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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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……昔々のこと、ですか。
オレが今までに見てきたこと、聞いたこと……。
ええと、ちょっとぼんやりな所もあるですが、それなら最初の最初からでもいいですか?

――はい、オレの覚えている、一番昔の所から。




--------

あのころの都の少し奥まった所に、にぎほいなり(和穂稲荷)様のお宮様がありました。
四季折々の豊かな実りをもたらす、狐の神様です。
そして、その神様の御遣い狐がオレたち――和穂だったです。
和穂のお宮様は都の他のそれと比べてそんなに豪華でもきらびやかでもなかったです。
きらきらぴかぴかな方が、そのお宮様の神様の力が増すと言う人も都にはいましたが、
田んぼや畑や山の実りの神様な和穂稲荷様が豪華である必要は無かったと思うです。
何よりお宮様の周りは沢山の木の実がなる木ばかりでしたから。

オレが生まれたのは、都のお宮様の近くの和穂の里。
家の中では一番末っ子で、里の中でも小さい方でした。
そしてオレが5つか6つの頃、都を離れ東と西とへ向かう御遣い衆が出ることになったです。
あの頃の日本には、人がいて里が出来た所の近くには小さなお宮様や祠が必ずあって、
そんなお宮様や祠が傷んでないかを巡っていく御役目です。
あ、他の稲荷様でも神様でも構わないでした。元々和穂稲荷様を奉るものは多くなくて。
でも同じこの国に居られる神様ならオレ達にとっては和穂様と同じでしたし、
他の稲荷の御遣い狐さん達に、もし道中に奉る所があれば、と頼まれたりもありましたし。
和穂は都に近くて里が出来るほどでしたが、他の御遣い狐はそうでもなかったみたいです。
……オレは、まだ小さいながらも東の御遣い衆として家族と里を出ることになったのでした。

東へ、東へ。
里を巡り、山を登り川を渡り、祠を見つけては直して。
蛍のように白く光る蟲や霧のように黒く漂う蟲を操る人々、剣を振るう技に長けた人々、
都の陰陽師様の御技を受け継いだ人々、既に死した人の骨を引き連れる人々、
時には他の稲荷の御遣い衆にも出会ったり。
そうして、ある日、大きなお屋敷を中心に作られた里に着きました。
その里のお宮様はとても古く大きく、だけどひどく傷んでしまっていました。
お屋敷の方々が言うには、直すための材料はずっと前に全て揃えたけれど、
稲荷守も居ない今は肝心なお宮様への作法や修繕の方法がさっぱり分からない、と。
ならば自分達の出番だから任せてほしいと御遣い衆の長が申し出ると、
お屋敷の御館様はたいそう喜んで是非お願いしたいと仰って下さったのです。
大人衆はお宮様のそばの仮家で住む事になったですが、オレや他の子供は、何と……!
そのお屋敷で御館様や北の方様や御家族や御家来衆達と寝起きすることになったのです。
……はい、そのお屋敷にいた一番末のお姫様が、臥待様だったのです。

里に着いたのが、夏の始め。
川辺で蛍を追いかけ、落ち穂拾いで日が暮れて、雪積もる山で獣を狩り、
そんな里の日々の中でぼろぼろだったお宮様もどんどん綺麗になっていきました。
周りの国より早く春の花が咲き始める頃には、飾りとお供え道具を揃えるだけになっていて。
確か如月の始め頃だったですが、都や旅の冬に比べて桂城の里は暖かかったのです。
海が見える丘まで行くと花がたくさん咲いていてびっくりしたのを今でも憶えてます。

桜が咲く頃にはお暇を、という御遣い衆の長の言葉に御館様達は残念がっておられました。
里の方々も、良ければここで共に暮らせばいいと引き留めても下さいました。
だけれど御遣い衆の務めも果たさなければなりません。
そして、新しいお宮様の扉を初めて開いてお祝いする儀式が明日に迫った日の事です。
この頃にはもう、オレはお屋敷ではなく他の御遣い衆と一緒に寝起きしていました。

