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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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……ええ、確かに見た記憶があるんです。
何せ記憶力に関しては矧の中でも負けない自信がありますから。
元々私が首座連に末席を戴いた理由でもありますし。
それでめでたく自律稼働型生体USBメモリの運用開始……
かと思いきや運命予報の能力まで発現して銀誓館編入に至ったという訳ですが。




--------

確か……何かの系譜か家系の図だったと思います。
実家の外で見たという記憶ではまず無いので、十中八九実家でしょう。
そうなると実家の――堤の家系図という線が一番可能性の高い想像になりますか。
聞いた話に拠れば堤は宍矧の中でもそこそこ古い方らしく、
何故か時代の有力者に連なる家系とやたらめったら繋がってまして。
系譜の現状先端に当たるだろう私が言うのも何ですが、
それを耳にして目にした時に『一体何なんでしょうかこの厨二系図』と思いましたし。
そういう事もあって、強く記憶に残っているのですよ。

ええと、それで。
臥待さんの苗字と同じ桂の城と記された名前はかなり上の方にあったと思います。
系譜を幾つ遡れば何年という計算は私には分かりませんが、記載や年号から察するに、
平安時代の末期から鎌倉時代の黎明、隆盛辺りに重なるのかと。
そして、遠い将来堤の本流となる系譜の祖となった男子の妻に当たるのだろう位置に。
あの時代の上流階級としては珍しく彼の兄弟の中で唯一、一妻のみを娶られたようですね。
但し正確を期すならば、現物での確認は必須でしょう。
……生体メモリは自律忘却と改竄機能の精緻さと完璧さにも定評がありますから。


「ですので、やはり実際には私が見た現物が必要ですね」
「……だよな。典杏の超絶的な記憶力を疑うわけじゃ無いけど」
「大前提として人間の記憶力は元来疑ってしかるべきものです。完全などありません。
鎌倉から実家までは1日で十分往復可能な距離ですが、
もしかしたら重要史料かもしれない物を簡単に持ち出せるかどうかですね」
「……最短距離ルート、今日盛大に潰されたけどそれでも往復可能だったっけ?」
「其処まで不便な地理ではありません大丈夫です」

……一応大丈夫ですよ。一寸電車に揺られる時間が面白い増え方をするだけで。


数日後。
意外に簡単に持ち出しの許された家系図を携えて、
私は隠れ家的菓房(という体裁を持つ掛葉木先輩の結社)へと向かいました。
……探求心の旺盛な父と祖母に追い立てられた事もありますが。
意訳すると『先祖の関係者が存命とか由々しき事態過ぎる即持ってけ』、と。
月主・陽主の掛葉木両先輩と稚都世さん、
そして一時的に皆さんの下宿先に逗留中の臥待さんは既に店内に。
中の机を幾つも繋げて作った細長い大机、その上に苦心しながらも家系図を広げました。

「あら、家系図と聞いて想像していたよりも綺麗ね」
「大雑把な部分が多い割に家系図の保存はガチだったようですよ、堤という家は」
「というか、元々重要史料の管理担当で一番偉い家じゃなかったっけ典杏の家って……」
「そういえばそうでしたね、実家」
「ええと……一番下だった所が典杏様のお父様の代。
それで、そこから上へ上へと、昔へ昔へと戻っていく、ですよね?」
「聞いた話だと嫁いだだの娶っただのが一段落したら自分達も記されるそうですよ。
まあ、そんなの勿論まだまだ先ですけれど。何年後の話になる事やら」
「……連綿と連なり続ける血の重さを見る思いにございます。
万が一ただひとつ途切れてしまえばその先など永劫存在致しませぬ故に」
「全人類が昔へと遡ると誰もが一人の女性に行き着くというのが現在の定説ですが、
何と言うか本当に気の遠くなるような話ですよね」

本当に気の遠くなるような遙か昔よりは短くとも、
どうやら真偽は兎も角平城京の世から記され始めたらしい堤の家系図。
一度始祖の記された軸側の先端まで広げ、少しずつ巻き取る形で紙上の時間を進めて。
そして、遂に。

