◆真夏夜に舞えGhost Dance!! -13-

――2009.08.14　　　NIIGATA

「うーわー何これ超最悪ー……ズタボロ通り越して原形どれって感じ」
「原型も何も、全部終わった後ってことかしら」

足の踏み場も無く散らばる無数の石片。
踏み躙られ泥に塗れた紙片の幾つかには、何がしかの呪術を思わせる文字。
嘗て台座だったと予想出来なくも無い岩も無残に打ち砕かれている。

「何と言うかさー、コレどう見てもヤバイモンが下に居ましたって感じなんだけどさ」
「……自分からぶち破ったわけじゃない事は確かだけれど」
「だよなー、入口の障害全部内側に向けてぶっ壊されてたもんな」

自己封印突破で何がしかが外へ出たなら全部外側方向へ被害が出る筈。
しかし、入口周辺の柵も鉄条網も内側方向へ壊されていた。

「……でさ、余り長時間ココにいるのもヤバくねえ？」
「……現場だからね」

何の現場だ、何の。


『――聞け皆！　学院の近くで殺人事件だってよ！？』


……まさかとは思うが、この二人が居る場所は……。



報道内容はこうだ。
犬の散歩ルートにしている近所の住人が、その日の朝もその道を通った。
……そして異変に気付いた。
相当昔から鉄条網と柵で厳重に封じられていた洞窟の入口が、
何がしかの力によってか滅茶苦茶に破壊されていた。
周辺でヤンキーでも出たのかと住人は帰るとすぐに警察へ通報、
そして到着した警察御一同は中へ踏み込んだ。

確かにヤンキーと呼べそうな不良っぽそうな面々は中にいた。

……全員人体パーツと化してはいたが。



「……何も知らずにぶっ壊したのかなー、奴等。だとしたら自業自得なんだけどさ」
「自業自得とは言え……一寸遣る瀬無いわね」
「まーねー。そういえばさ、奴等の事で妙な点があるとかネットでは書かれてた」
「例えば？」
「まー、大体は隣の県のヤンキー連中だったみたいだけど、一人だけ違うんだと」
「……そうなの？」
「らしいぜ？　身元調べたらその人間だけ九州出身だったって」
「越境参入してたのかしら」
「んにゃ、そーでもないらしい。ヤンキーの関係者誰もそいつ知らないって」
「知らない人間が同じ場所で死んでいたと？」
「ネットの書き込み信じればな。その、欠損具合？みたいなのも一番酷かったと」
「……一番木端微塵だった、というわけ？」
「……そーなるみたいよ」

奇妙な話だ。
その他の誰も知らない人間が、同じ場所で死んでいた。
人体パーツ化していたのは全員一緒だが、その人間だけパーツの破損が酷かった。
まるで、狙われでもしたかのような。

「ゴーストの事といい、これも偶然なのかしら。……あら、何だろうこれ」
「ん、どーしたはーちゃん？」
「……ヌンチャク、かしら。どうしてこんな所に」
「持ってかれ忘れた遺留品じゃね？」
「そうかしら。……気になるから持って帰りましょ」
「ちょ、それはマズいんじゃ！？」
「バレなきゃどうだっていいわよ、きっと」

……御嬢様の外見で中身勇者と呼ばれる逸話が又一つ。
内心何度目かの頭を抱えた一真の横で、はたるは眉一つ動かさず鞄へ仕舞い込んだ。
それも自分のではなく、何故か隣の一真の鞄に。

（「……ただのヌンチャクに見えないのよね。装飾の幾つかに違和感がある」）

頭の中では色々考えていたようだが表情には一切上らせず。


「さてと、そろそろ学院へ戻りましょ。準備も佳境だしクラスメイトに呼ばれてた」
「あー、俺も何か用事があるとか言われてたなー……面倒だな」
「面倒も何も片付けなきゃ終わらないわよ、この夏これ一色なんだから」
「まーねー。……もう少し頑張りますか」