「――稚都世殿」
「臥待様?」

桂城の土地を守り人々を守るお屋敷の御館様や若様達に御家来衆ならいざ知らず、
あの頃のお姫様達は普通顔や姿を外に晒すような事をしない時代でした。
でも臥待様は被衣一枚すら無しでお屋敷の庭やお宮様のある所へ出て来ていました。
……ええと、でも、オレも臥待様もその時8つか9つだったから、
まだ子供としての扱いだったのかもしれない、ですが。

「……和穂の皆様が、もう何日もせずに発たれると」
「……あ、はい。明日の儀式が無事に終わったら荷造りして北へと向かうそうなのです」
「臨月間近の御方と御家族は留まれど、母御の御身が旅に耐え得る程になれば去られると」
「ええと……なこ(南呼)様の母上様達ですね。
やや様を連れて北へは行けないので都へと一足早く戻ることになると思うですけれど」
「此処より北は冬が極めて厳しいと伺ってございます」
「ここは冬もぽかぽかでしたなので、きっととても寒いかもしれませんねぇ」

そんな話をしながら、新しい綺麗なお宮様を見上げるオレと臥待様。

「……稚都世殿も、北へと向かわれるのでございますね」
「はい。……御遣い衆を待っている方がいますですから」

御館様や北の方様、御家来衆様。
若君様達やお姫様達。
お屋敷周りの里に住む方々。
たくさんの方に可愛がられ頼られ人と御遣い衆とで共に過ごした日々。
それでも一番は、オレと同い年の末姫様……臥待様に出逢えた事。
お暇するのは寂しいし、悲しいけれど。
オレは御遣い衆としての務めを果たさなければ。

「――なれば、旅路へと御持ち下さいませ」

臥待様に差し出されたのは、いつも彼女が提げていた御守り小箱。
確か御館様が都へ行った時のお土産物で……とても大事な物だったはずで。
差し出すに足りずオレの手に押しつけようとする臥待様に驚いて慌てて止めようとして。

「だ、だめですよ臥待様!? だってこれ大事なお守りなのでしょう?」
「大事だからこそ。此迄臥待を無事に守りし品、霊験はあらたかにございますれば」
「でもだめです、もしかしたらこの後で何かが起きるかもしれないじゃないですか」
「何も起きませぬ。……『四年前』に勝る事等、けして在る筈も」

『四年前』。
……その時だけ、臥待様の黒い瞳が闇夜のように何もない黒の色に見えました。

「……えと、ええと、じゃあ、取り替えっこなのです取り替えっこ。オレの大事な物と」

手首ではぶかぶかなので右の腕にはめていた腕輪。
香りのいい木を削って赤い石を埋め込んだ物で、
和穂の最長老様から一番幼い御遣い衆のオレにと渡された物。
――まがみたま(禍御霊)も心なき人も最初に狙うは力も心も長じぬ幼子故に、と。

和穂の御遣い衆で一番小さなオレの御守り。
お屋敷の中で一番小さな臥待様の御守り。
御守り同士を取り替えっこするなら何もおかしくはないのです。
赤石香木の腕輪を両手に乗せて差し出すオレに受け取れませぬと首を振りましたが、
取り替えっこでなければオレも受け取れませんと精一杯背伸びして答えると……
しばらく何も言わないままだった後に、大事そうに手に取って胸に抱き。
それをちゃんと見届けてから、オレも御守り小箱を受け取りました。

「和穂の御護宝、しかと御預かり致しましてございます」
「オレも大事な御守りを無くさずに務めを果たして参りますです」
「……されば、稚都世殿」
「はい、臥待様」
「――務め果たし終えた暁には、又此の桂城へと戻っておいで下さいまし。
……其の時を、臥待は此の地で必ず御待ち申し上げております」