「……此処、か」
「此方ですね。現在に繋がる系譜の祖の、配偶者」

四郎泰親と記された系譜の祖。
その隣に並ぶのは、『ゐとの』という名。
……傍に小さく『安房花丘稲荷守桂城三ノ姫』と。

「安房……千葉県南部だっけ、今の」
「ええ。北から下総、上総、安房だから一番南ね」
「京の都から近いか遠いか、ですね。この場合は総(ふさ)の国の上か下か、
そして四国阿波の民が移り住んだという由縁を持つ安房と」
「ああ、どっちも『あわ』か。成る程そういう……稚都世?」
「……あわのくに、はなおかの、いなりもり……ですか?」
「多分そんな感じじゃないかな。最後だけ、いなりのかみ、かもしれないけど」
「……京の都から東へ北へ進んだ先の、あわのくに……
だから、確かに今のちばですよね。それも冬の暖かい南になると」
「うん。そして最後の稲荷守は和穂稲荷の社を持っていたか、その近くに住んでいたか」
「字からしたらそうなりそうよね……」
「……あの、臥待様? どうかなさいましたか?」
「ゐとの……衣戸乃……陰陽師の技を常盤の母御殿から継がれた姉君殿の名……」

呆然と、呟くように。
元々抜けるように白い肌の臥待さんの顔が、更に白く見えました。

「……姉君殿は長じし側より、はやに(波夜爾)殿、かおう(荷王)殿、
衣戸乃殿、つはな(津葉名)殿……そして、末の臥待。
兄君殿を足せば更に増えますれども、女子の順ならば確かに……
確かに、衣戸乃殿は桂城の館では三の姫にございました。
『弓の腕が私に劣るような殿方なぞ認めぬ、顔と家柄だけの公達など願い下げだ』
……という旨を歌の代わりに返すような」
「……冗談抜きではたの前世じゃないのか、そのお姫様」
「まあ其処で弓じゃなく術のと言い切ってれば私だったかもね」
「……大前提を先ずは否定しろよ異論出てもそっちなのかよ」
「衣戸乃様……あ、確かに姉姫様なのに桂城で一番弓が巧みでしたです。
本当は陰陽師様なのについでだからと新参の御家来衆に弓を教える役もされてましたし」
「な、なるほど……。
子孫としてはこの四郎泰親なる祖が弓の名手だった事を祈るばかりです、本当に」

……これで弓以外の要素による娶る嫁ぐだったら一寸切ないです。
ええ、もしも万が一堤の先祖が安房の桂城を攻め落として云々だったら尚更。
確かに獅子は『矧』の中では疑いようも無く実行部隊担当ですが、
それでも堤は戦など何処吹く風で津々浦々の書物集めに邁進していた系譜の筈で。
あれ、そうなると益々弓なんか絡まないじゃないですか何て事……。

「――典杏殿」

頭の中で不穏な想像がぐるぐると回り続けていた私を現実に引き戻す声。

「……臥待は誠に果報者にございます。
千歳の時を隔たりてもなお恩義厚き桂城の血を継ぐ末裔と巡り逢おうとは……」



あの後、暫しの話し合いの後。
一人で住むには本当に広過ぎる私の部屋に、臥待さんをお招きする事に。
血の繋がりは無くとも先祖と末裔の共同生活を始めました。
父や祖母が一も二も無く賛成して援助物資を送り付けて来たのも想定内でしたが。
空き部屋を占拠する縫いぐるみ達に驚いていた事は本当に申し訳ない……。
颯人さんが新作を山と作る度に一部引き取る破目になったが末の現状でして、
まず片付けから始めないと臥待さんの部屋が作れないと言う有り様。
……もふもふに囲まれた彼女が幸せそうな顔をされていたのが幸いです。

「……このような装束を纏うは初めてにございますれば……何かおかしな所など」
「大丈夫ですよ、サイズぴったりでお似合いです。慣れるまでは大変かもですが」
「はい、靴は元より膝から下が出るような事は童の頃のみでございましたし」
「ですよね……ふむ、髪の毛は少し結い上げるか編んだ方がいいかもですね」
「膝上とて長うございますが床に触れぬままであったのは幸いやもしれませぬ」

銀誓館の小学部の制服が意外に似合うのはやはり子供の特権でしょうか。
上品な家庭の御嬢様にしか見えないので学園外での印象は一安心。
それに稚都世さんと一緒の学園生活ならば直ぐに溶け込む事は難しくない筈で。





――今日から始まるのは、銀の雨降る世界の新しい御伽草子。
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