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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2009.08.28   NIIGATA



「……はいオッケー! 完璧だわ流石あたし!」
「うん、私も今日最高の自信作。鏡見て御覧よ、掛葉木」

ドレスの着付けとヘアメイク担当、2人の言葉を受けてはたるが閉じていた瞼を開く。
鏡の中にいるのは勿論、紛れも無く自分なのだが。

「……誰かしらこのクトゥグアもかくやの令嬢は」

……その比喩を理解出来る人間が激しく偏りそうな感想を述べた。
ドレスと同じ深緋色の小さな帽子には薄桜色の薔薇とヴェールがあしらわれ、
緩いカールを施した黒髪はサイドを残して複雑に編み上げられていた。
艶やかな光沢のドレスは幾重にも重なった薄手の生地と随所に隠された切り返しにより、
風を受けて揺らめく炎が見事に再現されている。
それでいて露出は肩と腕だけに抑えられ、鮮やかな緋でありながら清楚ささえ感じられる。
……言葉通り、完璧だった。

「うん、だから今日はフォーマルハウトの親善大使として振舞えばいいんじゃないかな」
「だけどクトゥグアだけじゃ勿体無いよー。ここはやっぱ這い寄る混沌役も付けないと」
「いやいやいや、さらっと言ったけどそれ天敵同士だからね」

……待て2人共どうしてその切り返しが即座に出てくる。4組だからか。


「……えーと、プログラムのこのタイミングで……だよな」
「はい、誰にも気付かれずに上手く抜け出せるタイミングはこの1回きりですね」
「そっか。丁度良くぶつかれば良いんだけどな……こればっかしは」
「大丈夫ですお任せ下さい、市川さん。だからこそ、この役目を引き受けたんですから」
「悪く言えば職権濫用て奴じゃんか」
「こういう時は何でも使える所は使うしかないんです。……誰も死なせたくありません」
「……ああ、そうだな」

講堂ステージ裏、放送設備室の中で最後の打ち合わせに臨む2人。
宣言通りお団子頭に白いチャイナドレスも可憐な姿の理紗と、漢服に似せた衣装の一真。
窓から講堂を見下ろすと、最後の準備に走り回る同期生達の姿が見える。
低予算の産物とは思えないダンスステージの凝り様が眩くて目を逸らしかけるも、
この眩さこそ必ず守るべきものなのだと己を叱咤して一真は呟く。

「……負けねぇぞ、絶対」
「勿論です。今日のパーティーの、成功の為にも」



「とりあえず、今の所は何も異常無しやね」
「そう、か。……動きがあったら直ぐ知らせて」
「了解。さくっと終わらしてさっさと合流したいとこやねぇ」
「……合流する心算なのかよ」
「はたちゃんといちの仮装姿を俺ん家戻った時の話の種に」
「ふざけんな止めろ実行したら蹴り殺す」
「蹴り倒すじゃ済まねぇの?」
「絶対殺す」
「はいはい了解。……その殺意ゴーストにもちゃんと向けや?」
「言われなくとも」

グラウンドに隣接した体育館。
用具入れの窓の鍵を失敬して潜り込んだ彩晴といちるも最終確認中。
もう少しすれば日が落ちて宵闇が辺りを包むので、それまでは此処で身を隠している。

「……そろそろ時間だ、着替えてくる」
「あー、いちは例の役目もあったんやっけ。……大丈夫なん?」
「昨日散々叩き込まれたから何とかなるとは思っていたい」

何とか、という言葉の割には表情が余り芳しくないいちる。
ダンスは兎も角として……実は着替える衣装の方が苦手という意外な愚痴を零し。

「ま、何とかなろうさね。鬱憤は全部こっちで晴らしや?」
「そうさせて貰う。……絶対にな」



晩夏の夕暮れ、涼しい風が宵闇を渡っていく。
グラウンド横、植樹の周辺に幾つもの人影が現れたのはそんな頃。
銀色の髪の小柄な人影が、植樹の一つに引っ掛けられた何かを見つけて手に取る。

「ねえ寅靖兄ちゃん、多分コレがそうじゃないかな?」
「確かにこれだ。合図用のマグライトが現地にあるとメールにはあったからな」

ライトを受け取った頬に傷のある青年が、紐に結ばれていた紙を解いて中を改める。
其処には数字の羅列と、図形を混ぜた箇条書きが記されていた。

「……こんな小さなライトで合図になるのか?」

覗き込んだ長身の青年のピアスがポール照明の光を受けてちかりと瞬く。

「いや、此処来る前にネットで軽く調べたけど結構光強いらしいぜ、マグライトって」

風に煽られる漆黒の髪を押さえて周囲を見渡していた青年が振り返って応える。

「しかし予想してたよりそこそこ明るいな。ま、もう少し暗くなったら変わるか?」
「まだ懐中電灯は必要無さそうだな。……さて、合図の確認といくか」

携帯を取り出し、ライトを持つのと逆の手でメモの数字をダイヤルする青年――寅靖。

「――渕埼だ。と言う事は、君が」
『はい、お待ちしてました渕埼先輩。そこから右方向でライト回すんで確認してもらえます?』

携帯から流れ込んでくる後輩の声と共に、視界にちかちかと円を描く光が現れる。

「確認した。この明るさでも充分目立つんだな」
『ええ、一寸前に散々っぱら確認しましたんで。いちの裸眼で見えるなら大丈夫って結論に』
「なるほどな。――では、合図の練習を」
『了解しました。それじゃメモの上から流しますから、見辛いのあった時点で即言って下さい』
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