……だけど、臥待様のような聡明で器量も家柄も良き真のお姫様のような方は、
きっと望まれての他の家への御輿入れもお早いのではないだろうか、と。
オレのいた都では、良き家柄のお姫様は、皆、そうで。
もしかしたら……オレがここへ戻った時に、臥待様はもういないかもしれない、と。
そう、思ったけれど。

「――はい。必ず、オレはここへ戻ってきます」

それは、オレの心の中だけに。


だけれど。
臥待様とのお別れは、本当に突然だったのです。
次の日の朝にはもう……桂城の里に臥待様の姿はありませんでした。
普段ならば様々な話に花を咲かせる北の方様も御家族も御家来衆も口を閉ざし、
御館様は臥待様が遠く遠くへと御輿入れしたと、ただそれだけを。
それでも、お宮様の儀式は滞り無く終わり、里に別れを告げてオレたちは再び旅の下へ。

……そして、オレも桂城には戻る事が出来ませんでした。
数ヶ月も経たないうちに、オレたちも何処の人達か分からない狐達――
今でこそ大陸妖狐だろうと分かったけれど――に襲われて。
一番小さなオレは、一番最初に逃がされて。
そうして、はぐれて……たった一人になって。
大陸妖狐は小さく力もないオレにまで追っ手を出したけれど、とある土蜘蛛様に地に伏され。
……ええと、はい。
その方が前に話した、渕埼様と生き写しのように似ていたインセイ様ですね。
その後は、深い森の奥の祠や岩間に隠れては眠り、眠っては逃げて……。
……最後に目が覚めたのが、この時代です。
何も分からなくておなかが空いて、目の前が真っ暗になって、狐のまま倒れてしまって。
気が付いたときには、人の姿で手当てもされて体の泥も落ちていて……
冷たいタオルをそっとオレの額に乗せて心配そうに見ていたのが、兄上様でした。
その後は、兄上様には説明はいらないですよね。





「……波瀾万丈だな、改めて聞くと」

ひとつ小さく息を吐いた兄上様は、桃の代わりに蜂蜜漬けの梅を使ったソーダを口にして。

「稚都世殿……なれば、此方の御方は今生での兄君殿であらせられまするか?」
「ええと、オレは御縁をいただいて兄上様の父上様母上様の養い子になったのです。
なので今のオレは掛葉木の姓を名乗る掛葉木稚都世なのですよ」

――ああもう、何ならうちの子になっちまえ。保護も養育も戸籍も全部これで合法だ。
――修さん修さん、戸籍は流石に一寸手間が……でも矧なら簡単ですよね、お父様?
――いや寧ろ銀誓館学園の十八番だろう其処は。その辺りを早速依頼しておこうか。
――あらもう心配は無いわね。ちとせちゃん、初めましてのお祖母ちゃんじゃだめかしら?

――……私達がどうすれば現代に溶け込めるか色々抱えてたのが馬鹿みたいじゃない。
――諦めろ、はた。矧の宗家に喧嘩売った時点で負けが決まってたんだよ……多分。

「何というか……普通行き倒れてた素性の分からない子供の扱いを、
一緒に朝ご飯を食べている間に完結させて即日どうにかした家ってそう無いです、よね」
「……その点だけは暁降月主として心から土下座する用意があるから必要なら今直ぐ言え」
「あわわそんな大丈夫ですから兄上様、ってまだその事気に病んでらしたんですかー!?」

明らかに気落ちしたのが手に取るように分かる兄上様。
その姿に慌ててしまったオレの袖が、くい、と引かれて。
どうしたのだろうと顔を向けると、何かを考え込んでいるような臥待様。

「……不肖臥待も、遙か彼方の昔話へと参じても宜しゅうございますか」

静かに顔を上げた臥待様の横顔は、とても凛々しくて。

「勿論、構わないよ。――貴女の話を、部外者の俺が聞いていいのか分からないけど」

兄上様の促しに、ひとつ頷いて。
そして、臥待様の昔話が始まりました。
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