。

……ああ、まだ目が赤い。
昨日、一人で隠れて泣いてた、から。

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一昨日は彩晴の実家に寄せて戴いた。
久し振りに逢った伯父さん達、他の従姉妹や従弟。
真実を知る伯父伯母と４人で話をして、そして眠った。

そして昨日、其処から電車で１時間の今治へ。

……僕は最後まで無事だった。
だけど、逆侵攻を誘う為の天輪宗との戦いで彩晴が倒れた。
『右腕死んだわ。悪ぃ、鎚持てねぇ』
最後の最後で１人にしちまったと、それでも笑ってみせる従弟。

その胸の内は、如何に。

だから１人で天守閣へ向かった。
彩晴だけじゃない、傷を負って戦えない皆の想いを背負って。
そうして、無事に戻った。

集合場所の山中ではなく、展望台へ。
……止まらない涙を、見せたくなかったんだ。



力があれば、守り切る事が出来たんだろうか。
そんな想いがぐるぐる、ぐるぐると頭の中を支配する。
風に飛ばされないよう押さえつける帽子の下で、ぱたぱたと零れる雫。

どれだけそうしていたか分からない。

……悩んで悩んで、それでも結局、同じ結論に戻る。


幾ら今より強い力を得たとしても、
幾ら得た力で今以上の戦果を築き上げられたとしても、
幾ら力で得た力が全てを決しようとも……

やっぱり、今の『手』を捨てられそうには無い。
この水の力が、一番僕自身には合ってるんだって、思うから。
傍目地味には見えるけど。

走る事だけしか出来ないんじゃない。
誰にも負けない速さで走り続けられるって事だと、思うから。
それは充分、僕の武器なんだ。