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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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「うーわスッゲー! マジで360度全部海やんかココ!」
「……そりゃ海上パーキングエリアなんだから周囲は海に決まってるだろ。
それに彩晴、お前瀬戸大橋で散々海見てるんじゃないのかよ」
「あっちとココじゃ風景とか全然違うっつの! うわスゲ富士山見えるぜ富士山!!」

……現在地、東京湾のど真ん中。
この位置だと一体何県に当たるのかと調べてみたら、千葉県らしい。





--------

……新潟駅を出発し東京駅へ向かう新幹線内で初めて発覚した事だが、
迎家へ直ぐに向かうか何処かへ寄るか等々、今日の事は一切決めていなかった。
さてどうしようかと2人で話した結果、互いに気になっていた場所へ寄り道する事に。
但し、其処へ向かうには東京駅から更に川崎駅へと移動が必要になったが。
その場所を通過して車窓から見るだけなら幾つも高速バスの路線があるのだが、
立ち寄る為には川崎発着の高速バスに乗らなければならないのだ、と。

大師詣での帰りなのかお土産の自己主張が激しいバスの車内、
1月の間だけ臨時で大師の近くにも置かれるらしい停留所を過ぎてからは尚更で。
其処からは工業団地・臨海工業地帯を抜け、海底のトンネルを通り……

そして現在、白い客船を思わせる海上パーキングの5階で東京湾を眺める俺と彩晴。

「なー、あそこにヨットの帆みたいなの見えるやん」
「えーと……うん、確かに」
「あれ海底トンネルの換気塔なんやてさ。トンネル抜けてる間に標識あったやんか」
「……そういえば。風の塔の真下です、みたいなのが確か」
「そーそー。んで、海底潜る前にピラミッド見たいなのがあったんは覚えとる?」
「川崎の入口の所の、だっけ? 全部は見えなかったけど」
「あれもトンネルの換気施設なんやけどさ、今度スパッと天辺切っちまうんだと」
「……何で?」
「羽田の滑走路新しく増やしとるやん、今。そしたら高さ制限引っ掛かるからだとさ」
「何それ……酷いとばっちりだな」
「だから完璧なピラミッドのままで見れるの今月中旬位までだってさー」

……何処から聞いてきたんだ、そんなコアな情報。

海上“パーキング”エリアとだけ聞いていたから休憩所程度しか無いのかと思っていたが、
レストランやお土産屋(何故か東京と横浜の物まで売っていたが)、海産物の店、
パン屋やゲーセンにコンビニ、コーヒースタンドやマッサージにアートまで揃っていた。
生半可なサービスエリア以上の設備だから半日位は優に時間を潰せるような気がする。
打ち寄せる波や吹き抜ける風、まるで此処は東京湾を進む船の中。
……船、か。

「……虹の橋の先の船……鳥にも見えたけど、一体、何だったんだろう」
「ん、根の国の船で鳥? それ天鳥船(アマノトリフネ)と違うん?」

……知らぬ間に声に出ていたらしい。

「……あまの、とりふね?」
「ん、正確にはトリノイワクスブネノカミ(鳥之石楠船神)つー名前のれっきとした神様やけど。
神の乗る船とか航海の神とか言われとる。又は鳥て事で死者の魂を運ぶ船、ともな。
あの時代、鳥は魂を運ぶ存在や言われてた。倭建命も魂は白鳥になったて知らん?」
「……其処までは一寸。弟橘姫の入水辺りは何とか分かるけど」
「その入水云々の舞台はまさにココから南ですよと。対岸の地名はその伝説山盛りやよ」
「……それも書物蔵に籠ってた頃の知識か?」
「半分はな。で、話戻すけど虹の橋て根の国の事やろ? もう少し合うように言えば天国と」
「黄泉津と同義だろ、分かるから。亡くなった親友がいたんだ……もう船に乗ったらしいけど」

「ふーん。んじゃもうこっち側に来とるって事か」

「!? ……さい、せ。何で、それが……っ」

「死して根の国渡った人等が更に旅立つ先なんてこの世の他に一体何処があるよ」

静かな、口調。

「マガツ、いやゴーストをこの世から根の国へ還すんは俺のゾンハンとしてのサガやけどさ。
でも俺の場合は世界結界の崩壊繋ぎ止めるっつー矧のサガ以上の願いを込めとるんよ。
……節理正して根の国に還せば、姿は変われどいつか又こっち側に戻る事が出来る。
輪廻転生って程ガチな思想じゃ無ぇけど、その輪っかにちゃんと戻すんが俺等の役目やと。

――ってバスの時間もう来ちまうやん、ヤバい急いで停留所戻らんと乗り過ごす!」
「……え、あ、嘘こんな時間!? 確か5分前には居た方が良いって運転手さんが確か」
「人によっちゃ早かろうと無人やったらそのまま通過してまうとか酷ぇよこの隔離地帯で!」

エレベーターが傍だったのが幸い、急いで乗り込んだ筈の彩晴が直後に開ボタンを押す。

「大丈夫ですよー、待ってますから足元気をつけてゆっくりどーぞ」

振り向くと大きなベビーカーを押した女性が早足で近付いてくるのが見えた。

「わわわ、ごめんなさいありがとうございます! バスの時間の事忘れてて慌てちゃって」
「いえいえ気になさらずー。双子さんなんですか? 桃色と水色なら女の子と男の子かな」

イントネーションが微妙に西側に傾いた標準語で母親と思しき女性と笑顔で会話する彩晴。
昔から思う事だが人見知りと対極を走る従弟が時々羨ましいと思う瞬間だ。

「そうなんですよー、水色の服がリョウくんでピンク色はマオちゃんです」

……今、何て?

「あ、実は今旦那さんと勝負してるのです。私達の苗字ちゃんと読める人がいるか否かって」

今まで一発で読める人いなかったから絶対いないって言うんですけど、と女性が鞄を漁る。
そしてすぐに取り出した免許証には『久納岐 凛』とあった。

「えーとなになに……くのうき、じゃないですよね? だってこれじゃそのまま読みやしなぁ」

「……くな、ぎ……?」

「わわ、すごいです読める人ちゃんといたー! やった、これで旦那さんに勝てるっ!」
「え、いち何ですぐ分かったん?!」
「……ゴメンなさい。変な事聞きますけど、双子さんの漢字、これじゃ無い、ですよね?」

手の震えを必死に隠し、携帯のメモ帳画面に漢字を打ち込んで女性に見せる。

『怜』、と、『真史』、と。

「うそー! すごいですこの字で合ってますよ! まるで魔法使いさんですねお兄さん!」
「ちょ、待ていち何で分かるん!? どっか答えでも載ってたんか!??」



――ちゃんと見つけてねって言いたいけど、こればかりは運命の神様の匙加減次第かなぁ。





……なあ、神様。少し、いや無茶苦茶大盤振る舞いが過ぎないか……?


でも、ありがとう。ちゃんと見つけたよ。
怜、くなぎ、そして櫻井先生。



……どうか、どうか今度は皆で、幸せな毎日ばかりが、続きますように。

銀の雨の齎す哀しい、哀しい想いを、ほんのひとひらでも、抱く事がありませんように……。
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