紫陽花色の空の下。

１４年間生きてきて初の経験。



……自分の（ひいては姉の）誕生日、その日になっても忘れてた。

此処からは見えない海の果て。

……中間テストは頭から覚悟してたけどね。
ああまたこの時期が来たんだって。
実技教科で点の上積みが出来る期末と違って中間は主要勝負……
毎回毎回社会が楽しい事になるのだってもう慣れた。
……分かってる、慣れちゃダメなのは良く分かってるんだけど。

それよりも、さ。


北海道だと思ってたんだ、去年と同じ。
故郷から北には滅多に行かなかったから、北海道楽しみだったんだ。

……人狼と吸血鬼の故郷の、報告書の限り不穏な、欧州、かぁ……

正門で揚羽先輩まで不穏な事喋ってたから、不安度倍増。
……うん、銀誓館学園は学園行事と同時進行で凄い事するの茶飯事だもんね。
荒唐無稽な筈なのに現実味しか感じないのは、どうしてだろう。



週明けに出逢える雪女さん達を待ちつつ、一応パスポート申請の準備かな。





……あれ、僕の住民票って向こうから鎌倉に移ってたっけ？

自分で自分の夢が覗けるなら。

……変な夢ばかり見るせいか、ここ最近落ち着かない。
いや。
正確には、変な夢を見ているような気がする、か。


憶えていないから。
どんな夢だったのか、全く。
ただ訳の分からない不快感と、不安だけが残って。
そして頭の中に響く、転がる何かの硬い音。

多分、それはサイコロの音。
……それだけは、何故か確信出来る。

そして朝が来る毎、言い表せない感情を抑えようと無意識にチョーカーに触れる。
“賽は投げられた”と銘が刻まれた、姉から貰った無二の護りに。


……迷って、いるのかな。
でも、僕は何に迷っているんだろう。

既に投げられた賽に？
今まさに転がろうとしている賽に？
それとも、未だ動く兆しすら見えない賽に？


……もしティンカーベルの粉か、適合者の能力かで今僕の夢を覗いたとしたら、
そこに広がるのは一体どんな風景だろう。

何処までも砂浜が広がる夏の海辺なのか、
凍てつく風と飛沫が途絶える事の無い真冬の岸壁なのか、
音も無く雪が降り続き真白に染まった故郷なのか、
明るい光と音楽とに包まれた伯父さんの店の中なのか、
満天の星空と二つ並んだ望遠鏡とが出迎える真夜中の屋上なのか、
世界の真実を全ては知らず毎日駆け回っていた小学校なのか、
毎日が騒動と喧騒と笑顔とで溢れている鎌倉のログハウスなのか……

それとも。
賽の転がる音だけが支配する、一筋の光さえ差し込まぬ闇の中なのか。



答えの出ない問いは堂々巡り、何も分からぬまま睡魔に瞼を閉じられて。

そうして明日も、きっと……

届いた初夏の風物詩。

学園から戻ると僕宛に段ボール箱が届いていた。

差出人には父親の名。どうやら実家かららしい。
クール便シールやら生ものシールやら貼っ付けてあったので即開封。



……とりあえず父さん（を始め実家の皆）、詰め込み過ぎにも程があると思う。
後ろから覗き込んだ伯父さんが大笑いする位ってどうなのさ。
これ、僕ひとり宛で詰め込んだんだとしたら嫌がらせの域だと思うよ、ホントに。

……という訳で伯父さん家族には勿論（半分位）御裾分け。
それでも沢山あるから彩晴に一部押し付けるとして……あとはせっせと消費かなぁ。


それにしても、そうか……日々慌しくて忘れてたけどそんな季節なんだね。
故郷では、笹の葉包みの山は端午の節句の風物詩。
あの時期は実家に沢山子供が集まるから、山盛りだろうが取り合いで。



笹の香りと蓬の香り。
三角の粽と草紐で結わえた笹団子。
……箱からなくなる頃には、夏の便りも届くかな？

慣れない、新しい通学路。

……他のマンモス校でも此処までやる学校はきっと無い。

銀誓館では新年度のクラス替えでキャンパスまで変わってしまう。
同じキャンパスに決まらない限り、毎年通学路が変わっていく。
鹿苑寺に通った昨年度の前、小学校の頃は星宮だったしなぁ、確か。

