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@ PBW(Play By Web) "SilverRain" & "PSYCHIC HEARTS"
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――2011.08.30




「浪漫の一戦がお望みってんなら、存分にやってやろうじゃねえか――なあ、ラルフ?」

背に乗せたルドルフの問いに咆哮で応えるケルベロスオメガ。
鋭い音を響かせ己が一対の刃を展開する。

「――ふふ、思う以上に自由自在だわ」

白い花弁の軌跡を宙に描き箒を駆るはたるが天井付近まで急上昇して舞台を見遣る。

「……まー、今のうちに素のアレ確認しとかな危険やね」

初っ端からしたい放題というか適応の早過ぎる仲間を視界に収め、
彩晴が客席を飛び移る形で舞台へと迫る。

「ルドルフ、はたちゃん、“総力挙げて”離れとって?」
「何だよ総力って。つかまだインフィニ前だろ?」
「念には念を入れて、かしら。……私は体感しておくけれど」
「ああ、確かに一度受けてみないと分からねえよな威力って」
「……想定外な現実に後悔しても知らんよー……」

――離れろ言うた以上ノークレーム適応やぞー。

そうひとりごちた彩晴の長柄鎚に鎮座する天球儀から金色の細かい光が宙へ広がる。
『アトランティカ』ほぼ全域を光の粒子が満たしたのを見計らい、

「――It's a Show-Time!!」

宣言とほぼ同時に、かちっという音と火花を立てて天球儀内の砂時計が引っ繰り返った。

――轟音。爆風。熱波。衝撃。

シャンデリアをきりきり舞いさせ客席を幾つか木端微塵に為す暴虐の一瞬。
もうもうと埃とも木片顆粒ともつかぬ煙に満ちる粉塵爆発着火地点。
……改め、爆心地ゼロメートル地帯と呼んでも違和感皆無の中心に立つ人影の咳込む音。

「……わーい何コレ超ヒデェ!?
いやコレまだ素やぞインフィニ足したらどーなんのよ……」

だが、そんな台詞と相反する表情を浮かべた彩晴。
更に相反する行動――インフィニティエアの烈風を身に纏う。

「で。――2人とも生きとー?」
「……現状素である限りだけど、直撃4回で凌駕も辞さないって所かしらね。
寧ろ爆発そのものよりも爆風で天井に激突した方が痛かったわ」
「待てそんなに酷かったのかよ!?
俺もラルフも避けちまったから威力分からねえままだけど!」
「ルドルフさんだと直撃3回で危険じゃないかしらね。ラルフさんで5回目以降回避必須かと。
但し次からは念の為その半分で目算を立てておいた方がいいわ。
……彩君、エア使っちゃったから」
「待て、それ一撃貰った時点でもう俺は危険って事じゃねえの?」

抗体空間の効果があるとはいえ使役は凌駕出来ないじゃない、
そういう事を考えると一応の留意は必要じゃないかしら、と答えるはたる。
通常の粉塵爆発では決して被る筈の無い、
何箇所もの血が滲む裂傷を白燐奏甲の白い花弁が癒していく。

「爆地点から離れてたはたるが直撃って、そもそも彩晴は平気なのか?」
「直下点の割にそーでもないわな。多分ギリで防御間に合っとったんかもしらんが」

インフィニで元が取れるダメージで済んどるけん平気、と返す彩晴。

「――開戦早々やってくれるじゃないか!
こりゃあいい、退屈の虫も何処かに飛んでっちゃったよ!!」

玉座から響く賞賛の声。主は勿論、少女英雄の抗体地縛霊。
侍る3体のリビングデッドも1体は既に虫の息、残りもそれなりの負傷を被った様子。
――邪魔な侍屍を散らすに好機。

「は、負けてられねえな。ラルフ、早速挨拶しに行ってやろうぜ!」

吼える相棒が地を蹴り、主と共に宙を駆ける。
人獣一体の騎士さながらに客席を飛び越え舞台に前足が触れるか否かの刹那、
獣の一対、人の一対、4重の刃が漆黒に煌めいて。

「――薙ぎ払え!!」

阿吽の呼吸で展開された刃が次々に屍を、少女を斬り裂く。
仮初でしかない命を今度こそ失った屍達が倒れる。2体。
ぐらり身体傾ぐが未だ立ったままの最後の1体の足下に、浮かび上がる真紅の魔法陣。

「前座は燃え尽きなさい」

遙か宙に浮かぶはたるの声に呼応して魔法陣から炎が吹き上がり、
魔炎消え去った床に残るは幾ばくかの灰のみ。
白燐奏甲を纏わせた上での炎の魔弾だが、確認した限りではそれなりの威力に見える。
強化後に高威力の異能で攻撃というのは確かに普段なら有効以上に必須の手段だ。
そんな普段の定石も此処では余り効果が無いという典杏の話だったが、
今は何かの条件が威力を増す要因となった可能性もある。
……例えば、直前の従弟の所業だとか。

「……ふむ、やっぱり下々の連中じゃ盾にも刃にもならないってわけか。
そりゃそうだよね、君達みたいな歴戦の勇士相手じゃ地の虫を踏み潰す位簡単な事だもん」

漸く出番が来たとばかりに身の丈を越えた刃を誇る大剣を軽々と振り回す少女。
しゃらり、と地に縫い付き甲冑を飾る金の鎖が鳴る。
ダンッ、という音が劇場の空気を震わせたと感じたよりも早く――視界に迫る巨大な刃。
咄嗟に一歩退き手の中の得物を翳すが、
一瞬遅れて両腕を叩き壊すかのような苛烈な衝撃が痺れとなって襲う。
兵器同士が激突する鈍く重い音が反響したのは更にその一瞬後だった。

「彩晴!?」
「……や、何とか無事……とりあえず?」

弾き飛ばされたのか吹き飛ばされたのか判別が付かないが、
数瞬の間に3階席へ叩き付けられた仲間に叫ぶルドルフ。
その声が聞こえたか、椅子の残骸が積まれ煙を上げる箇所から振られる手。
但し腕も手も断片的とはいえ緋色が目立つ辺り、本当に無事なのかも些か疑わしいが。

「英雄は伊達じゃねえってか? はたる、あっちは任せるぜ――ラルフ!!」

その一声で全てを察すが如く、疾風の黒き刃を背に纏う唯一無二の番犬が飛ぶ。
ラルフが吐き出した灼熱の炎を追うように相棒の背から飛び出したルドルフ。
その身体に巻き起こる暴れ神風が極限まで凝縮された瞬間、
己が腕の一対――“Finsternis”を眼前へ翳す!

「食らえっ!!」

赤き炎は大剣の一振りで掻き消せたが、神風を纏う一撃には反応が一瞬遅れたか。
少女英雄の肩口の甲冑が砕けただけに留まらず、胸元まで走った深い罅。
神風の力で驚異的な追撃を齎すルドルフの攻撃の威力を雄弁に物語っていた。
着地の一瞬とて惜しいと瞬時に身を翻したラルフが主をかっ浚うかのように掬い上げ、
抗体地縛霊との距離を瞬く間に可能な限り離す。

「彩君、エアでリカバリー出来そう? 奏甲必要?」
「……んにゃ、どっちも構ん。一遍まず畳み掛けてみよ?」

宙を駆け3階席へ近付いたはたるが未だ椅子の残骸に埋もれかけた彩晴に問うも、
頬が腕が手がしとど緋色で濡れる相手から返るはいずれも不要との返事。
だがその言葉を証明するかのように無数の弾丸が射出され、
先程の返礼とばかりに少女英雄へと襲い掛かる。

「……あちゃー、これは結構痛いなぁ。
これだけの弾丸を全部当ててくるなんて余程の手練れなんじゃない?」

蜂の巣になった1階席最前列中央付近の椅子の上、
穴だらけのマントと幾多の傷跡を晒す抗体地縛霊。
そして間髪置かず彼女の足下に浮かんだ魔法陣の色は――鮮烈な黄金。
黄金の陣が輝き出すと同時に天井から急降下する箒操る人影が手を地へと翳す。

「弾丸の雨には魔術の雷がお似合いよね――貫け!」

宙に浮くはたるの手と床に描かれた魔法陣。
両方から放たれた黄金の稲妻が絡み付く蔓のように浪漫の英雄を拘束しようと暴れ回る。

「……奏甲込みの雷の魔弾であの威力……やっぱり効きが良過ぎやしないかしら」
「効かないよりいいんじゃねえか? はたるだけだぜ、唯一反動無しで戦えるのって」
「それはそうだけれど……それより彩君は」

本当に大丈夫なのかしら、と後方を見遣ろうとしたはたるの耳に響いた重厚な低音。
片方の掌で耳を塞ぎ他方の手で音の発生源を指し示したルドルフの指の先、
舞台最後方に先程まで無かった筈の巨大な鐘。

「……なる。コイツが全体回復の効果音て奴かねぇ」

白燐奏甲もインフィニティエアも無しの筈が、緋色残るものの粗方傷が塞がっている。
そんな姿で瓦礫からいつの間にか現れた彩晴の視線の先には英雄の姿。
肩口の甲冑は砕かれたままだが、胸元の罅は消えマントも半分程復元されている。

「はたちゃん、俺が攻撃ミスった時以外は他の回復優先でええよ。特に粉塵直後とか」
「それは構わないけど……大丈夫なんでしょうね、そんな大見得切って。
抗体空間の効果は“半分まで”でしょ?」
「まー多分。それにもし俺の勘が当たっとんなら……ルドルフ、“次は”ガチで避けれ」
「“次は”? 何だよそれ?」
「奴がお望みなのは一撃で死なん勇士やぞ?

――だったら一番お眼鏡に叶った勇士にゃ何するよ?」

何するよ? の解答に思い至り目を見開いたルドルフの背筋に走る寒気と殺気。
誰よりも早く反応したラルフが背に負う主ごと跳び退った直後、
彼等が居た場所に生まれた大穴と瓦礫の山。
……勿論、抗体兵器の大剣を易々と操る少女の仕業。

「……や、マジで回避お見事」
「本当にな! ……あれ直撃してたら洒落にならねえとこだったぜ」
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