で、僕はと言えば、又キャンパスが変わった。
またＢ組になったけど、『一縷樹』と書いて『いちるぎ』と読む。

……一縷樹と聞いて笑うべきなのかどうなのか迷う自分がいたのだけど。
うん、まあ……僕の（逆さ）名前の由来がほら、さ……

陰と陽、闇と光、結界の果て。

……確か最初は、長野。
そして、今度は栃木。


頭の中を緋色で塗り潰してくる現実に押し潰されそうになりながらも、
今は出来る事だけを出来る限りと積み重ねながら、
……ふと手を止める度に、泣きたくなるのを、必死で押さえつけて。

その度に、机の上の写真立てを半ば睨みつけるように、耐え続ける。

――写っているのは、小学校時代の同級生達。
実家に戻った正月、たった１日だけだった帰郷の最後に撮った集合写真。



僕と姉以外は……何も知らない、知るべくもない一般人の大事な友達……

儚刃の翔、六花の舞。

夜の闇に浮かぶ黄金の真円。
光振り撒いて、天に座す。

――その光は、憎悪凝る廃墟にも等しく。

灯火一つ、迷うこの手に。

空が遠い。

……屋上の片隅、寒風吹き抜ける中に一人。
教室の授業は偽身符に任せ（……とても不本意だけど）、一人空を眺める。


乾き切った空気は容赦無く喉を渇かしていくけれど、
それでも屋上に一人残って。

迷う事は、真実に近付く手段だと、分かっているけど。


立て続けの出来事に、迷いを通り越して自己嫌悪の域まで達した気がする。



……時間をください。
その暖かい手に、笑顔で応えるには、まだ遠過ぎて。

……ルミナリエを、見上げて。

今は後期中間テストの真っ只中。
このテストさえ終われば、クリスマスと冬休みとお正月が待っている。
何事も無く、何事も無く。

……そう、普通のクラスメイトは、一般人は何事も無く。


でも、能力者の僕達は一寸違った。
テスト直前に、生死の境を渡るような戦いを神戸で繰り広げた。
来訪者同士の因縁の争いを止めるべく介入する形で。
沢山の仲間が傷を負い、幾人かが命を落とした。


それでも表面上は、何事も無くテスト日程が過ぎていく。
一般人はどう捉えて、どう思っているだろうか。
教室内の、包帯や絆創膏がやけに目立つクラスメイトの存在を。

まあ、かく言う僕も腕に包帯、顔に絆創膏なんて格好なのだけど。

……制服に隠れた胸や脇腹にまで、幾重にも幾重にも包帯を巻いて。

余りにも久し振りかも。

凄い勢いで　日付が　飛んでる　。

……うん、下書き箱（＝非公開ログ）に山程ある割に公開処理してなかっただけというオチ。
手直しとか抜けとかが一寸酷いから修正終わった部分から順次綴じ込み予定ー。


今のうちにダイジェストだけ置いてくと、（■：戦闘系/○：イベント系/△：ＳＴ系）

■夏休み終盤に竜宮城決戦へ。なので予定激変、実家に戻れずorz
■……変態地縛霊退治で初の女装。夏の終わりの羽目外し？

○前期期末返却。中間より点数も順位も上がったー！　……社会？何それ？（遠い目）
△美術９９点取った事でコミマスへバイトチェンジ。ギンギンパワーＺ強い、けどＣＰ重い。
○運動会、走り回ってくたくたに。２Ｂ桃連合は７位。
△土蜘蛛と鋏角衆が集中講義終了・編入。逆鱗＆飛斬帽欲しさに鋏角衆へバイトチェンジ。

■竜宮城決戦で逃した幽霊船を迎撃。皆無事に戻れてよかった……
■野菜跋扈する悪夢依頼へ。……タガ外した自覚はある、んだけどっ……（地面にのの字）


……うわぁダイジェストになってないや。